トースト
サンドイッチにする筈の食パンを、トーストにしてしまい、
焼けたパンの薄さに、余った咀嚼力が、顎で途切れて行き場を失う。
目的と用途が一致しないとき、それを繋ぐプロセスは何かの代償を消費する。
植物が目的の花を開花させることが出来なかったとき、蕾のままで終わる花は、
足りなかった養分を、使えなかった力の墓標として、夢の化石の中に刻む。
それは一つの求愛であり、
世界中の無数の他人の生活様式のどれかに、その愛が関与することになる。
まったくの無縁の他人の求愛が、まったくの不明の他人の何かを支える。
そう考えることは、間違いではない。 ・・・かといって語れることでもない。
けれど、その薄いトーストを齧りながら、僕らはそのことに近い経験をしている。
実存における奉仕とは、精神を腐葉土にかえることに似ている。