1、ありえない出会い
「──突然、変なこと言って申し訳ないんだけど、君と僕は将来結婚するんだ。でもね、全くうまくいかないんだよ。
だからさ、お互いのこと好きにならないようにしようね?」
「……はい?」
あまりに唐突すぎる話に、私はそう答えるしかなかった。
それもそうだ。
私たちは今席替えを終えたばかりで、知り合いでもなんでもない。そんな人に突然、結婚するんだ。お互いに好きにならないようにしよう。なんて言われて、まともな反応を返すことができるだろうか?生憎私にはそのようなスキルはない。
とりあえず、この人は少し……いやかなり頭のおかしい人なんだ。そうなんだ。と自分の中で整理をしてニッコリと微笑んだ。
「大丈夫ですよ。好きになりませんし、結婚なんてありえませんから。」
「そうですか。安心しました。」
私がわざとらしく敬語を使って、距離を取ろうとしていることが伝わったのか、隣に座る彼も敬語で淡々と返し、前を向いた。
せっかく素敵な高校生活が始まると思っていたのに……何かこれからが不安だな……。
***
「──あ、そうだ。覚悟しといた方がいいですよ。」
再び隣の席で声がして、私の体はビクッと震える。恐る恐る隣を向くと、彼は私の方を真顔で見ていた。
私が警戒していると分かっていながらも、彼は話を続ける。
「この後委員会決めるんですけど、僕と君は同じ委員会……しかもとんでもない委員会に選ばれますから。」
「……とんでもない……?」
そんな話をしている内に、担任の元気な声が教室に響き渡った。
「よーし!!じゃあこの流れで委員会もさっさと決めちゃうからな!!俺は、こういうことに時間をかけたくないタイプだから、覚悟しとけよお前ら!」
教室内がザワザワし始める中、隣に座る彼だけは、まるで自分の運命を知っているかのように堂々と前を向いていた。私もゴクリと唾を飲み込むと、担任の方を向く。
「お!こんな状況でも全く動じていないそこの2人!お前たちこそ学級委員にふさわしいな!決定で良いだろう!?」
そう言って担任は、名簿を確認すると名前を呼んだ。
「栖原拓海と、辻坂彩実だな。任せたぞ!」
「……えっ……!?」
隣に座っている彼の名前が今呼ばれた名前だとは信じたくなかったが、完全に私の名前は呼ばれている。
ゆっくりと隣を向くと、彼は「ほらね。」とでも言いたそうに軽い笑みを浮かべていた。
「栖原拓海です。よろしくね。辻坂さん。」