プロローグ
またここも売ってねぇな。
俺は小学校からの親友で同じ高校の「北条龍」と昨日発売された大人気ゲーム、ハンターモンスターの続編。ハンターモンスターGを探している。
別に俺がやりたいわけじゃないが、本当に珍しく龍が
「ゲームを買いに行くのについてきてくれ」
と頼みごとをしてきたからだ。
龍の頼みを聞き入れ、大体のゲーム屋が開店する10時から行動を初め、現在の時間は13時20分。
地元のゲーム屋はほぼ全て回った。
しかしながら大人気ゲームの続編というだけあって予約が必須な位人気らしい。
「龍。もう帰ろうぜ。大体、こんな欲しいならなんで最初から予約しなかったんだよ。
「それは理由があってだなぁ...」
「まぁ良い!どうせこれで地元の売ってそうな店は回ったんだ。また時間が経ってからにしよう。その時はオレも付き合うからよ。」
オレが帰る話に持っていこうとすると、龍は開き直ってそれもドヤ顔で言いだした。
「いや!あと少しだけ付き合ってくれ!唯一知ってそうな場所を知ってるんだ」
今になって思うと、こいつが知ってそうな「店」じゃなく、知ってそうな「場所」と言っている事に気付けばよかった。
オレはドヤ顔な龍に対してすごくめんどくさそうな顔で
「はぁ。じゃあどこ?」
めんどくさそうに質問する俺に、龍は少し間を空けて深い深呼吸をしてから
「秋葉原!!」
....
....
....
「ちょ、ちょっと待て!お前今なんて言った?」
「秋葉原」
「はぁ!?もしかしてお前はあの...あの秋葉原の事を言ってるのか!?」
こいつ自分で何を言ってるのか分かってるのか?
秋葉原と言えば....
変なオタクとか。
頭のおかしいオタクとか。
気持ちの悪いオタクが、ゴキブリのようにウジャウジャいる場所じゃねーか。
俺らは不良なんだぜ?
場違いにも程があるだろう。
「あ、お前今、秋葉はオタクがゴキブリみたいにウジャウジャ居るし、何より俺らみたいな不良には場違いだ!とか思ったべ?」
笑いながら俺の思ったことをピタリと当てる龍。
そんな龍に俺はとっても不機嫌に表情で。
「思ったけど」
「なぁ剣。秋葉にだってオタ属性以外の奴らはいっぱいいるんだぜ?」
「だったらなんだよ?俺はあんな気持ち悪ぃ所なんか絶対いかないか.....」
龍の言葉を即座に返した俺はそのあと直ぐにある疑問が思い浮かんだ。
あれ?こいつなんで秋葉にオタ属性以外の奴らがいっぱいいるってことを知ってるんだ?
だって、秋葉原にオタ以外の奴か要るのは当然だ。
だけど、行った事のない奴がいっぱいいるんだぜ?と即答で言えるだろうか。
「まさかお前オタ」
「ちげーよ!」
食い気味で入って来たな。
「姉貴がオタ属性だからたまにつき合わされるんだよ」
!?
あの美鈴さんが!?
1年前、女にして初めて零神(地元最強の暴走族)の総長を勤め上げたあの美鈴さんが!?
......オタ属性!?
...何でだ?
あの人は女で唯一俺が頭の上がらない県内でも指折りの不良だったはずだろ!?
あの恐ろしい悪魔の生まれ変わりみたいな人間がなぜオタ属性なんだ!?
「だから少しはゲーム売ってそうな場所知ってるから今から行くぞ」
ん!?
まてまて。
美鈴さんのことも聞きたいけど
今ちょっとおかしな言葉を龍の口から聞いたような気がするんだが…
「今何て言ったの?」
「少しはゲーム売ってそうな場所知ってるから今から行くぞ」
こいつはモンハンが欲しすぎて頭が狂ってしまったらしい。
あいにく俺はゲームなんぞに興味はないし、いくら龍の頼みだからって。秋葉原なんてオタクがうじゃうじゃいるクソみたいな街にいく理由なってない。
「いくらお前の頼みだからって絶対に行かな...」
「言ってなかったがこれは姉貴のお願いなんだ。行かなかったら俺が二度とお前と会えなくなる。それに先ほど剣と買いに良くってメールしちゃったし」
「お前、美鈴さんの命令だからモンハンモンハンうるさかったのか。ふーんこのシスコン野郎」
「ふむふむ。姉貴のお願いを全うしようとする俺に剣が姉貴と連絡を取るな。シスコン。などと言って邪魔してくるのだがどうしたら良い?それに姉貴の命令に対してふざけんな!などと言ってるんだが。後は送信を押すだ」
「ちょっと待てっ!!」
「何々?急に秋葉原に行きたくなったのか?」
っ!!こいつ!!!
「....」
「送し」
「スゴイイキタイ!」
こいつはゲームを買い終えたら本気でぶん殴ってやろう。
「姉貴」と言う魔法の言葉のせいで俺はあっさりと秋葉原に向かうことになった。