ストーカー女:1年目の夏
夏の白い病室で、私は付き合っていた恋人にさよならを言った。
LINE画面に表示された《別れるなら死んでやる》と言う言葉が、彼の本気ではない事なんて分かりきっている。
バーテンダーで、チャラチャラした身なりの男と付き合っていた。
少なくとも、就職した直ぐの学生時代のノリが抜けない当時の私には、彼が格好良く見えていた。
週末は一緒に飲みに歩いて、ホテルデートを繰り返し、私の給料と貯金はあっと言う間に消えていった。
チャラチャラした男に相応しい様に、私も同様に尻軽そうな女だった。
彼は束縛が強く、特に仕事以外は電話を繋ぎっぱなしが普通で、私が女友達と遊ぶにも、彼のチェックが入るなど、ある意味病的ですらあった。
そんな彼に嫌気がさして、距離を無理やり取るために私はずっと放置してた扁桃腺の手術を受けるために、先日病院に入院した。
入院すれば、病気を理由に彼から逃げられると思ったのだが、それは甘かったらしく、お見舞いに来ると言い張る彼に、ついに別れ話をしてしまったのだ。
今思えば、弱った恋人に寄り添いたいと思うのはごく普通の事だと分かるのだが、当時の私は、彼に会いたくない一心で入院したのに、逃げられそうにない現実に追い詰められ、酷い言葉を彼に言ってしまった。
後悔は無い
確かに愛した人だったが、彼とは未来が見えないのだ。
《ストーカー女:1年目の夏》