85 魔道洗濯機
「スナミさん、頑張ってるね」
私が見ているのはスナミ機械工業のホームページです。
あれから1か月も経たないのに、もう魔道具の開発に成功したみたいです。
魔道洗濯機の宣伝がデカデカと掲載されています。
『水も要らない、電気も要らない、補修だって出来ちゃいます。
お試しください、魔道洗濯機!』
と言うセリフと共にドロドロに汚れ、カギ裂きまで作った子供用野球のユニフォームをポイとお母さんらしき女性がエアコンの室外機の半分くらいのサイズのツルリとした白い箱に放り込むと下から真っ白に洗い上がったユニフォームが出て来ます。
『オシャレな木製もあります。水も電気も必要無いのでどこにでも置けます。
一度に大量に洗濯する必要無し。
だから、置き場所にも困りません。
着替えたその時、投入口から放り込むだけ。
オシャレ着だって、ほらこのとうり。
仕分けする必要もありません!』
キラキラのスパンコールやパールビーズ等がタップリ付いたパーティードレスを放り込んで見せます。
『業務用、大型もありますので、必要な業者様はお問い合わせください』
「これ、幾つ魔法陣を組み合わせているの?」と後ろからパソコン画面を覗き込んでいた小夜さんが聞いた。
「うん、一番安い機種で多分2つか3つね。
洗浄、補修、そして魔素プールかな」
「魔素プール?それって、ミスリルが要るんじゃ無かった?」
「うん、術式じゃ無く魔法陣にしたら何とかなりました~。
それぞれ魔素をある程度は貯めておける魔法陣なんだけど、密室で連続して使うと魔素枯渇を起こしちゃうのよね。
でも、これが洗濯機を使って無い時に魔素を蓄えてくれるの。
ミスリルが無いのであまり多くは無理なんだけど、家庭用の洗濯物だったら十分かな?
窓を開ければ一発で解決なんだけどね。
ストーブみたいに使用中は時々窓を開けましょうなんて注意書きしてるのかしらね。
多分、業務用はダクトが付くと思うよ。
説明会で魔素枯渇の事は話しておいたから。
それにしても、本職さんは凄いね。
私が作ったのは大きい物だと中に洗濯物を押し込まなきゃダメだったけど、これは上に乗せるだけで勝手に引き込んでくれる仕組みなのかな。
入口に工夫して落ちやすい形にしているのか。
落ちている間に洗浄と補修は終わるから、下に落ちた段階で洗濯終了ね。
下から飛び出す仕組みも洗濯機の形状で解決しているね。
そうか~、だからこの大きさなのか。
私が作った物よりちょっと縦に長いものね」
「ここが一番乗りなのね。
大手企業は焦るでしょうね~」
「小さな会社の方が小回りが利くみたいね」
「値段も安いわね~。
高機能の洗濯機だと10万円以上したけど、これは一番安いので3万円か~。
今までの洗濯機、じきに売れなくなるわよね。
着替えたら入れて洗濯って言う習慣がつくまで面倒臭いと思われるかもしれないけど、慣れると便利なのよね。
かなり年季の入ったシミも消してくれるでしょ?
自分で家事魔法を使えるようになってもこの便利さは良いわよね。
一枚一枚自分で汚れた服を広げて汚れを確認しなくても箱に入れるだけで綺麗になるんだから魔法使いでも買っちゃうわよね。
うん、このオシャレな方を買っちゃいましょう。
通販やってるのかな~」
魔女でも欲しがる魔道洗濯機ですね。
私が作ったのは作ってもらった木箱に魔法陣を張り付けただけの粗末な物。
お洒落で高機能のメーカーの作品には負けます~。
我が家にも一台、お風呂場に置く金属にコーティングされた安いの買っちゃおうかな~。
製作者も欲しがる魔道洗濯機です。




