84 魔力が発動すると
「魔法世界になっても、科学を捨てないで下さい。
魔法は科学と合わせる事により、より優れた物に変わります。
私の魔法陣にしても魔道具にしても、科学や数式を加えた物があります。
魔法陣や術式を構成している魔法言語にしても、コンピューターを使う事でより簡単に書く事が出来るでしょう。
その内、魔法陣を書くCADなんてできちゃうと良いですね。
魔力を込める前の術式や魔法陣は簡単にプリンターで増産できます。
『魔法特許庁』の魔法陣も魔力を込める前の形で提供されますが小さな魔力で起動できる形にしてありますのでご安心ください。
魔法文化の発展のためにも、皆さんの努力で新しい魔法陣や術式が沢山出来る事を願っています。
これで、説明会を終わりますが、何か質問はありますか?」
何人もが手を上げるが一人の初老の男性が私の目を引いた。
まるで、子供の様にキラキラしている目だ。
「はい、株式会社スナミ機械工業さん」
私はもちろんそのキラキラの男性を指名した。
「ありがとうございます。
お尋ねしたいのは魔法陣についてなのですが・・・・」
「あ、前に出て来てくださいますか?
会社の方針について、秘密事項もあるでしょうから、念話でお話ししましょう」
私が言うと男性は酷く困った顔をした。
「私は魔法は使えなくって・・・・」
「魔法の使えない人なんて居ません。
念話も直ぐに覚えられますよ」
私は出て来た男性と握手した。
『はい、聞こえますか?』
男性は物凄く驚いた顔をした。
『これが念話です。
もう、体の中を魔力が巡っているのが分かるでしょう?』
私は彼に念話の接続の方法と遮断のやり方をまず教えた。
男性の質問は複数の魔法陣の組み合わせについてだった。
素晴らしいです!
結構な御歳なのにその考えに至るなんて。
もちろん、私の作った魔法陣は全てお互いに邪魔をしない造りになっていて、互換性もバッチリです。
質問に答え、念話を他の人にも広げて欲しい旨を伝えて、彼との会談を終えました。
ふと気づくと何故か彼の後ろにズラリと行列が出来ていました。
あれ?
同じ会社の人も居ますよね?
一人一つの質問と言う訳じゃ無いのに?
はっと気づくと男性の手を握ったままだと気付きました。
まさか、私と握手したかった?
そんな事無いですよね?
私は魔法少女の姿をしている訳じゃ無いんだし。
アリーナで受講者に殺到されて飛んで逃げてしまった事を思い出しました。
「もう、手を放しても念話できますよ。
後は登録だけですね。
念話できる人となら握手だけで登録できますし、解除も出来ます」
手を放して背の高い男性の顔を振り仰いだ時、行列ができた原因が判りました。
魔力がそれなりにあったのか、30代前半まで若返っている男性。
半白だった髪も真っ黒になっていました。
「えっと、皆さん。
これはこの方の魔力が体を巡り始めたことによる現象です。
全員がこうなる保証は無いのですが?
念話だけなら起動させて差し上げられますから、最初は質問だけにしていただけませんか?」
質問タイムが終わり、ほぼ全員の念話を起動し終わった時にはクタクタになりました。
此処に参加されている企業の社長さんの全員が最低でも20歳以上若返っていました。
地球の濃い魔素のお蔭なんでしょうね。
魔力が巡り始めた途端に皆若返りました。
ツルッツルの頭の社長さんがフサフサになって『ううっ、禿頭会除名だ・・・』なんて、困ったような嬉しがっているような複雑な顔をしていましたが。
若返る人たちには二種類あるようです。
魔力が巡りだす前に若返る人。
それはとても大きな魔力を持っている人です。
魔法使いの様に幾つもの属性は持っていなくてもその持っている能力が魔法使い級なのです。
そして、これが一番多い、魔力のある人に魔法の力を注がれて魔力を巡らせ始めた人です。
こうしてみると全人類が若返っちゃうんでしょうね。




