77 定例会議
定例の魔法使い会議です。
初めての時は何が何やら判らず混乱していた圭太君も今はすっかり落ち着いています。
様々な発表や報告がなされ、最後は私の番です。
トリを務めるなんて烏滸がましくて緊張します。
まずは水無し洗濯機等の家電製品?の紹介。
そして、本命の発表と言うか提案と言うか・・・。
「こんな物が出て来たら、次々と企業が倒産して大不況になってしまう気がするんです。
だから、早く簡単な術式の発表をして、次に術式を特許として認めさせて、その次に今までの家電業界等に魔道具を並行して作らせる。
ゆっくりと、でもなるべく急いで転換させて行かなくちゃ。
う~ん、まずはエネルギー不足を何とかしなくちゃね。
それよりも、世界のあちこちにある汚染地域の浄化かなあ」
正直、世界が魔法世界に代わるという事を甘く見ていた気がします。
魔法世界になれば、その影響を受ける企業が多すぎます。
術式を特許として認めさせるのは、これから術式と言う物の概念が受け入れられた時、新たな術式を考えた人達の利益、それを囲い込んで秘匿させないと言う効果に期待しています。
秘匿すれば、次に同じ物を考え付いた人が特許を申請すれば権利を持って行かれてしまいますから。
え?沢山の術式を考えた私の為じゃ無いですよ?
「魔法陣の理念は特許として登録しますが特許使用料は取りません。
由紀ちゃん達の前世で普通に使われていた単純な術式も『ウィッチ&ウィザード』で登録しますが特許使用料は取りません。
まずは、そこから始めたいと思いますがいかがでしょうか?」
「特許登録にお金が掛かりそうね~?
いっそ、別組織を立ち上げたら?」と、小夜さん。
「そうそう、日本でだけ登録してもあちこちの国では無視されるわよ。
そこで勝手に登録されてしまうと、その国で術式が使えなくなるかも」
由紀ちゃんも言います。
うえーーーーん、良い考えだと思ったのに。
やはり大人の考えには負けちゃいます。
「『魔法術式、魔法陣特許局』を作りましょう。
基本術式として、麻代ちゃんが言った術式と魔法陣の登録をして、それは所有者権利破棄の物としましょう。
うん、魔法陣は麻代ちゃんの当然の権利として少しくらいの使用料を取っても良いわね。
そして、『魔法術式、魔法陣特許局』を認めた国だけに閲覧と登録を許可しましょう」
小夜さんが宣言しました。
「とりあえずは、基本術式だけでも生活に必要な家電製品はほとんど全て賄えます。
麻代ちゃんが作った水無し洗濯機みたいな物は無理ですけどね。
まだまだ術式を組み合わせるなんて当分無理でしょうしね」
「ところで、魔道具の家電製品を動かすエネルギーは電気?魔石?それとも術式で取り込む魔素かな?」
と、質問が出て来た。
「魔石を想定してるんですけど、一般的じゃないし、稼働時間以外の時に魔素を取り込んで蓄える術式を考えたんですけど、それにはミスリルみたいな魔素を蓄えるための物が・・・」
「ちょっと待って!」
私の答えを物凄く驚いた様子の小夜さんが遮った。
「魔素を、蓄えるですって?」
「はい、魔石が出回っていないみたいなので。
外で使うには、ほぼ無限に近い空中の魔素があるので十分なんですけれど、閉鎖された空間で使うには洗濯機みたいに一回や二回ならともかく何回もの連続使用だと限られた空間の魔素を使い尽くして動作が途中で止まりそうなものですから。
それに、冷蔵庫や保存庫みたいなノンストップで動き続ける物だとそれもちょっと使えないのでエアコンみたいに魔素を取り入れるためのダクトを付ける方法も考えてみたんですけど?」
小夜さんが何でそんなにビックリしているのか判らなかったのでひとまず質問の答えの続きを言いました。
「と、とんでもないわね」
小夜さんが溜息を吐いた。
「麻代ちゃん、魔素を蓄えるなんて発想は前世の世界では無かったのよ。
まあ、魔石が沢山有ったせいでもあるんだけど。
魔石が電池代わりでそれを当たり前のように使っていたから魔素を蓄えてそれを魔石代わりに使うなんて考えて見る事も無かったわ。
直接魔法を使うか、魔石を使うか、それだけしか無かったの。
前世ではね」




