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76 魔道具

 「大丈夫。

悪意は感じないし、目も耳も付いて無い。

うーーーん、光魔法の気配が・・・・。

ほらほら、麻代ちゃん見てごらんなさい」

見ると、魔力を通された刺繍の小鳥がパタパタと羽ばたいた。

「意図して作った訳じゃ無さそうだけど、凄いわねえ」

小夜さんが楽しそうに言った。

「この方は図鑑とかを見て図案を考えたんじゃなくて、実際の小鳥を見てデッサンしたみたいね。

素晴らしい芸術家だわ。

多分この事に気付いていらっしゃらないと思うから、教えて差し上げた方が良いわ。

手元を明るくするために光魔法を使っていたせいね。

しっかり光属性の魔力が宿っているわ」

パパはホッとしたように溜息を吐いた。

「すみません。

ここへは変な物を持ち込まないようにします。

今回は害がなかったみたいですが、これからどんなことがあるか判りませんから」

パパは謝った。

パパって大人だな~、と密かに心の中で評価を上げたのは内緒です。


 それから暫く経って、『幻想刺繍』の名前で作者の人が有名になった。

小さなハンカチサイズの刺繍が物凄く高いの。

勿体なくて貰ったハンカチが使えない!

私の部屋の壁に額に入って飾ってありますよ。

パパは作者の人にお礼だと言われて大きな刺繍絵を貰いました。

梅に鶯の図案で梅の木の上で鶯が飛び回るのだそうです。


 それが嬉しくて刺繍絵にしょっちゅうママが魔力を注いでいるのだそうです。

うん、訓練としても良いかも。

小夜さんに聞くと似たような絵は前世にも有って、国宝級の物だと絵の中で時間が経過し、植物は花が咲き実が成り葉が茂ったり散ったりを繰り返し、花は香りもするのだそうです。

どこかの王宮の壁に描かれた絵はそこが本物の森の中の様に見えたといいます。

小鳥の囀りさえ聞こえるとか。

その絵は魔石で動いていて、魔石さえ取り換えれば人が魔力を通す必要も無いらしいです。


 そうそう、魔石と言えば魔獣退治の魔石が結構溜まっています。

周りに人が居なければ拾って帰る事も多いのですが、魔法使いさん達が適当に研究の為に持ち帰ってもまだまだいっぱいあります。

そろそろ収納場所にも困っているんですが。


 小夜ちゃん達の前世では魔石はとても高価で貴重な物でした。

大きい物では都市のインフラ、小さな物では各家庭の照明器具や魔道具類に至るまで魔石が使用されていました。

でも、今では周りの魔素が濃くて魔石が必要無いのですが~。

魔法陣に魔素吸収の術式さえ書いてあればほぼ永久機関となります。

エコだな~。

魔石なんて魔素が少ない世界でしか必要無いんじゃない?

と、思っていましたが、思い出しました!


 ダニエルさんが閉じ込められていた時、魔素枯渇を起こしていた事を。

地下深くだったのでそこにあった魔素を窮してしまったら、周りの大地からの補給が間に合わなかったのでしょう。

それは閉鎖された空間でも同じ。

窓が開いていたり、魔素を取り込む換気装置が無ければ大量に魔素を使えば無くなってしまいます。

魔素は壁等を通して補給はされますが、地上の閉鎖されていない外に比べるとその速度は遅いのです。

もっとも、そこが魔素気脈と呼ばれる地中での魔素の通り道や吹き出し口の近くならば話は別ですが。

と、言う事はどこででも使えるように家電製品代わりの魔道具には魔石を入れる場所が必要となります。


 実は私、術式を組み込んだ家電製品に代わる魔道具を研究中です。

保存の術式を組み込んだ保存庫。

火の術式を組み込んだレンジやオーブン。

洗濯魔法を組み込んだ水無し洗濯機も良いかもしれない~。

水不足でも洗濯できるし水も汚れない。

洗剤も要らなくって、うんエコですね~。

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