72 3人目
「ええっ!?後から3人来たの?
ダニエルさんを含めて3人じゃ無くて?」私は驚いた。
ダニエルさんを我が家の居間に招いて小夜さんを含めて事情を聴いています。
「あのヘンテコなギルドとやらの魔法使いが一人混じってたとか?」
「いや、あの変に歪んだ魔法使い未満なら判りますよ。
どちらかと言うとかなり優秀な魔法使いだったような気がします」
「えーーーと、大魔女様じゃ無く?」
「あの方はかなり優秀じゃ無く、超絶優秀です。
あの方がいらした時は空気まで変わった気がしましたから、あの方ではありません」
私は小夜さんと顔を見合わせた。
「私達が見つけた時、その3人目とやらは居なかったわよ?」
「そう、近くには居なかったよ」
「そんな筈は・・・。お師匠様がいらっしゃる寸前まで私はその魔力を感じていたのですが。
弱っていたために何か見間違えたのでしょうか?」
いつもの陽気さが影を潜めダニエルさんは不安げに言った。
ダニエルさんが不安に思うのも当然、魔法使いはそういう間違いは犯さないのだそうです。
一般人の弱い魔力ならともかく魔法使い級の魔力は100%識別できるとか。
そう言えば、顔や名前を完全に覚える前から魔力パターンで街の魔法使いさん達を見分ける事が私にも出来ていました。
現在の名前とか、前世の名前とか、本人がどう呼んで欲しがっているとか、色々あるので名前の認識が後回しになりましたが、いつ町に引っ越して来た魔法使いさんで、どこの家に住んでいるかはすぐに覚えましたもの。
「すまん、それは私だと思う」
突然声を掛けられて驚き振り向けばそこにはトミー君が立っていた。
「え?トミー君?じゃ無いわ。あなた誰?」
トミー君なのは外見だけ。
見も知らない魔法使いがそこに居た。
「どなたかしら?」
小夜さんが聞いた。
「初めてお目にかかります、フェルフラウ様。
ターク・エルダー・リンデルと申します」
「ターク・・・・、あ、もしかしたらタークさんのお師匠様?」と、私。
「フィータークですね。
トミーの中から見ていました。
懐かしい魔力パターンを感じて飛びだしそうになりましたよ」
トミー君の顔で大人びた微笑みを浮かべる。
「けれど、トミーが眠っている時か意識を失っている時で無ければ無理に私が表層に出るとトミーの人格を押しつぶしてしまいますから。
私達は他の方達と違って融合する事は無かったのです。
少しずつ過去を思い出して自分の物にする事が出来なかったので、今の私がトミーと一つになろうとすると幼すぎるトミーの人格は消えるでしょう。
私は虐待に耐えかねたトミーが作り出した別人格として目覚めさせられたのですよ。
トミーが転生した私である事に違いは無いのですが。
以前はトミーが辛くなった時スムーズに私に切り替わっていたのですが、今のトミーは幸せですから」
「大魔女様の様に何度も生まれ変わっていらっしゃるのですか?」私は訊ねた。
「いいえ。
これが最初の転生ですよ。
私は魔法使いの大虐殺のあった頃、地下深くの研究室に籠っていました。
地上の事はほとんど気付かなかったのです。
私は魔素が薄くなった状態がいつまでも続くとは思えず、いつか魔素が戻って来た時の為に本を書いていました。
知る限りの全ての魔法を記すために。
大虐殺に気付いたのは愛しい弟子たちの反応が次々と失われている事に気付いた時でした。
助けに行きたかった。
けれど、研究室から出ると、もう二度と帰れない程の魔石の蓄えしか無かったのです。
最後の弟子の反応が消えた時、私は覚悟を決めました。
全ての命を後の世の魔法使い達に残す本造りに捧げようと。
本を仕上げたのは70年ほど経っておりましたか。
せっかく記した本が失われぬよう、配置を考えねばなりません。
そして、いつか魔法の大奥義に辿り着けるように導かねばなりません。
半数の大奥義に属する本を残し、初期から中級までの本を抱えて地上に出た時にはすべての文明が滅びておりました・・・・」




