66 外伝8 コンビニ店員の場合
「か、金を出せ!
出さなかったら、ひ、火をつけるぞ!」
フルフェイスのヘルメットをかぶった男は指の先に蝋燭の火程度の火を灯し、俺を脅迫する。
やれやれ、またかよ。
俺って運が悪いのかな~、強盗に遭遇するのは3回目だ。
夜のコンビニの店内には強盗と俺以外に女の子が一人。
小学生くらいの女の子で御使いなのかな、カゴを持ってアイスクリームやお菓子などを買いまわっています。
あの子に怪我をさせる訳には行かないからさっさと対処しよう。
でも、威力が足りるかな~、一番威力が強いのは他の人が居る場所じゃ使えないし。
「早く出せ!燃やされたいか!」
強盗はケチな火をカウンターの商品に近づけます。
あわわ、止めろよ俺の給料が減ったらどうしてくれるんだ!
ただでさえこのコンビニ、客の入りが少なくてオーナーが閉店しようかと悩んでいるのに。
儲かってないから掃除だって行き届かなくって、床を磨くポリッシャーも壊れてからそのままだし。
ドッシャーーーーッ!
水の塊が強盗の頭の上から降って来た。
ヤベッ、加減を間違えた。
強盗は床に叩きつけられて伸びていたけど、あ~あ~、店中水浸しだーーーー。
商品にも水が掛かって台無しだよ~(泣)。
「あらあら、清掃!」
声がして、水浸しの店内があっさりと綺麗になった。
元の様に、では無くまるで新店舗の様に床はピカピカ、壁のシミも無くなってる。
「補修」
目の前までやって来た少女が天井でチカチカまたたいていた寿命の蛍光灯を見上げて言うと、蛍光灯が新品になった。
「はい、お会計してね」
何も無かったかのように、床で伸びている強盗を無視して少女はカゴをレジ横に置く。
「き、君は魔法使い?」
魔法使いの存在はネットで知っていたから思わず聞いてしまった。
「うん、そうよ。魔法使いなの」
少女はニコッと笑った。
幼い子なのに思わず顔が熱くなってドキッとした。
ちっちゃい子に何胸キュンしてんだよ、変態かよ。
俺は自分で自分につっ込んだ。
「凄いな~、俺は水の魔法を少しできるけど上手く操れなくて」
そう、それでここの前のバイト先でも同じような事やらかしてクビになっていたんだ。
だから、ついついお客さんに関係ない事を愚痴ってしまった。
「杖契約をすればコントロールが上手くなるし、魔法使いじゃ無くても杖に魔法を覚えさせられるのよ」
と、少女は答えてくれた。
「ただし、杖は一生連れ添う相手として契約しても良いように、丈夫な物にしなくちゃ駄目よ。
間違っても、そこら辺の孫の手とか靴べらなんかと契約しちゃダメ。
そんなの振り回すのカッコ悪いでしょ?」
何で孫の手とか靴べら?どっちも持ってないけど。
「別に杖の形をしてなくても大丈夫。お兄さんのその指輪だって良いのよ。
ゲームの経験値みたいな物が杖契約すると杖に付いて来て、その内心が通わせられるようになるの。
だから、生涯に杖は一つだと思わなきゃダメ」
俺の指輪は親父の形見だ。
太い男物のファッションリングだけどプラチナで出来ているらしい。
生活苦で何度か売ろうと思ったけど俺が小さい頃に死んでしまったらしい母親が独身時代、父にプレゼントしてくれた物だそうなのでどうしても売る事が出来なかったんだ。
「それと、生活魔法は誰でも覚えられるわよ」
少女は何でもない事の様に言う。
「お掃除、洗濯の経験さえあれば比較的早く覚えられるの。
魔法は強い望みを抱く事が大切なの。
綺麗にしたい、汚れを落したい、壊れた物を元の様に治したいって望めばいいの。
魔法がもう使えるのなら、魔力がどう動くのか判っているでしょ?
まずは、汚れた物を見る事から始めると良いわ。
そうしたら解析魔法が発動するから。
お兄さん位の魔力なら負担無しに発動すると思うわよ」
ちょっと長くなったので残りは次へ。
変な終わり方でごめんなさい。




