62 侵入者
私は全速力で侵入者にも気付かず宙を駆けているトミー君の元に行きます。
私の方が能力が高いので本気を出せば相手を捕まえる事なんてたやすいです。
一刻も早くトミー君を回収してから街に警告の念話を飛ばすはずだったんですが、トミー君が気付いて無かったために捕まった途端に声を上げてしまいました。
ヤバイ!
侵入者が気付いて私達を見た!
街の中だからステルス光学迷彩なんて高機能の結界装置なんて身に付けてはいません。
ともかく、私達を見て侵入者が唖然としている間に念話を飛ばしました。
侵入者が小夜さんの呼びかけに答えてやって来た、前世持ちの魔法使いなんて事もあるかも知れないと期待したんですが・・・・。
そんな事は有り得ないですよね。
だって、前世持ち魔法使いは全て把握されているし。殆どがもうこの街に集まっています。
それに、たった一人でやって来るなら転移を使わない訳がありません。
ああ、やはり彼は把握されていた魔法使いでさえありませんでした。
だって、パパなんだもの。
二十歳前後に若返っているけど、間違いなくパパでした。
「麻代!?」
ほら、私を見て名前を呼んだから。
いつの間にか100名を超える魔法使いさん達がパパの周りを取り囲んでいます。
いかにもな魔法使いスタイルの人達に、パパは罠にかかった動物の様にパニックになっているみたい。
フワッと空から3魔女様のお出ましです。
「おやまあ、昌造かい」
由紀ちゃんが呆れたように言いました。
「遅ればせながら魔法使いの能力が覚醒したわけだね」
「だ、誰だ!麻代が小っちゃい?」
「自分が若返ったんだから、私が誰だか気付きそうなものなんだがねえ」
「何でパパが此処に居るの?
何で登録されていないのに結界を通って来れたの?」
私は由紀ちゃんと一緒に来た小夜さんに尋ねた。
「まあ、血縁だからでしょうね。
魔法使いは同じ血統に出やすいから、血縁関係の魔法使いは通過できるようにしたのよね。
デイビス君の事があったから」
「あんた、誰だ!何で俺の名を!」
パパは混乱の極みです。
「パパ、自分のお祖母ちゃんも判らないの?
ずっと疎遠にしてたから若い頃の写真を見た事も無いのね。
自分がそんなに若返っているんだから、他の人も若返っているって思わないの?
何でパパに此処が判ったのか知らないけれど、ここはね魔法使いの街よ。
魔法使いは若返るって、ずっと前から発信しているのに」
「魔法使い・・・・?俺が・・・・?」
パパは呆然とした顔で呟いた。
『そんな馬鹿な』とか『出鱈目を言うな』とか言わない所を見ると、魔法使いの事が少しは世間に知られて来たのかしら?
そう言えば、少し魔法が使える少年少女たちがテレビに出てけちょい魔法を披露してたっけ。
ただ、魔法使い級の人達はテレビに出たのを見た事が無かった。
あまりに大きい力を怖れて地下に潜ったのか、それとも・・・・・?
「パパ、私はねあのオーロラの日から魔法に目覚めちゃったの。
だから、魔法のコントロールを覚え、色んな魔法を身につけるために此処に来たの。
ううん、来なくちゃならなかったの。
だって、魔獣が現れる事が分かっていたから。
魔獣退治の為だけじゃ無いわ。
魔法が使えないままに魔獣と遭遇していたら、魔獣に真っ先に喰われていたわ。
だって、魔法使いはその魔力も気も魔獣にとっては他とは比べ物にならない程の御馳走だから」
そう、だからあのキャンプ場の事件の時、沢山の仲間の中で一番に圭太君が襲われたのだと思う。
魔獣との距離とかでは無く。
だから、新たに生まれる魔法使い達は魔法教育が必要なんだけど。




