61 新魔法陣と鬼ごっこと・・・・
「タークさん、これ転写お願いします。
一応家の数だけ」
私は一軒のお洒落な家に行って扉をノック、中から出て来たほっそりとした美女に紙を渡しました。
「お願いします!」
魔女さん達が話し込んでいるのでつまらなくなったのかトミー君が私に付いて来て一緒にお願いしてくれました。
「まあ、出来たのね。もちろん我が家の分もあるのよね」
タークさんは嬉しそうに紙を受け取った。
男の人みたいな名前ですが、れっきとした女性です。
本名はキャサリンさんと言うのですが同名の人が居て、前世の名前を名乗る事にしたそうです。
でも、前世の名前としてもタークは男の人の名で、師匠の名前だったそうです。
フェルフラウの名前の様に半分に切るには短すぎる名前で、男女どちらもタークの名前が付いているのだとか。
正式な名前はナンナローディア・フィーターク。
ただ、ナンナの名前はナンナヴィオル様に対して恐れ多いのでボツ。
そもそも、ローディアは家門の名前だそうで、フィーではちょっと収まりが悪そう、などと理由を付けているけど、本当は早い者勝ちで師匠の名前を付けたかったのだと本人から聞きました。
大魔女様の例もあるから師匠が転生していらっしゃったら名前は返すそうです。
タークさんは前世から彫金の名手。
記憶が戻っていなかった以前にも、若い頃から彫金をやっていて、実は結構有名な人なんだって。
歳を取って目も老眼になり、細かい細工が出来なくなったと引退していたのだそうです。
「まあ、綺麗な術式だ事」
タークさんは目を細めて褒めてくれました。
「これなら、余計な装飾は要らないわね。
形は円盤型が一番ね。
材質はミスリル。
余白は少ない方が良いわね。
大きさは・・・・」
あっと言う間に玄関先でお仕事モードに突入してしまったので、私はお願いしますと言って帰る事にしました。
と、言っても一仕事済んだところなので、今の所予定はありません。
「じゃ、少し暇だから遊ぼうか?」
トミー君に言うとトミー君は満面の笑顔です。
街の魔法使いさん達に可愛がられてトミー君はもうお母さんの事も忘れたようです。
時折怖い夢を見て魘されますが、起きて行って私が手を握ってやるととても幸せそうに微笑んでくれます。
最近では殆ど魘される事も無くなったようです。
幼いとは言えトミー君もさすがに魔法使いなんですね。
「小っちゃくなって!」
「はいはい」
トミー君のお願いを聞いて私は子供に変身。
実は、今着ている普通に見えるワンピースもサイズ調節機能付き。
もちろん、靴もです。
トミー君の身に着けている服も靴も下着に至るまでその機能が付いてます。
汚れず、破れても自動補修。
トミー君が大人になっても着られますが、さすがに大人と子供の服のデザインは違うのでそこまで着る事は無いでしょうが。
この服の特徴は縫っていない事。
一応縫い目がある様に偽装はされていますが。
伸縮性抜群、エアコン機能付きでやたら凝った仕様です。
私は小学校低学年頃の私に変身。
トミー君は嬉しそうにはしゃいだ声を上げます。
魔法少女スタイルのようにゴスロリじゃないので抵抗なく子供になれます。
「じゃ、鬼ごっこ。私が鬼ね」
きゃあっ、と楽しそうな声を上げてトミー君が空に浮かびあがります。
今、トミー君の一番大好きな遊びの空中鬼ごっこです。
ルールは、街の結界の中だけで遊ぶ事。
スピードを出しすぎない事。
人の迷惑にならないようにする事。
人の家には立ち入らない事、です。
きっと、森の中や山の中でやれば、もっと面白いのかも知れないのですが、他人が敷地内に入る事が無いように魔法が掛けられていても、もしもの事があります。
まだまだ、魔法使いの街を知られる訳にはゆきませんから、って!ええええーーーーっ、結界を越えて見知らぬ人がーーーーーっ!




