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60 魔女たちの昔話

 「一日一回。でも、汚れを感知したらその都度発動。

範囲指定は・・・・、直径10メートル位?」

私は由紀ちゃんに聞きます。

「地面から上、家の外部結界の範囲内の方が良いわね」

「あ、そうか。直径なんて言ってたら自分家以外もやっちゃいそうだし、付ける場所によって行き届かない場所も出来るね」

「家の外壁は作る時に汚れを寄せ付けない魔法が組み込まれているし、家の内部だけで十分ね」

「家にその機能が付いてるからエアコンも要らないし・・・。

うん、余った場所には修繕魔法を入れちゃいましょう」

私は家の管理用魔法陣の新しい図式を完成させた。


 「素晴らしいのお!」

魔法陣を書いている間、目をキラキラさせて見ていたナンナヴィオル様が言いました。

「この清掃の魔法の術式の中でさえ様々な式が含まれておる。

これほど雑多な式をようもバランス良く組み上げるものじゃ。

これはヴィオルの血筋と言うよりフェルフラウの指導教育の賜物じゃな。

フェルフラウは昔からこういう細々とした細工が上手かったからのう」

「いえいえ、麻代ちゃんが天才なだけですわよ」

私が新しい魔法陣を組むと聞いてやって来ていた小夜さんが言った。

「麻代ちゃんは術式と言う概念を知った途端、私の結界の術式をあっさりと看破したあげく構造を知りたいと分解するところでしたわ」

えーーーー、小夜さんそれは忘れて欲しい黒歴史です。

「なんと、それほどか!

魔力の強さといい、実績といい、魔女の名を冠してもおかしくは無いの」

うわぁ、そんな烏滸がましい事!

「能力だけならば、とっくに魔女ですわねえ。

けれど、麻代ちゃんはまだ18歳になったところですのよ。

人生経験をせめて後200年は積んでもらわねば」

200年!20年じゃ無く?寿命が尽きるのでは・・・。

あ、そうか。

私は魔法使いだから体が完成した時点で歳を取らなくなるんだった。

その事を思うと、置き去りにして来たパパとママの事を思い出した。

200年経ったらこの街以外に知っている人は誰も居なくなるのよね。

パパは最初から魔素を少しは感じていたから魔法使いにならなくてもきっと長生きするだろうけど、ママは・・・。

「妾が魔女の名を得たのは500歳を超えていたの。

その頃は別の魔女が居って、若すぎると煩かったわ。

暫くは放っておいたが嫌がらせがあからさまになって来たので煩くなって捻り潰してくれた。

その後かの、魔女と呼ばれるようになったのは。

そやつの強硬な反対が無ければもっと早くに魔女の名を冠しておったろうの。

どれ程の魔女かと思えばつまらぬ奴であった。

あれならば、10の頃のヴィオルの方が余程能力も高かったし、魔力も強かったわ」

「私が魔女になったのは、200歳の時でしたわね。

能力的には申し分ないと自分でも思っていたし、お母様にも認めていただき、独立してからだったけれど、母の七光りだなどと煩い事。

やはり、嫉妬が大きかったのでしょうね。

千年も経てば誰も何も言わなくなりましたけれどね」と、由紀ちゃん。

「そなたは妾の娘であるだけでなく、父親は大魔法使いであったから、血筋的にも当然じゃな」

「え?」何故か由紀ちゃんは凄くビックリしています。

「お母様、初耳でございますが。

私はてっきり父は普通の人で、とっくに亡くなっていたのだと。

確かに、魔女の娘は魔女の所で育つのが当然でございますが、父の事など聞いた事もなかったのですが?」

「とっくに死んでおったのは確かじゃの。

そなたが妾の腹に居る頃に死んだのじゃ。

とある国の王に謀殺されての。

その王の弟だったのじゃが魔法使いとしての才能が自分を上回る事に嫉妬した王が地位を脅かされるのを嫌っての所業じゃ。

あれは、王位など興味も無い研究三昧の男であったのに。

そなたを孕む時も妾が押し倒したのじゃぞ。

その国は妾が滅ぼしてくれたわ」

「ああ、古王国フェステラでございますね。

大魔女様の怒りを買ったと聞きましたが、そのような経緯でございましたか」と、小夜さん。

「あの頃は私もまだ国許の王宮住まい。

早く独立したいと兄をせっついていた頃ですわね。

かなりのお転婆で兄の手を煩わせていたので、あの事件の後にお師匠様の所へ修行に行く事を許してもらえましたわ。

良き師匠を持ちながらろくに修行もせずに、自分の力に慢心し独り立ちした最後のフェステラ王の様に愚かな真似をせぬよう、魔法使いは早めに教育せねばと思われたのですわね。

お転婆が過ぎて国を滅ぼしてもらっても困るとでも思ったのかしら?」

何千年も前の話題に興じる魔女様達でした。

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