59 お引越しです
「それでね、真っ赤な長ーい髪がマントみたいに広がって、金色の目がピカーっと光って、凄く怖かったけど、かっこよかったよ、小夜さん」
新しい居間の大きなソファーに収まった私は報告会です。
数日前は影も形も無かった家です。
皆で寄ってたかって半日で作り上げたそうですが、とてもそうは見えません。
どこもかしこも無駄に凝った造りです。
天井は高いし、オシャレな照明器具は魔道具です。
小夜さんの家に有った由紀ちゃんの工房はそっくりそのままこちらに移動して来ています。
私の部屋もそう。
私が数日前に出て来たままの私の部屋がこちらに場所を移しています。
お気に入りの洋風の窓もスベスベの無垢の木の床も、可愛いお気に入りの壁紙も白い飾り天井もそのまま。
ただ、窓から見える景色が少し違うだけです。
一か所だけ違うのは使って無かったクローゼットの一つが開けると下に降りる階段になっていて、お座敷にそのまま行けるんですよ~。
なんと、私専用のお座敷なんです。
他の人達はお座敷が必要じゃ無かったみたいなので、このお座敷に行くには縁側から入る以外は私の部屋からのルートしかありません。
私が作ったお座敷みたいに廊下の形の縁側には小さな靴箱も置いてあるので靴をそこに仕舞えます。
二階にある私の部屋の隣はトミー少年の部屋。
トミー君もこちらで一緒に暮す事になりました。
幼いので一人暮らしは可哀想です。
もう一つお隣は空き室です。
ナンナヴィオル様は一階の由紀ちゃんの隣の部屋になりました。
一階には由紀ちゃんの工房の他に私の作業部屋とナンナヴィオル様の工房もあります。
ナンナヴィオル様の工房は由紀ちゃんのと同じくらいの大きさです。
私の作業と言えば物作りより術式の組み立てやその検証位なので大きな工房は要りません。
その内に必要となるかも知れないけど、きっとその時は私が独立する時なんでしょうね~。
ところで、私と由紀ちゃんが出て行った小夜さんの家は、私の部屋だったところに圭太君が入る事になりました。
やはり、寮での一人ぼっちの生活は不便だった様で、ご飯もいちいち小夜さんの家に行って食べていましたがこれからは同じ家の中なので便利です。
デイビス君はお祖母さんと一緒に暮しているし、チェリちゃんもお祖父さんと一緒です。
圭太君一人一人暮らしは可哀想ですものね。
由紀ちゃんの住んでいた部屋は今まで客間暮らしだったフラウさんが入ります。
ただ、小夜さんは家事をしませんからご飯は今まで由紀ちゃんが作っていましたが、どうするのかなと思っていたらフラウさんがけっこう上手でした。
家が建ったばかりで片付けが忙しかった由紀ちゃんの代わりに晩御飯を作ってくれましたが外国風って言うより異世界風のちょっと変わった料理でしたが美味しかったです。
まだ眠り続けている小夜さんのお弟子さんはちゃんと自分の家があります。
引っ越して来る寸前だったので荷物も家に収まっています。
後は本人が来るのを待つだけだったんですが。
長すぎる眠りでちょっと心配だったのですが、身体の回復のための必要な眠りなのだと言われました。
魔素枯渇寸前の体に極上の魔素を大量に吸収したので眠りによりそれを落ち着かせているのだとか。
大きなダメージを負った魔法使いが半年くらい冬眠状態になる事は前世の世界ではあまり珍しい事では無いそうです。
魔法使いって・・・本当に人間なんでしょうね?
まあ、私も魔法使いらしいんですが・・・。




