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56 大魔女様

 「私達と行こう。

大丈夫、魔法使いしか居ない街だから、魔法を使ったって叱られないよ。

ご飯をお腹いっぱい食べて、温かいお布団で寝て、それから魔法学校に通うのよ。

イッパイ魔法を覚えて、私達みたいに空を飛んで、色んな事をしよう」

良く考えたら今の私と少年は同じ年頃に見えるはず。

ちょっとお姉さんっぽ過ぎたかな。

でも、少年は満足に食べていなかったのかやせっぼっちで小さい。

鑑定の魔法で10歳と知って嘘だと思ったもの。


 「魔法使いの街?」

「うん、そうだよ。多分君が一番小さい魔法使いになるのかな」

「僕、10歳だよ」

どうやら私の方が幼いと言いたげだ。

「うふふ、魔法使いはね、見た通りの年齢じゃないのよ。

君も歳を取って見れば分かるよ。

魔法使いは一定以上歳を取らなくなるから。

そして、見かけの年齢なんて思いのままだからね」

「大人になれるの?」

「なろうと思えばなれるかも。

早く大人に成りたい?

大人に成れば子供の様に遊んでばかりは居られないよ?」

「うん・・・、やはり子供のままでも良いや」

少年はいつの間にか泣き止んでいた。


 「ヴィオル!」

突然ドスンと体当たりするように後ろから抱きつかれた。

「とうとう、来てくれたのじゃな。

妾は一人で寂しかった。

ここは地獄のような所じゃ」

「え、え、ええーーーー?」


 さっきまで眠っていた少女だった。

銀糸のような髪と薄青の瞳。

ノーブルな顔立ちはどこぞの姫君の様。

だけど、少女の喋っているのは魔法言語だった。

ええーーーーっ!お年寄りじゃ無い転生者が居たの?

それに、ヴィオルって呼んだよね。

由紀ちゃんの知り合い?


 「何を狼狽えておる。母を見忘れたか?

転生して間もないのなら記憶が戻っておらぬのか?

妾はこの世界に転生し、何度も転生を繰り返していたが、顔は少しも変わってはおらぬぞ?

何度も何度もくそ忌々しいあの一族に生を受け、幼い内に殺されて来たのじゃ。

異端として殺されぬよう大人しゅうしておっても、この顔、この髪色に生まれれば、必ず邪神の生贄とされてしもうた。

邪神など居らぬものを、邪神の加護を受ければ魔法が使えると思っておったのじゃ。

此度の生で、やっと魔素が世界を満たしてくれたと思えば、今度はこんな研究機関に売りとばされた。

魔素のお蔭で魔力を使えるようになって、邪神の生贄は要らぬようになったからの」

「ええーと、ナンナヴィオル様ですか?

私、ヴィオルの曾孫です。

曾祖母と殆ど魔力パターンが同じらしいので」

「大魔女ナンナヴィオル様」

小夜さんがやって来て恭しく頭を下げた。

「私、フェルフラウでございます」

「おお、大森林の女王殿か。たしか魔王国の王女殿下であったの」

「もう、何千年も昔の事でございますわ」

この幼女が由紀ちゃんのお母さん、大魔女ナンナヴィオルなのに間違いは無いらしい。


 小夜さんとナンナヴィオル様が昔話を始めたので、あっさりと放っておかれた二人の魔法使いや白衣の男達がモソモソと動き始めた。

「くそっ、死ね!」

全然魔法使いらしくなく、懐から杖ならぬ銃を取り出した男が私達に向かって銃を乱射した。

「グワッ!」だけど、仰け反ったのは銃を撃った男だった。

私が結界を張り巡らせておいたので当たった弾は全て発射されたその場所に綺麗に返されました。

このカウンター能力、皆が凶悪だとかえげつないとか言ってたけど理由が判りました。

たしかにえげつない。

発射されたその場所に同じ速度で返されて、撃った男の体や銃に食い込み銃は爆発します。

破片がそこらじゅうに飛び散って辺りは大変な修羅場になりました。

銃を撃った男の銃を持っていた方の指は千切れて飛び、血がダクダクと流れています。


 「放っておきなさい。自業自得よ」

私が杖を振って治癒魔法を使おうとしかけたら、小夜さんが言いました。

「本物の魔女や魔法使いがどう言うものか、その傷の痛みで思い知るが良い。

我が弟子に対する狼藉も忘れはせぬぞ。

これで終わったと思わぬが良い。

そなたらが無辜の魔法使いを苦しめたなら必ずその報いを受けさせてくれる。

魔法使いは、後に世界を救う者となるはずであったのに。

魔獣への備えは今はまだ物理的な力が通じようが、その内魔法でしか倒せぬようになるであろうからな。

魔法使いを蔑ろにし、虐げた国は亡びるのじゃ」

小夜さんは冷たく言い放った。

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