52 空中のお座敷です
「小夜さんお茶です」
縁側に腰掛けた小夜さんにお茶を出す。
「はい、有難うって・・・・・。
麻代ちゃん、何で空中にお座敷と縁側がある訳?
それも、家があって、お座敷って訳じゃ無く、ぽっかりと縁側付きのお座敷だけって。
百歩譲って、畳が並べてあるだけならともかく、壁や襖の付いたお座敷が壁に書いた絵の様に浮かんでいて、そこに上がり込む事も出来るのに、反対側から見れば何も無いって、どうなの?」
「えーーーーっと、拡張陣を研究していたら、こんなもの作れちゃいました~」
えへっと誤魔化し笑いをしてみましたが誤魔化せるわけがありません。
「詳しく、理論を説明しろって言われても、判らないです~。
ただ、こんな物が出来るって事だけが判りました~。
空間拡張をする時10掛けるだけじゃ無く、それに10乗してみました。
そうしたら、不思議空間が出来たので、そこに創造魔法でお座敷を建てて見ました。
だって、畳でゴロゴロしたかったんだもの~。
街には畳の部屋は無くって、村まで行かなきゃゴロゴロ出来ないし~」
縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲んでお煎餅をかじってのんびりまったり時間を忘れてボーっとしたかったんです。
小夜さんに出したお茶はさすがに自分で淹れた物じゃ無く、ペットボトルのお茶だったけどね。
紅茶も日本茶も達人級の小夜さんに私が淹れた渋茶なんて出せませんよ~。
このお座敷にはキッチンは付いてません。
多分、キッチンやその他を作るだけのスペースはあるんでしょうけどね。
今居る空間は地上1万メートルの高さにある結界の中です。
レーダーにも映らないし、たとえ飛行機がぶつかって来ても大丈夫。
結界が壊れるとか、飛行機が壊れるって言うのじゃ無く、ツルンと結界に触れる前に滑ってしまいます。
もっとも、ぶつかる前に結界が避けますけどね。
さすがに1万メートル上空だと魔素は地球の魔素より宇宙の魔素が多いです。
つまり、まだこの辺りまで地球の魔素で満たされて無いんですね。
空気も薄いし魔素も宇宙空間に有る生の魔素だし、さすがにちょっと辛いので特製結界を出して休んでいます。
なぜ、私達がこんな所に居るかって言うと、行方不明の魔法使いさんを捜索するためです。
眼下に見える地表全てを支配地域に入れるためにこの高さまで登って来ました。
私には全然無理ですが、小夜さんならこの何倍もの地域を支配下に入れる事が可能です。
魔法って凄いです。
この高さに上るのに全然苦労しません。
多分、フヨフヨとこのまま衛星軌道にまで上って行けるんじゃないかな~?
なぜ、私がこんな縁側を持ち出したかと言えば、小夜さんが疲れそうだから。
1万メートルの高さに結界も纏わず仁王立ちして地上を睨んでるんですもの、もう少し楽に監視して欲しいじゃないですか。
実は、襖の向こうの押入れにはお布団だって一組入れてあるんですよ~。
それも、創造魔法で作りました。
創造魔法ってマジ便利。
でも、それだからこそ知られると危ないんでしょうね~。
それに、創造魔法って、物を作る事だけじゃないんです。
有る物を魔素に分解できるんです。
それを知った時、創造魔法は封印すべきじゃないかと悩みました。
それに気づいたきっかけは作ったものの、口が狭くて使い辛い失敗作のバッグを分解した時でした。
一度魔素から造ったのだから、魔素に分解できるだろうと気軽にやって、うっかり中に入れてしまっていた物まで分解してしまったんです。
魔素で作り上げた物では無い物まで魔素に分解できる。
怖かったです。この力を使えば魔物だって分解できるし、もしかしたら地球そのものも分解して消してしまえるんじゃないかって。
内魔法だけなら、そんな大技を使えば魔力切れで無理だろうけれど、外魔法を使う私なら可能なんじゃないかと。
由紀ちゃんに相談したら、「麻代ちゃんは地球を分解して消してしまいたいの?」って言われました。
「そうじゃ無かったら地球を消してしまう事なんて、麻代ちゃんはやらないわ」
その言葉にどんなに救われたものか。
だから、まだ創造魔法を使う事が出来ます。
もう二度と、余程の事が無ければ分解は使いませんから。




