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49 顛末

 会社は設立したものの、魔法使いさん達は自分の研究の片手間に、ほんの趣味的に魔法グッズを作っている程度。

でも、圭太君は魔法学校での勉強以外の殆どの時間を使ってグッズ作りに励んでいます。

お小遣い程度なら十分すぎるほどの収入が手に入っている筈なのにと、尋ねたらとんでもない事が判りました。


 圭太君の実家がピンチです。

圭太君に逃げられたあの女が、圭太君のお姉さんととの契約を盾に損害賠償を求めて来たそうです。

役立たずになったお姉さんの代わりに圭太君を渡すか、大枚な違約金を払うように言って来たとか。

契約と言うのが無法な奴隷契約同然で、未成年の契約だからと突っぱねれば両親に散々嫌がらせをしてきたそうです。

お父さんは職場から首にはなっていないものの暫く出勤を遠慮してくれと言われ、お母さんはパートを首になり買い物に出れば変な奴らに付きまとわれます。

今では息を潜めるように暮らしています。


 こっそり実家に連絡を取ってその事を知って圭太君はそのお金を稼ぎだそうとしていた様です。

お小遣いが欲しかった訳じゃ無いのね。


 どうして、皆に相談しないの、と私は圭太君を叱りました。

うん、私は圭太君の師匠なんだから叱っても良いよね。

師弟の関係は家族と同じなんだからと言ってこんな事に詳しそうな小夜さんの元に連行します。

結局人頼り?

まだ、子供なんだから大人に頼らなきゃ。

元女子高生に何が出来ると?


 「私より、相応しい頼りになる人が居るわよ」

話を聞いた小夜さんが呼んでくれたのが菱沼雄太郎さん。

うん、元大企業の会長さんだもの、こんな事には詳しいはず。


 雄太郎さんは快諾してくれて、後は圭太君に聞いた話です。


 雄太郎さんは、まず圭太君のお父さんの会社に行き、昔からの知り合いらしいそこの社長さんに自分が今、農園リゾートを楽しみながら近所のお年寄りと趣味的な会社を立ち上げた事を伝えます。

その名が『ウィッチ&ウィザード』と聞いて向こうの社長さんはとても驚きました。

実は孫娘に頼まれてグッズを買おうとしたけれど売り切れでまったく手に入らなかったそうです。

そこですかさずお土産だと言って『お守り君』を含めた全シリーズのサンプル詰め合わせを差し上げます。

それから、連れて来た圭太君を自分の会社の一番若い社員でクリエイターとして紹介。

それから、本題に入ります。

実は、圭太君が最近話題の魔法に目覚め、彼の作っている〇〇さんシリーズは本当に効き目がある事。

そんな彼を引き抜こうと実家にまで迷惑を掛けている女が居るので迷惑している事を伝えました。

「これ以上迷惑を掛けられたらこっちにも考えがありますから」

と、遠まわしに脅します。

その頃には、圭太君の苗字の緑川で事情が分かったようでした。


 引退したとは言え、今もかなりな影響力を持っている筈の雄太郎さんを敵に回すなどとんでもない事です。

それに、今雄太郎さんが立ち上げたと言う新会社『ウィッチ&ウィザード』は最近噂になって来ている魔法の存在をリアルに感じさせられる物です。

きっと将来的にとんでもなく巨大な会社に化けるのではないかと、やり手だった雄太郎さんが係わっているだけに相手の社長さんは確信したようです。

まあ、魔法使いが気分転換に趣味的に作っているなんて判らないですからね~。


 それから、女の所に乗り込んでお金で解決を付ける事になりました。

けれど、その頃には彼女の所にも連絡が来ていた様で酷く顔色が悪かったそうです。

圭太君のこれまでに稼ぎ出したお金と、雄太郎さんがそれに足してくれたお金を女の前に積み上げ、契約書を請求したのですが、中々契約書を出さないので雄太郎さんが切れて怒鳴りつけはしなかったものの殺気バリバリで圭太君も物凄くビビったそうですが、女は腰を抜かして泣き出し契約書を差し出しました。

さすがに元英雄で王にさえ成れた筈の人です。

 そして、その契約書の出鱈目な事。

雄太郎さんは魔法使いですから書類の不自然な部分などお見通しです。

その事をビシバシ指摘され、女は元の契約書に後から加筆した事を白状しました。

女が後から何も言って来ないように、雄太郎さんの懇意の弁護士さんを同行していましたし、ボイスレコーダーにも女の自白はしっかり記録してあります。

もうこれからは圭太君の家族には手を出さないと約束させました。

約束を破れば文書偽造で手が後ろに回るのですから女も大人しくなるだろうと言って貰え、圭太君もホッとしました。

お姉さんの事は自業自得でもあるので圭太君も追及はしないようです。

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