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4 魔法使い達

 「多分、こちらに転生して来たのは全て魔法使いだと思う。

儂が現在75歳。

由紀さんのチャットルームに参加している奴らの年齢を聞くと大抵同じ位の歳だから。

あの頃魔法使いの大量虐殺があったんだ。

バカバカしいにも程がある。

魔法使いの肉を食えば魔素が取り込めるなんて、誰が流した噂なのか」

宗市さんは溜息を吐いた。

「やだ、そんな事があったの?私が死んだのはポーションを狙った奴に毒を盛られたのよね。

いつもやって来る長年付き合いのあった商人で、油断したわ。

無味無臭の毒なんて教えなきゃ良かった。

害獣がずるがしこくて普通の毒じゃダメだからって上手く聞きだされて、バカよね。

あいつもバカだわ。

私の薬は別段魔素が必要な訳では無いし魔素タップリの素材が原料と言う訳でも無いのに。

私が死んだらそれっきりポーションの供給は無くなる訳だから」


 「由紀ちゃん、殺されたの?」

魔法使いが喰われたと言う事より由紀ちゃんが毒殺されたって事の方が恐ろしくて私は震えた。

「ああ、大丈夫よ」由紀ちゃんは私を抱きしめてくれた。

「あの薬は苦しくもなんともないのよ。

スウッて眠る様に死んで行くのよ。

あの魔素の枯渇した世界で一人ポーションを作っているより、こっちに生まれ変わって戦争も経験したけど良い旦那様に巡り合えて息子を産んで、麻代ちゃんに逢えた。

その方がどれほど幸せだったか。

そうそう、あの毒はすぐには死に至らなくって、私が倒れたその後の事を少し見てたんだけど、何故か城の兵隊がなだれ込んで来て戸棚を漁っている商人を捕まえたわ。

直後に完全に死んじゃったからその後は知らないんだけど」


 「あなたは三大魔女のヴィオル様!?」

宗市さんが驚いた様に立ち上がった。

「また古い話を。

そう呼ばれたのは魔素が減り始める前、千年も前の事じゃない。

私はただの錬金術師で薬屋ですよ」

「そこでビックリするって事はあなた本当にフォルスの魔将軍アルバランティスなのね」小夜さんが言った。

「前世の名前をハンドルネームに使ってたのね。

てっきり私は魔将軍のファンだと思ってたわ。

将軍職には珍しく外放出タイプの攻撃魔法使いだからファンが多かったでしょう?

普通の将軍職は内循環系の身体強化タイプが多かったから」

「そのファンに騙し討ちされて喰われたんだから恥ずかしい限りですよ」宗市さんは苦々しい顔をした。


 う~ん、色んな名称が出て来ても前世の無い私には全然判りません。

でも、聞き捨てならないセリフもイッパイ出てきたような?

千年前に三大魔女って・・・由紀さん前世は幾つまで生きたんでしょうか?

魔将軍って、魔王様にでもお仕えしてたんでしょうか?

宗市さんって前世は食べられちゃったんですね。

ファンが沢山居たってアイドルですか・・・。


 「あの日、王に命ぜられてヴィオル様を保護するために駆けつけたのは私の部隊でした。

しかし一足及ばず申し訳ございません」

儂と言う一人称が私に変わって宗市さんは深々と頭を下げた。

「あら、それは仕方が無い事よ。

それに私は魔法使いが喰われる恐ろしい光景を見ずに済んで良かったと思うの」

「私は見たわよ」と、小夜さん。

「だから、私は私の森を道連れに全部吹っ飛ばしてやったわ。

もちろん、私の身体も粉々だったろうけどね」

物凄く恐ろしい事を聞いたような気がするけど小夜さんの顔は穏やかなニコニコ笑顔のままだった。

「三大魔女のお一人フェルフラウ様でしたか・・・・」

力が抜けた様にストンと再び椅子に座り直して宗市さんは呟いた。


 「ねえねえ、由紀ちゃん。

三大魔女って事はもう一人居るの?

ここに来るの?」

魔女と言う言葉にワクワクしながら私は由紀ちゃんに聞いた。

「気になるのはそこですか・・・」

何故か宗市さんに呆れたような目を向けられた気がする。


 宗市さんが此処に来た時、私を曾孫と紹介されて酷く羨ましそうに「儂の子も孫も魔法使い級の大きな力を感じた者は一人も居なかった」と言ってたけど、私って魔法使い級?それって凄いの?


 「三大魔女のもう一人はねえ、もう亡くなってたのよ。

普通に老衰。

もう魔素が薄くなっていたけれど、最後まで魔女と呼ばれるに相応しい生き方をしていたわ。

亡くなった時は転移が使えなくなっていたから見送る事は出来なかったけどね。

私達が死ぬ100年位前だったかしら?

噂では一万年を生きたと聞いているけど魔女の名の通り自由でとっても若作りだったらしいわよねぇ」

小夜さんは意味ありげな目で由紀ちゃんを見る。

「そうですよ。

凄まじい若作りでしたよ。

年々若くなって、亡くなった時は十歳位の子供にしか見えませんでしたからね。

身体は正真正銘十歳でしたけど魂が限界でしたもの。

魂の老衰はどうしようもありません。

大魔女ナンナヴィオル。

私の前世でのお母様ですよ」

「え、もしかして由紀ちゃんのお話に出て来た魔女っ子ナンナってその人の事?」

「あら、小学生くらいの頃にお話ししてあげたのに覚えてたのね。

因みに本にしたし、今テレビアニメでやってる魔女っ子ナナコはそれが原作。

えええっ!全然気づかなかった!

魔女っ子ナンナはお気に入りで何度も由紀ちゃんにお話をせがんだものなのに。

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