46 共同ラボと魔法グッズ
小夜さんの家を中心にして広がっている街ですが、まだまだ余裕があります。
元々一区画の大きさが相当大きくて、町と言うより別荘地向けだったのですが、冬には深い雪が降り積もり、元々あった廃村の周りをむやみやたらに削ったりしたので水脈の一つを切ってしまい湧き出る水で沼のようになってしまった場所もありました。
そんなので売れるはずも無くて開発会社はバブルが弾けると同時に倒産、元々良い土地では無かったのでバブル期にも値段が高沸する事も無く小夜さんが分譲地と周囲の山ごと安く買えたと言う訳です。
小夜さんの家がある場所は元々の村があった場所で他に比べて地盤がしっかりしています。
小夜さんは地主さんですから元の小さな村の敷地全部を自分の屋敷にしています。
そこを除いても区画は200以上もあって、端っこの方は雑木が生い茂って宅地だったとは思えない様相になっていました。
そんな土地も今は魔法できちんと整備がされ、必要となるたびに建築魔法の達人たちによって一日に一軒の超スピードで家が建てられます。
一区画に数軒は建てられるので人口がどんどん増えても当分大丈夫そうです。
そうそう、最近マンションのような集合住宅が建てられました。
魔道エレベーター完備の4階建てです。
一、二階はラボ、その上がちょっとした広々ワンルームのようになった個室です。
実は共同研究をやっている人達から皆で集まれる広いラボが欲しいと要求があり、今の戸建てだと生活魔法があっても管理が面倒と言う人も多く、ラボの上に住む形の住宅になったようです。
魔法使いさん達は殆どが独身者だものね~。
「昔は魔法使いと言えばたった一人でコツコツと研究していた物なのに、時代は変わったわね」
と、小夜さん。
「麻代ちゃんのお蔭かも知れないわ。
麻代ちゃん、しょっちゅう皆に協力を求めているし、彼等も大勢でワイワイ研究し、意見を出し合う楽しさに目覚めたみたいだから」
ところで、この街の魔法使いさん達の収入はと言えば、年金を貰っている人も居ますが、ちょっとした魔法グッズを作って売っている人が結構多いです。
ほんのちょっと元気になる匂い袋とか、注意力、集中力が上がって勉強に役立つキーホルダーや指輪、ペンダント、ブレスレット等々。
魔法使いさん達は器用な人が多くて彫金や裁縫、木工細工などもお手の物。
鎖なども魔法を使えば複雑な形の物でもすぐに作る事が出来ます。
それを売れれば一割の報酬、売れ残りは一月で回収と言う契約で委託販売していますが、最近は密かなブームになっていて入荷する端から売れて行く状態だそうです。
ただ、出す前にボツになった物もあります。
一種の身代わり人形で致死的な状態からたった一度だけ所有者を救うと言う物です。
それはいくらなんでもまだ魔法が十分に行き届いて無い今の状況だと色々不味いだろうと言う訳でボツになりました。
実は私が作ったんですが、お小遣い欲しさに。
皆さんの前世の世界にも似たような物が有ったそうですが、それって国宝級の高級グッズで結構嵩張る大きな物だったようです。
そんな訳で、致死的な状況でも怪我で済むお守りストラップにしておきました。
それなら、衝撃を一瞬相殺して直撃を躱す術式だけで済みます。
身代わり人形の場合、所有者保護の術式を3つくらい入れる必要があったので楽です。
使い捨てなので陣を組まずに術式だけを入れる方法にしました。
使用後は身代わり人形が割れて術式は分解しちゃいますから秘密保持のためにはその方が良いです。
後は治癒魔法で治せば後遺症も無くなるでしょうが、治癒魔法そこまで浸透できてるかな~。




