45 妖精進化
「魔素はご飯で魔力はオヤツって感じ?ううん、すっごい御馳走かな~?」
魔法陣作りは暫くお休みして新しい研究対象の妖精観察に終始している私です。
昼間はほとんど見えなくなる妖精達を私は見やります。
何故か昼間でも見ようと思えば見えるんです。
由紀ちゃんは妖精達が私の魔力を食べたからだと言います。
人から出ている魔力は妖精たちにとっては御馳走の様ですが、好き嫌いがあるようです。
観察していると人によって近づいて来る妖精の色が少しずつ違うような?
でも、何故か私には全部の妖精が近づいて来るんですが~。
もしかして、生まれたばかりの妖精が初めて食べた魔力が、夜に散歩を日課にしている私の物だったとか?
始めて妖精を発見した日、あれほど光っていた妖精ですが、いつも光っている訳ではありません。
美味しい魔素をたらふく食べている時に強く光りますが、普段はあれほど光る事は無いようです。
妖精が生まれたのは沢の魔素溜まりで間違いないようですが、今は一つも居ません。
どうも、結界内での妖精の個数が限界に達しているのではないかと思います。
妖精達は結界の中に閉じ込められた形になっています。
魔力の塊のような結界壁には近づけないようです。
十日ばかり経つうちに妖精の大きさに差が出てきたような気がするのですが・・・・。
と、さらに観察していると、見てしまいました。
少し大き目な妖精が小さな別の妖精に近づき一つになっちゃうのを!
大きいのが小さいのを食べちゃった?
以前どこかで聞いた蠱毒の壷と言う話を思い出してゾクッとしました。
結界が蠱毒の壷となって妖精達を共食いさせているのではないかと思ったんです。
でも、何故か不思議なくらい妖精達に嫌悪感を感じませんでした。
妖精の数は半分になり、さらにその半分になって行き、最初に見つけた時には小豆粒位に見えた妖精の大きさはゴルフボールくらいになっていました。
さらに、そのゴルフボールがぶつかり合う様に一つになって大きさを倍にした瞬間、パチンッと弾けて中から何かが飛びだしました。
それは、蝶やカゲロウに似た薄羽根を持った小さな人?
「まあまあ、綺麗に仕上がった事」
見ていた小夜さんが言いました。
「妖精と言えばこうなのよね~。
さて、誰がこの姿を与えたのかしらねぇ。
たぶん、妖精ならこうだって言う思いを全員が持っていたからよね。
その思いを持っていたのが全員魔法使いだから余計強制力があったんでしょうね。
この結界内の街は強い力を持つ魔法使いの街だから、特別進化が早かったのかも知れないわね。
生命体では無いとは言え、ここまでになったら魔法生命体と呼んでも良いのかも知れないわ」
妖精は他の場所にも発生している様でした。
でも、ここまで急速に進化を遂げている妖精は居ないし、人に寄ってくる妖精は殆ど居ないようです。
そもそも、フワフワと漂っている妖精を認識している人がほぼ居ないのだとか。
「妖精が近づく人は魔法使いだとか?」
世界中を探してもこの街に居る魔法使いほど強い力を持つ魔法使いなんて前世の記憶持ちで、自分の街にあえて留まっている人しか居ないでしょうから。
故郷在住の魔法使いさん達も時折この街に来ます。
転移魔法を使うので一瞬で来る事が出来ます。
故郷の街を選んだとは言え、いつかそこに住めなくなる事が無いとは言えません。
だから、彼等はこの街に家を持ち、少しずつ大切な物を運んで来ています。
この街では変装する必要も無く、素の自分で居られる事が心地良いらしくて、こっそり自宅の近所周りの魔獣退治をしているのでなければ、引っ越しして来たいと思っている人も多いようです。