42 翻訳魔法
さっそく術式だけの魔法で圭太君に魔法言語を覚えて貰いました。
術者は小夜さんだから安全に私やチェリちゃんが貰ったのと同等の知識が得られたはずです。
もしかしたら私達の物より優秀かも。
そもそも譲渡魔法によって譲渡された魔法知識は、使わないと薄れます。
文字などを含む言語能力の言葉は沢山使っているけれど、文字は一部魔法文字以外は殆ど使わないもの。
本でもあれば良いのだけど。
まだ、魔法陣にしてないのはちょっとした野望があるからです。
この町に居る魔法使いさんは世界各国から来ていて、今は7か国。
中には一つとんでもなく未開のジャングルの奥地から来た人が居ます。
まだ、文明世界の人達に知られていないその集落から来たその人は前世の記憶が戻った時異端扱いされて集落を追い出されたそうです。
『もっと上手くやれば魔法力が戻った時に大シャーマンにでもなれたかもしれない』と、笑いながら言いました。
そもそも、その集落で70過ぎまで生きていられたのが奇跡の様な物だったようです。
しょっちゅうジャングルの中を移動している民族だから歳を取った者は尊敬の対象と言うより邪魔物でしか無かった様で、唯一の例外がシャーマンだったらしいです。
今、彼は前世の名前であるリュシーフェルの名前を名乗り前世の姿をしています。
髪は黒のドレッド、浅黒い肌で目は緑だけれど、前世では髪は紺色、目は紫色だったそうです。
名前から分かる様に、実は彼は小夜さんの前世の弟子の一人です。
小夜さんの前世の名前、フェルフラウの名前を二つに分け男性がフェル女性がフラウの名前を元々の名前の前後どちらかに付けて魔法名として名乗るのがフェルフラウ風と呼ばれていたそうです。
魔女となった小夜さんが始めた方法でその後多くの魔法使いがそのやり方を踏襲、誰の弟子かすぐに判るのだそうです。
元テリーさんことフラウルシールが通り名をフラウにしていたのは最後の弟子としてフェルフラウにことのほか可愛がられていたからだそうで、それが許された人はフラウさんだけだったそうです。
ずいぶん前に独立していたリュシーさんはフラウさんの事は知らなかったようです。
この町で顔を合わせてちょっと照れくさそうに挨拶していました。
小夜さんくらいになると、初期の頃の弟子と後期の弟子に面識が無いのは当たり前で、名乗り合って初めて同門と分かる事が多かったとか。
リュシーさんの未開民族の言葉を含めて魔法使いの皆さんの言葉を含めて全部の言語を収録し、使いこなせる魔法具。
凄く面白いと思いません?
将来的には世界の言葉は一つに纏って行くと思います。
魔法世界ならば距離や国の違いすら無視できます。
転移魔法に国境なんて意味ありませんし、飛行魔法だって国境なんて一っ跳び。
もう少ししたら、転移魔法と飛行魔法で世界中を飛び回れと言われてます。
スクランブルだって平気。
私の結界魔法は最強です。
レーダーだって誤魔化せるんだから。
もっとも、レーダーでの探知の危険性をアメリカ生まれのデイビス君に指摘されて後から加えました。
やはり、平和ボケした日本人の私では軍事技術の事なんてよく判らなかったし~。
翻訳魔法、と言っても通訳してくれる魔法じゃありません。
それぞれの国のネイティブな言語能力を得るんですよ、その魔法を発動している間だけ。
きっとこれは外国から来ている魔法使いさん達に凄く喜ばれると思いますよ。
今までの様に通訳の日本人魔法使いさんを連れて行かずに買い物が出来るんだから。日本人に魔法で変装すればもう完璧。
うん、魔法が一般的になったら、きっとこれも売れると思います。
わ~い、これで私も将来のセレブだ~(笑)。
いつの事か判らないし、多分世界共通語なんて言うのが出来たら要らなくなる物でしょうけどね。




