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39 ようこそ魔法使いの町へ

 「え?え?」

彼はキョロキョロと周りを見回した。

そりゃそうでしょ。

薄暗い寒風吹きすさぶ路地裏から小夜さんの結界のお蔭で月明かりの中で、先日の初雪で白く輝く周りの山々の只中に有りながらまだ緑濃く、ふんわりと暖かい住宅街の只中に出たんだから。


 殆どの家は日本人の征一さんが作ったんだけど、前世の影響が強く出たのか外国の家並みの様。

外国から来た魔法使いさんの中には建築関係の仕事をしていた人も数人居て、その人達も協力して家作りを始めると画一的だった家々も様々な個性が出て来たようだ。

前世の世界にも様々な地方があって、その特徴が出ているのだそうだ。


 「外国?」

「日本よ。ここは、日本の田舎なの。

一番近くの村まで何キロも離れているし、限界集落だったその村も去年最後の住人が立ち退いて廃村になってるの」

その村や農地を菱沼雄太郎さんが買い取りました。

この町を秘密にするために対外的な拠点が必要となったらしいです。


 行方不明扱いになっている高齢者が何人も居るので、その生存確認をしてもらうためにも拠点は必要です。

大きな農家のご隠居様で前世はアルバランティス将軍だった篠原宗市さんは、秋口に家族に連絡を取り、友人に頼まれて農業指導をしているのだと言う事にして家族を一安心させました。

飛ぶように駆けつけて来た息子さん達は溌剌としてコンバインで稲刈りをする宗市さんにホッとしている様でした。

老人ばかりでなく、都会からの移住組の家族を装っている人達が何組も居るので余計安心したようです。

 ちょっとした農村リゾートの様になっている村には最新式の農業機械が沢山有り、そこのオーナーが名の知られた大企業のご隠居様だと知って、不釣り合いに立派な農機具などにも納得していました。

ただ、これ以上の住人を引き受けるには農地が小さいし、変な輩に金目当てにかき回されたくないと言う事で村の事は内緒にしておいて欲しいと言うとそれも納得してもらえました。

バブル期の頃に土地目当ての有象無象につつき回された経験があって、その頃は家長として君臨していた宗市さんの鶴の一声で土地を売るのを止めたのですが、売られた土地は転がされバブルが弾けた後は売るに売れない不良債権として未だに放置され雑草が生い茂って近所の農地の迷惑になっているそうです。


 行方不明のままで良いと言う人も半数以上居るし、そもそもの家族が居ない人も居ます。

でも、良い家族を持っていた人達はやはり家族を心配させたままではいたくないようです。


 「さて、もう夜になっちゃってるし他の人達に会うのも明日で良いよね。

今日は私の家に泊めてあげる。

学校の側に寮も出来てるから、明日からはそこに住んでね」

私は彼を家に連れ帰った。


 「良くいらしたわね、新しい魔法使いさん」

待ち構えていた小夜さんと由紀ちゃんが出迎えてくれた。

「紹介するわね。

この家の主の小夜さん。魔女なの。

同じく魔女の由紀ちゃん。

私の曾祖母よ」

「初めま・・・・えっ!

曾祖母って・・・・、魔女って・・・・」

彼は目を白黒させた。


 彼の驚きはそれだけでは済まなかった。

小夜さんと由紀ちゃんの以前の老女だった時の姿を見せられ、魔法使いは成長しきった時点で殆ど歳を取らなくなるか、取っても微々たるものになること。

姿を変えたり年齢を偽る魔法がある事、等々を教えられ、止めが私が元の姿に戻った事だった。

「だって、こんな痛い格好、素で出来る訳ないじゃない」

私が言うと、何故か彼はとてもガッカリしたように見えた。

何故に?

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