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27 外伝2 魔法少女

 「あれは魔獣。魔素溜まりで生まれる歪んだ魔素の塊。

生まれるって言っても生き物じゃないのよ。

人を襲って食べたりするけど、それでも生き物じゃないの。

だからすぐに殺さなきゃダメ。

あの毛玉位下等な魔獣なら物理でも十分殺せるから」

黒髪ツインテールの少女が説明していると、助かったのを知ったのか沢山のキャンピングカーの中から人がゾロゾロと出て来る。


 「魔獣だの魔素だの、ゲームじゃあるまいし。

あいつら、宇宙生物とかじゃないのか?

あんた達も飛んでたけど、宇宙人?」と、少年達の一人が言う。

「魔法使いだって言ったじゃない。

気付いて無いの?一年前から地球は魔法世界になってるんだけど」

「魔法世界って・・・・。一年前?

もしかして、あのオーロラ!」

「そうよ。あれは魔素が降って来たの。

地球が魔素のある宇宙空間に突入したから。

魔素は地球に吸い込まれて地球の物になって噴き出して来るの。

だから、もう地球は魔法世界だわ。

皆、魔法が使えるのよ。

魔法が使えたら、あんな下等な魔獣なんかに負けないわ」

フワリと少女たちは宙に浮いた。

「空も飛べるし、魔法だって撃てる」

金髪の少女が杖を振ると、枯れた林の前にいつの間にか出来ていた案山子の的に小さな火の塊を打ち込んだ。

「駄目よ、火なんか使っちゃ。火事になっちゃうわ」

黒髪の少女が砕けてブスブスと煙を上げている案山子に水の弾を撃ち込んで燻りを消す。

「いっけない。

火の方が派手だと思っちゃって」

金髪少女は肩を竦めて舌を出した。


 「ま、魔女っ子?」

「魔女っ子ナナコだあっ!」

キャンピングカーから出て来た子供達が騒ぐ。

「やだあ、魔女は魔法使いの上位よ。

私達はまだまだ魔法使い。

魔法はね、これほど濃い魔素の中だと魔法使いにまで到達していなくても使えるわ。

皆、使って魔獣退治してね。

私達だけで世界中にこれから湧き続ける魔獣を全部倒すなんて無理だから」

宙に浮かんだままの少女たちが再び杖を振る。

あちらこちらからキラキラ光る宝石のような物がフワリフワリと浮かび上がり空を飛んで集まりザラザラと人々の前に山になった。

「これはね、魔核。

魔獣を倒すと出て来る質の良い魔石よ。

魔素が圧縮されて塊になった物だから、一種のエネルギーの塊なの。

色んな物に利用できるから、魔獣退治して魔獣が消えてもこれを集めれば将来きっと利用方法が見つかって価値有る物になるはず」

「魔素があるだけで、地球の資源問題はほぼ解決したも同然よ。

化石燃料みたいに環境を汚す事も無く、無限にあるエネルギーだから。

だから、早く魔法を使えるようになってね」

「この魔核は皆さんにプレゼント。

政府の偉い人や大企業の社長さんも居るみたいだし、キャンピングカーの損害位、魔核と交換でその人達が出してくれるわよね~」

クスクスと少女たちは笑いあい、唐突に姿を消した。

それはもう、元から居なかったみたいに。


 「魔法少女・・・・」

少年達の一人が呟いた。

「夢・・・、じゃ無いよな」

「俺も見たから、少なくともお前の夢じゃねえよ」

と、目の前のキラキラ光る小石の山に手を突っ込んでザラザラ零す。

「ちょっと待ってくれ。それに手を振れないように」

恰幅の良い中年の男が言った。

「あっ、あんた大臣の獺川おそかわ!」

集まって来ていた大人たちの一人が驚いた様に言った。

獺川おそかわさん、独り占めはダメですよ。

少女たちは、私達全員にくれるって言ったんですよ」と、別の男が言う。

「矢代電機の山本社長だ、何でこんなお偉方がこんな小さなキャンプ場に?」

「どうせ、談合の相談でもしてたんでしょう。

都内の料亭はマスコミに張られてますからね」

ヒソヒソと大人たちは囁き合った。


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