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26 外伝1 魔獣襲来

 少年達は逃げ惑う。

何故?何でだよ!

ただ、平和にキャンプをしようとしていただけなのに!


 妙な毛玉が一時話題になった事は知っていた。

インターネットでも話題になっていたから。

でも、そんなモノは作り話だと思っていた。

だけど・・・・。


 彼等がキャンプ場に着いたのは午後になってから。

良い場所はキャンピングカーに埋め尽くされていた。

彼等の様に電車やバスを乗り継いでやって来る昔ながらのテントを張るだけのキャンプは最近は珍しくなっていて、その古くからあるキャンプ場はさながらオートキャンプ場の様相を呈していた。

 早朝から家を出て来たのだけどちょっと遠くにしすぎたかと思いながら管理人小屋に近づいた時、異変に気付いた。

キャンプ場に人影が無い。

バーベキューの支度をされたコンロの上では食材であった物が焦げて煙を上げている。

キャンピングカーから張り出すように張られたタープが外れて支柱が倒れ掛かっている。

何か変な臭いがした。


 「逃げろ―!」

誰かが叫んだ。

そちらを見るとキャンピングカーの閉じられた窓から引き攣った顔の男が何かを叫んでいるのが見えた。

驚いて近づこうとした彼等の目が見たのはキャンピングカーに張り付く幾つもの毛玉。

いや、毛玉じゃない。

それは、べったりと一枚の布の様に伸びて車のボディーにくっ付いている。

そして、嫌な臭いの正体が判った。

シュウシュウとそいつらの下から煙が上がっている。

奴らは車を溶かしているのだ。


 気付けばそこに停まって居るすべてのキャンピングカーにそいつらが居た。

「うわっ、アチッ」少年の一人が叫んだ。

一番近くの車に張り付いていた奴の一匹が体の一部を長い紐の様に伸ばして腕に巻きつこうとしたのだ。それは少年の大きなリュックが邪魔になって少年の腕を掠っただけだったが彼の腕に火脹れを生じさせていた。

そいつの触れた大型のリュックは溶けて黒ずみ煙を上げた。

「何なんだ、こいつ!」

少年達は悲鳴を上げて元来た道を帰ろうとした。

だが、そこにはワサワサと見かけだけは愛らしい毛玉が道を覆い隠さんばかりに犇めいている。


 キャンプ場の周囲の、以前は整備された美しい林や散歩道があった場所は無残に枯れ果てた木々と秋でも無いのに大量に落ちた茶色い落ち葉で無残な姿になっている。

そこにも大量の毛玉が・・・。


 どれほど逃げ惑ったのか、何処に行っても毛玉が居るのでキャンプ場の中でしか逃げられなかった少年達がもうフラフラになってこれまでかと死を覚悟した時、涼やかな少女の声がした。

「じっとしていて、もう大丈夫よ」


 それは二人の少女だった。

こんなキャンプ場には場違いな、ちょっとゴスロリっぽい可愛らしい衣服に身を包んだ小学生くらいの少女たちがそこに居た。

「なあ、俺変になっちゃったのかな。女の子が見える」

「うん、俺にも見える。空に浮かんでいるし」


 一人は金髪のユルフワウェーブを肩の辺りまでの長さで切ったボブ。

もう一人は漆黒の髪をツインテール。

少女たちはそれぞれ杖を持ち次々毛玉を狩って行く。

金髪の少女は白い小さな鳥の様な物を操り次々と毛玉を貫き消滅させて行く。

ツインテールの少女は杖の先からパリパリと雷を落として同じく毛玉を消失させる。


 あれ程大量に居た毛玉もみるみる姿を消し、車に張り付いていた奴らも黒髪の少女の雷の一閃で消失。

だけど、そこに居たと言う証拠は焼けただれた車の跡で分かる。

「もう大丈夫よ。この辺りの魔獣の反応は消えたわ」

フワリと体重を持たないものの様に空から舞い降りて来た少女は言った。


 「魔獣・・・・」

「あ、あんた達、あいつらの正体を知ってるのか?」

「空を飛んでた・・・・」

「あんた達、何者?」

少年達が口々に言う。


 近くで良く見ると、少女たちは目の辺りを覆う銀色の金属らしき仮面を付けているがそこから覘く大きなつぶらな瞳もすっと通った鼻筋もやわらかそうな唇も極上の美少女と言うに相応しい容貌だった。

「私達?」「「私達は魔法使いよ」」

少女たちの声がハモった。

「あ、怪我をしているのね」

黒髪ツインテールの少女が腕を魔獣にやられた少年に言った。


 恐怖と驚きに傷ついた事を忘れていた少年が今さらながらに黒く焦げるほどの腕の火傷に気付き酷い痛みに呻いた。

「大丈夫、治してあげる。ちょっと我慢してて」

少女は手にしていた杖を少年の腕に向け言った。

「痛いの痛いの飛んでけ~」

あまりのセリフに唖然とする少年達。

けれど怪我をしていた少年は驚愕の声を上げた。

「な、治ってる!」

そこには傷一つ無い健康そうな肌が戻って来ていた。

傷が塞がり、新しい肌が再生したのではなく、そもそも傷自体が無かったかのように。

傷ついていた少年はフィルムの逆回しの様に傷が消えて行くのを見ていた。

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