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19 結界陣完成

 魔素が降る。

地球を、その他の恒星、惑星、衛星を優しく押し包み浸みこんで行く。

知られているどんな物質よりも小さな粒だから、何の違和感も無く人や動物、植物の身体に沁み込み同化し、血が全身を巡る様に体を巡って行く。


 地球も浴びせられた大量の魔素が深く隅々にまで行き渡り対流を始めている。

全体から浸みこんだ魔素は緩やかに地球内部を巡り、そして噴き出してくる。

それが魔素溜まり。

今までの表面に降った魔素だけが溜まっていた場所に地球の内部を巡った魔素が地球の内側を巡る事により地球特有の物に変化して再び現れる。

魔素が溜まって行く。

地球の周りに地球特有の魔素として・・・。


 「って、夢を見たの」

私は目が覚めて、眠っていた間に見た夢を由紀ちゃん達に披露した。

「この私が何でこんな学者の人みたいな夢を見たのかしら?」

そう、見た夢をそのまま話しているけれど私本人はあまり理解していなかった。

それがどうしたの?って言う感じ。

ただ、由紀ちゃん達に話さなくっちゃいけないって思いだけは強かった。

「麻代ちゃんは巫女体質なのかも知れないわね~」小夜ちゃんが言った。

「谷の魔素溜まりの質が明らかに変わって来たのはそのせいなのね」と、由紀ちゃん。

「物凄く魔法の親和力が高まっているわ。

前世の記憶があっても、この身体は地球の物だから、地球産の魔素の方に親和力が高いのも当然だもの。

前世と比べて少し魔法が使いにくくて馴染まない感じがしていたのは宇宙から降ってくる生の魔素だったからなのね。

これからは純地球産の魔法使いが爆発的に増えるかも知れない。

教育を何とかしないと扱いきれない魔法を暴発させてしまうかもしれないわ」

唯の夢の話だったのに由紀ちゃんと小夜ちゃんが酷く深刻な顔をしてしまったので物凄く慌てました。

「ただの夢よ?」


 「ただの夢じゃないわ。それはね『真実を知る夢』と呼ばれる物。

巫女、とか神子とか呼ばれる人達が受ける神託。

一番大きな力を持つ者は聖女とか聖人とか呼ばれていたわ。

魔素濃度が低くなってからは形骸化した物でしかなくなっていたけれど、古代では大きな力を持つ巫女達が大勢居たそうよ。

世界のアカシックレコードを垣間見る事が出来る人たちだったんだろうと言われていたけど、魔素濃度が低くなってからは教会のでっち上げた偽物ばかりで評判は地に落ちていたけどね」


 私がそんなに大層な者じゃ無いって事は未だに属性魔法も使えない、攻撃魔法が発動すらしない私が一番よく知っています。

「由紀ちゃん、これ添削してください」

目が覚めてすぐに紙に書いてみた魔法陣の下書きを差し出しました。

今度はちゃんと解除キーを入れました。

さらに内部の温度の微調整とか、結界のサイズ、光学迷彩とかも書き加えて見ましたよ~。

結界のサイズは身に纏っている物の外側何センチとセンチ刻みに決めました。

そうしたら、術式の数が膨大になって小さなカマボコ板じゃ書ききれない事になっちゃいました。


 「これはまた、凝りに凝ったわね~」

小夜さんが横から紙を手に取って楽しそうに笑いました。

「ちょっと大きくなり過ぎたと思うけど、身を守る結界はこの位機能があっても足りないくらいだと思うの」

「そうね」小夜さんが私の頭を撫でた。

「本当に麻代ちゃんは優しい良い子ね。

フラウや他の魔法使い達の事、心配してくれたのよね」

「まあ、マヨさん」

フラウさんが感激したように私を見るのでちょっと恥ずかしくなりました。

「この結界陣、完璧よ。まだ魔力が通ってないけど、使用者に魔力を通させた方が良いわね。

魔法使いのローブの内側とか、マントに書いても良いわよね。

このまま布にコピーしちゃいましょ」

コピーって・・・・。

確かにまだ魔力が通って無いのでただの装飾でしか無いんですけど、魔法陣をプリンターで描いて良いものなんでしょうか?


 縮小コピーされても文字も記号も全く潰れなかったので、魔法陣は理想的なサイズに仕上がりました。

アイロン接着布に。

プリンターのインクだと洗濯したら消えちゃいそうな気がするんですけど、小夜さんは大丈夫だと言います。

プリンターのインクが特別製なのでは無く、一旦魔力を通した術式は、消去や解体の魔法以外で消える事は無いのだとか。

この前うっかり小夜さんの結界を消しかけたのは、私が解析の為に術式を見やすく解そうとして、解体の魔法を掛けちゃったせいです。

消去じゃ無く解体だったのでバラバラになった時点で逆回しの様に元に戻す事が出来ました。

それにしても、小夜さんは凄いです。

インクも何も使わずに術式を空中や地中に書いちゃうんですから。

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