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16 変身

 「マヨさん、サヨさんの所に行かれますか?」

訓練用結界の場所に向かっていると物凄く背の高い外人さんに声を掛けられた。

この人は、最近南半球から来た人で、夏から突然冬に変わって困っていらした方だ。

テリーさんと言う男の人で一人暮らしだったけれど若返り始めたために近所の人に怪しまれ、着の身着のままで逃げだした所を由紀ちゃんに助け出されたそうだ。

いきなり若返った為にテリーさん本人だと認めて貰えず、テリーさんを害して家に入り込んだ不審者と思われたらしい。

 服は他の人から少しは分けて貰えたものの、2m近い身長なので外人さん達の中にもさすがにこれ程の背の高さの人は居なくて、服は微妙に丈が足りない。

まだ来たばかりなので買い物にも行けてない。


 外見変更で体型を一時的にでも変えたら良いと思うのだけれど、魔法使いさんなのに魔法が微妙なのだ。

実は記憶が戻り始めたのも問答無用で由紀ちゃんにここに連れて来てもらってからで、それも穴だらけの記憶、魔法もあまり使えないと言う始末だった。


 よほど、恐ろしい目にあったのだと、同じように穴だらけの記憶を持つ魔法使いさんが言ってました。

その人は生きたまま火に焼かれたのだそうです。

それも、食べるために!

それでも、すぐに命が消えたから何とかトラウマにはならなかったと言ってましたが、穴だらけの記憶って、立派にトラウマだと思う。

恐ろしい事や嫌な事を思い出すまいとする防衛本能なのだから。

小夜さん~、魔法使いだってトラウマになるんじゃない!


 「私も行って良いですか?

魔法をもう少し使える様にならなくては、皆さんに迷惑を掛けてしまいます」

本当に申し訳なさそうに気弱な微笑みを浮かべて言います。


 テリーさんに家族が居なかったのは、家族を作らなかったからで、ずっと自分の男の身体に違和感を感じていたのだそうです。

性同一性障害って言うのかな?

背が高くてガッチリしているので女の人の格好も出来ないし、昔は理解されない障害だったそうです。


 障害が無ければモテモテになりそうなイケメンさんです。

別にナヨナヨしている訳でも無いし外見からは判らないので、男は結婚して家族を持つっていう事が普通の社会だから大変な苦労をしたみたい。

記憶が戻りかけた時小夜さんや由紀ちゃんに話してました。

どうやら、自分は前世では女性だったらしいと。


 実は、外見変更の魔法は性別も変えられるそうです。

テリーさんはそれを覚えたいのだそうですが、魔法自体の理解がまだ追いつかず、外見変更の魔法はまだ使えません。

遺伝子も染色体も変える事が出来る魔法は魔法使いでもかなりベテランにならなければ難しいのだそうですが。


 「うん、テリーさんも行こう」

私が出て来るまで少し待っていたらしいテリーさんの凍えた手を手袋で覆われた両手で包むように握った。

「中で待っていれば良いのに。ここの家は皆の集会所みたいな物だから、遠慮なんて要らないのよ」

「マヨさんは優しいですね」テリーさんはニッコリと笑った。


 結界の中はおよそ20℃。

寒くて震えていたテリーさんがほっと息を吐いた。

結界の内側には相変わらず草一本生えて無くてフカフカの黒っぽい土が敷き詰められている。

地面から生えているのは攻撃魔法用の案山子だけだ。


 今はチェリちゃんの時間。

鋭い土と言うよりセラミックのように固い針が案山子を貫き突き抜け、それが結界に当たる事も無く宙を舞って別の案山子を貫いて行く。

チェリちゃん上手になったなあ。

相変わらず全く攻撃魔法の発動しない私はちょっと羨ましいです。


 そうそう、結界の術式を見たかったんだけど・・・。

「!」

ちょっと驚きました。

何故今まで気付かなかったんでしょう。

広場の中央に術式らしき文字の様な物がクルクル回っています。


 あれ?

見た事も無い文字なのに分かるよ。

幾つもの効果を編み込んだ術式がスルスル解けて私の中に入って来る!


 「麻代ちゃん!解かないで。

結界が消えちゃうから!」小夜さんの、ちょっと焦ったような驚きの声に私は我に返りました。

や、ヤバイ!

慌てて逆転、元の様に組み合わせて戻します。

わあーーーー、叱られる!


 「もう、本当にこの子は変な所で天才ね」

小夜さんはクスクスと笑いながら私を抱きしめてくれました。

「攻撃魔法はもう良いかって思っちゃうじゃない」

 ・

 ・

 ・

 「お師匠様・・・・・」

か細い声がして、驚き振り返ればテリーさんが地べたに頽れていました。

泣きながらゆっくりとテリーさんの姿が変わって行きます。

豊かな緑の髪、少し青みを帯びた肌、透き通ったトパーズ色の目。


 「フラウ・・・、フラウルシールかえ?」

小夜さんが震える声で言いました。

「はい、お師匠様・・・」

小柄で華奢な小夜さんよりさらにほっそりとした女性の姿がそこにあった。

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