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3 月曜日・後

「集会には参加するけど、賛同はしない。僕の思想は既に決まっているから」

「じゃあ、君の思想は何だい?」

「簡単に説明できない。言葉では上手く言えないから」

 盟主は一瞬表情を強張らせたが、納得したのか肩を竦めた。

 簡単に言えるようなことを思想にしない。俺の信念も、説明なんてできなかった。言葉にすれば何か間違っている気がする。そういうことが言いたいんじゃない、そう思えてくる。

 きっと、本当のことは言葉になんてできないんだ。言葉にすれば、それは軽くなる。

「集会に参加するのは自由だよ。多くの人に僕たちの思想を知ってもらいたいからね」

「じゃあ明日。行かせてもらうよ」

 盟主はにっこりと笑って、青年と一緒に去って行った。青年はずっと睨んでいたけど、会話の邪魔をすることなく黙っていた。あの盟主は統制力がある。

 二人の姿が見えなくなり、スバルに声をかけた。

「革命同盟を調べるのか?」

「まあね。噂どおりなら、放っておけない。手伝ってくれるね?」

「もちろん」

 断るという選択肢はなかった。噂どおりなら。王国の敵になるものは排除する。それは、自分で決めたことだ。王宮に入ったときから、俺はこの国と共に生きることを決めた。

 俺が仕えるのは、ただ一人だ。国王ではない。王妃でもない。ただ一人に、命を捧げる。その人がこの国を支えるなら、俺は全力で補佐をする。

「で、今日はどこに泊まるんだ?」

「セイジの家に決まってる」

 いつの間にか決定事項になっていた。宿泊施設もあるのだから、選択肢は一つじゃない。俺の家はニヶ月振りだから掃除も必要だし、わざわざそれを選ぶことはないのに。

 それでも俺の家を選ぶ。スバルにとって、少しは落ち着く場所だということか。そういえば、俺が一緒のときは宿泊施設ではなく、俺の家に泊まっている。

「まずは、家に帰って掃除だな。それから食料を買い込むか。一週間、泊まるんだろ?」

「もちろん」

 スバルは爽やかに笑った。容姿が整っているから、笑うと好青年に見える。美形って得だ。

 俺と同じ答えをするなんて、意地が悪い。ずっと俺の家に泊まることは当然なのか。まあ、食費は払ってもらうけど。

 家に着き、空気を入れ替えた。風が通り抜ける。埃を払っただけで十分に綺麗になった。家を出る時に掃除をしているから、目立つ汚れはない。布団を干して、外に出た。

 日が落ちるまでは公園を散策し、ニヶ月経った季節の移り変わりを楽しんだ。王宮にも庭園はあって季節を感じることはできるが、最近は庭園に行く余裕がなかった。

 スバルは植物が好きで、表情は柔らかかった。それに釣られて、口元に笑みが浮かんだ。こんな風に、気を抜く時間も大切だ。いつも気を張っていないといけないから、力が抜けるときに抜いた方が良い。何かあった時のために、警戒だけはしていたが。

 その後商店街と露店を回りながら一週間分の食料を買い、夕食は久しぶりに俺が作った。

 干した布団は柔らかく、日光の匂いを感じた。久しぶりに休めた気がする。

 いつのまにか、寝てしまっていた。

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