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15 『王子』と側近

 セイヤたちと別れ、執務室へ向かうことにした。すぐに職務に戻れるように、いつでも家は片付けて出て来ていた。

 毎日通っていた廊下は、数日離れていただけで懐かしく感じた。

「セイジは会議に参加しなくて良かったのか?」

「僕は政策の発案者だけど、実行者じゃない。為政者じゃないしね」

 セイジは家族と俺の前でしか見せない顔で笑った。いつものセイジに戻っていた。

 街に出ていた時は、王宮にいる時とは違っていた。自然な表情が少なかった。穏やかな表情の中にも違和感があった。街に出たのは革命同盟のことを調べるためだったとはいえ、ずっと気を張っていたんじゃないか。俺が知らないところで、計画は進んでいたわけだし。

「会議に参加したかったら行って良いよ」

「お前が行かないのなら意味がない」

「……本当にお前は僕中心だね。その忠誠心は心地良いけど」

 苦笑したセイジに、袖を捲くって腕を見せた。

 そこには、俺の覚悟の印が刻まれている。

「今更だろ」

「つまり、僕の選択は間違っていなかったってことだ」

 セイジは腕を組んでニヤリと笑った。

 王宮に呼ばれたあの日から、俺はセイジの側近であることを定められた。

 親に売られ、施設で育ち、何も持たない俺を選んだセイジ。王宮に来るまで会ったこともなかったのに、彼は何処でどんな俺を見たのだろう。何が良いと思ったんだろう。

 それは聞けないままだった。

 知らなくても良い。セイジが俺を選んだときから、俺の運命はこれだと決めた。

「スバル、お疲れ様」

 セイジに名付けられたこの名前が、俺を必要としている証拠のように思えた。



 初めまして、僕の側近。

 側近、ですか?

 そう。これからお前は王宮に住んで、僕の側近になるんだ。

 ……俺が?

 お前が。急な話で悪いけどね。そうだ、何か欲しいものがあったら言ってよ。僕の我儘でここに来ることになったお詫びとして、一つだけ欲しいものをあげる。

 ……何でも良いんですか?

 僕があげられるものなら。

 では、名前をください。これから、ここで始めるための名前を。

 ……僕が決めていいの?

 貴方に決めて欲しいんです。今の名前はいらないから。

 ……そう。じゃあ、スバル。昴は「統べる」という意味があるからね。僕と一緒にこの国を守ろう。

セイジは「誠治」です。

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