13 土曜日・中
チップで管理する国が一番だと思うから、不満を持つ者を排除する。なんて自己満足な正義なんだろう。
チップで管理する国が、犯罪に対してどういう規制をしているか知っているのに。自分の行為が犯罪だと思っていないのか、罰を受けてでも自分の正義を貫きたいのか。
「あのさ、アンタは上手くいったと思ってるかもしれないけど、死亡者はいないから」
付き人は呆れたように首の後ろに手を掛けて言った。
死亡者はいない。口から涎を流して倒れていたけど、死んでいなかったのか。あの場で死亡確認すれば良かった。たとえそれが直視したくない光景でも。
セイジはわかっていたはずだ。チップの性能を管理しているのだし、警察署で確認したはずだ。死んでいないことを知っているから、これからどうすれば最良なのかを考えていた。
死亡者がいないことを知っていても、それでも気絶している人達を見て痛みを感じていた。
「そんなはずない!」
「チップで毒物を無効化したからな。毒性が強かったみたいだから副作用で気絶したけど、命に別状はない」
衛生士は気が抜けたように床に膝を着いた。糸が切れたように呆然としている。
チップが医療に特化しているのは周知の事実だ。毒物に対する耐性があることも知られている。それなのに毒物という手段を選んだのは、チップの耐性よりも強いと思われる新しい毒物だったからか。
チップで管理することが正しいと思っているのに、自分の行動はチップを裏切っている。そして、自分の正義が破られた。今はどんな気持ちなんだろう。
わかりたくないけど。
「皆、僕たちを置いて話を進めすぎだよ?」
「! 申し訳ございません!」
ユウト王子の指摘に、盟主は謝罪した。綺麗な九十度のお辞儀だった。
王子、相変わらずだ。この場でこの発言とは。セイジは王子に任せることにしたようで、一歩後ろに下がった。
王子の隣で国王と王妃は衛生士を見ていた。
「君がどう思って行動したのかは問題じゃない。毒物を人に使用したのが問題だ。死亡者がいなかったから、その場合の罰は」
「管理外区域への追放だ」
国王の声が重く響いた。
それは断罪だった。法律で定められた罪に対する罰だった。
この結果は、正義が理由で行ったことだとしても変わらない。
管理外区域への追放。それは数値が低い者の行く場所で、チップでの管理を望まない者が行く場所だ。チップでの管理が一番だと思っているのにその場所へ行くことは、彼女にとって厳しい罰になるはずだ。
「私はこの国のために!」
「不満があるのが自然なんだ。それを正そうとするのは『国のため』なんかじゃない」
王子の声には悲しみが含まれているように感じた。
『国のため』が理由の行動なんてない。それは全部、自分のための行動なんだ。




