【短文ミステリー】ひき逃げの証明に必要なものは?(推理編)【難易度:★★★】
しばらく止まってました。ゴメンナサイ・・・
夜の道。くたびれた感じで歩く一人の男。
紛れも無く、榊田刑事だ。
仕事に疲れて、ブラブラと歩き回る。明日は非番なので、久々の休日を楽しみにしていたのである。
そんな楽観的感情も、直後に見つけた轢殺体を見つけたことでブチ壊しになった。
被害者は飯田 智仁、15歳である。3ヵ月後に難関私立校高校入試を受ける予定だった。
衣装は私服・・・ということが辛うじて判断できる程度。それほどズタボロの状態だった。
現場は一方通行。よって、榊田もその進路に従って現場を捜査することにした。
まず、道路は大通りの途中を右折したところにある、細い道路であった。街灯はナシ。そのうえ、現場は月は雲に隠れ真っ暗だった。ただでさえ見通しが悪いところ・・・確かに事故を起こしてしまいそうな場所ではある。しかし、あんなヒドイ状態になるほどのスピードを出せるだろうか・・・
少し進行方向に沿って進むと、事故現場と思われる場所に着いた。
血だまり・・・あのいたいけな体にあれほど大量の血液が流れていたのか、と驚くほどの出血量である。
血痕から数メートル前方にブレーキ痕があった。・・・そうとうなスピードが出ていたのだろう。
車道と歩道の区別をつけるような印は全く無く、なるほど、事故も起きそうである(実際、事故が多発しているらしい)
。
現場での捜査を終えて署に帰ると、一人の男が事情聴取を受けているところだった。
取調室には、ちょっとした修羅場が展開されていた・・・。
「だからっ!俺は違うっ!!あっちから飛び出してきたっつっただろっ!!!」
「嘘を言うな!お前の呼気からは、アルコールが検出された。それこそ違法スレスレの濃度だったぞ!!」
「それが何だよ!?ちょっと酒飲んだ程度で犯人だって決め付けんのかっ!!!?」
「どうしたんですか」
修羅場に耐えられなくなった榊田が割って入る。
「ああ榊田・・・」
「被疑者に罵声を浴びせるなんてもってのほかですよ、警部」
「被疑者!?俺は無実だってんだろーがっ!!!」
被疑者が吼える。
「警部、聴取を続けてください。ただし、声を荒げないように」
「あ、分かった・・・あ、榊田、ヤツの名前は『国木田 信一郎』・・・42歳だ。」
「分かりました・・・では続けて」
こうして事情聴取は再開された。
「えーと・・・じゃあ、君の話を聞いてもらおうか」
「だから言ってんだろ!俺が車運転してたら、あのガキが飛び出してきたんだよ。すぐに慌ててブレーキをかけたけど、車が完全に止まる前に・・・」
「子供が飛び出してきた・・・?」と榊田。
「ああ、ヤツのガキはたしか、今年受験じゃなかったか?」
「すいません、ヤツとは?」
「ああ、コイツの同級生でな、『飯田 和也』でな・・・ヤツをいじめてたんだ」石頭警部が補則する。
「いじめてた?」
「ああ、不幸にも高校と大学で一緒になってな。まあ、井上が国木田にたかるためについていったようなものらしい」
「なるほど・・・それが動機になるのでしょうか?」
「ふざけんなっ!何が動機だよっ!!たしかにアイツのことは恨んでた・・・でも、わざわざソイツのガキを轢き殺したりはしねぇよ!!自殺だよ!アイツは!!」
「自殺?」
「ああ、被害者は難関私立高校に入試をする予定でな・・・相当厳しかったらしい」榊田の疑問に、また石頭警部が答えた。
「厳しいって、彼の両親がですか?」
「それだけじゃない、彼の学校の教師や塾の講師なども重圧をかけてたみたいで・・・実を言うとかなりギリギリだったそうだ」
「というと、受験の圧力に耐えられずに自殺・・・ということも考えられるわけですか」
「ああ、そういうことになる。とにかくだ、慎重に慎重を重ねて調査を・・・」
「その必要はありません。結論はもう出ました」石頭警部の言葉を遮って、榊田は断言した。
Q
榊田刑事はこれらのことから真実に気付いたようです。あなたはいかがでしょう?