【短文ミステリー】自殺か、それとも・・・(推理編)【難易度:★★】
第2話。
少し難易度がアップしました。
そのころ、榊田は自宅で寝ていた。
刑事にとって数少ない休日。
つかの間の休息。
榊田はそれを寝ることで過ごしていた。
別に深い理由は無い。
ただ単に、それ以外にすることが無かったからだ。
突然、携帯電話が鳴り響く。
石頭警部から――となると、用件は一つしかない。
榊田は、まだ寝て過ごす予定だった2時間を、悔やみながらも仕事に回すことになった。
榊田は自分の計画を変更させられるのが嫌いである。
現場にたどり着いた榊田。
閑静な住宅街にある、小さな一軒家。自宅からそこまで遠くはなかった。
「呼びましたか・・・」
不機嫌な様子を隠そうと努力もせずに言う榊田。
石頭警部は、そのことに一切気付かず、
「おお、来てくれたか!」
と言うだけだった。
「・・・で、どんな事件ですか?俺は今日、非番なんですが」
「ああ、そうか、お前は休日が無駄になるのが嫌いだったんだな」
スマンスマン、と言いつつも、全く反省してる様子が無い警部。
部屋には首吊り死体があった。
もう降ろされている。
榊田は、首に巻かれている何かに気付いた。
「これって・・・LANケーブルじゃ?」
「? らんけーぶる?」
「はい、パソコンでインターネットを利用するときに使う、LANケーブルです」
LANケーブルで首をくくったのか。
「目撃者は近所の人だ。最近姿を見せてないので、様子を見に行ったんだ。ホラ、あそこの窓から・・・カーテンが少し開いていたんだな。でも鍵がかかってて・・・中に入るのに大変だったよ。どうも死後3日、というところだな」
「・・・ちょっと調べてもいいですか」
「あ、現場をか?もちろん」
遺体があった部屋は、一切散らかっていなかった。
床など、それこそホコリ一つ落ちていない――いや、ホコリ程度は落ちていた。
ココは、死亡した人の寝室だったらしい。
中にはベッドだったり、デスクだったり、本棚―パソコンやビジネスの本がぎっしりと並んである―がある程度。あと、そのデスクの上にパソコンが――
「警部。このパソコンですが・・・」
「え?どれどれ・・・あっ!!」
パソコンの画面を見た警部は、おもわず声を上げた。
シゴトデツカレタ。
イキテイクジシンガナイ。
サヨウナラ。
画面にはこう書いてあった。
「警部、ところで部屋の監察は済んだのですか?」
「ああ、だが、指紋は誰のも何一つ見つからなかったようだ」
「警部!遺体の身元が分かりました!」
警部の部下が息せき切って飛び込んで来た。
「身元?」
「はい、遺体は『向田 真一』52歳。仕事場ではいわゆる追い出し部屋に入れられてたようです」
「追い出し部屋か・・・」
「いけませんね、こういう機会にブラック企業は徹底的に鎮圧せねば」
「お前は黙ってろ――で、その他には?」
「はい。この家には30年間住み続けてきたみたいです。追い出し部屋に異動させられたのは半年前。金銭に苦しんでおり、借金を抱えてたようです」
部下の報告を聞いた石頭警部は、顎に手を当て、こうつぶやいた。
「うーん・・・というと、借金が重荷になって自殺した・・・ということだろうか?というと――」
榊田が石頭警部の言葉を遮る。
「すいません警部、コレを見て自殺だと判断するのは早計かと」
意外そうな顔をする警部。
「何だと?中はいわゆる密室状態、遺書もある。どう見ても自殺じゃ・・・」
「しかし警部、家の鍵は持ち出せば外からかけることも出来ます。また、遺書もパソコンで書かれたもの、本人のものである保障はありません」
「・・・じゃあ、自殺じゃない証拠はあるのか!?」
思わず声を荒げる警部に対し、榊田は淡々と答えた。
「はい。俺の考えでは、これは他殺だと思います。たぶん借金がらみでしょう」
Q
榊田は、自殺にしては妙なところがあるのに気付いて、他殺だと思いました。一体ドコでしょうか?