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短文ミステリー ~榊田刑事の事件簿~  作者: 双子座流星群
第一話 誘拐現場の不自然な点
2/14

【短文ミステリー】誘拐現場の不自然な点(解決編)【難易度:★】

 (アンサー)


「・・・いったいなんでそう思うんだ!?」と驚く石頭。

「・・・よく考えてください。ところで、今何時ですか?」

「え!?えーと・・・午後2時ちょっと過ぎだな」

「はい。で、事件発生時刻は?」

「ああ、正午ちょうどだ」

「はい、それで、現場には我々以外誰も踏み込んでないんですよね?」

「それはまあ、確認した。被害者を連れ去る犯人が出て行った後は、誰も入ってない」

「はい。では、まとめてみましょう」

「え?まとめるのって・・・何をですか?」まだ困惑気味の上田。

「この事件の特徴をだよ・・・つまり、事件が発生してから二時間経っている、犯人が出て行ってから我々がココに来るまで誰も入っていない」

「まあ、そういうことになるな」

「では、石頭警部、そのカップを持ってください」


 言い忘れてしまったが、石頭は警部である。ナゼこんな人が警部に・・・「軽侮」の間違いでは?


 まあ、そんなことより・・・榊田が言うカップとは、長テーブルの上に置いてあった。


「あぁコレな・・・」と油断しきった感じでカップを持つ石頭。

 しかし・・・

「あっつっっっ!!!熱い!!!何だコレ、熱々じゃないか!!!」

 飛び上がり、喚く石頭。哀れにも熱々カップの餌食となった右手をブンブン振っている。

「ですよね?」と榊田。

「ですよねって・・・知ってたのかぁーーー!!!」

「何でこのカップが熱々だったのか、何でだと思います?」少しも悪びれる様子も無く尋ねる榊田。

「何でって・・・入っているコーヒーが熱々だったからだろ・・・」その様子に殺気を覚えながらも、辛うじて平然を作ろう石頭(すでに手遅れなことに気がついてないようだ)

「はい。この中に入ってるコーヒー、熱々なんですよ。変だと思いませんか?」

「へ、変・・・?」怪訝な表情になる石頭。何も分かってない様だ。

「あ、あぁ!!」一方の上田は気がついたようである。

「よく考えてください・・・この部屋には『事件発生から二時間は誰も入っていない』んですよね?」

「・・・おお、そうか!!!」

「ようやく分かりましたね・・・そうです、このコーヒーは普通に考えたら二時間前に淹れられたハズなんです。でも、二時間前にカップに淹れられたコーヒーなんて『とうの昔に冷める』ハズですよね?でも、これは冷めていない・・・どういうことか?つまりこれは『ごく最近に入れられたコーヒー』なんです」

「ごく最近?どういうことだ?」

「それが分からないんです。でも、この状況は明らかに『おかしい』。このことが分かるまで捜査本部の設置は待ったほうがいいかと」

 怪訝そうな顔をした石頭。やがて、非常に困っていることを隠しながら(ちっとも隠しきれてないことに気付いてないのか)こう言った。

「うん・・・そうだな・・・そうしよう・・・よし、そうしよう!本部設置は延期!被害者の身元を徹底的に洗えぇぇぇ!!!」

 唯一榊田に勝っている権力を行使して、こう叫んだ石頭。呆れを通り越して哀れである。




 被害者と犯人数名は、階下の部屋で見つかった。

 いや・・・被害者を「装った」人、と言うべきか。


 つまり、被害者は「共犯者(グル)」だったのである。



 犯人が被害者役を誘拐したように「装った」あと、宅急便のフリをした犯人が、段ボールに被害者役を入れ、すぐ下の階にあった犯人の一人の部屋に連れ込んだ。

 しかし、しばらくしたあと、被害者役が部屋を荒らすのを忘れたことに気付いたのだった。

 被害者役はベランダ沿いに部屋を移動した。つまり、ベランダを登ってきたということだが・・・

 被害者役は、自室を荒らした後、ウッカリくつろいでしまった。そう、コーヒーを淹れて・・・

 そのとき、窓から警察が建物に入っていくのが見えた。

 慌てた被害者役は、再びベランダ沿いに移動して、先ほどいた部屋に戻ってきた。

 しかし、ここもまたウッカリ「コーヒーをカップに淹れたまま」にしてしまったのであった。

 やはり、動機は金、であった。




 それにしても、なぜ犯罪を犯してまで金を欲するのだろう?

 何年か刑事をしてきた榊田は、今も尚彼らの思考が理解できないでいる。

【要約】

事件発生から2時間経過してるのにも関わらず、コーヒーがまだ温かいことが不自然だった。



とりあえず、1話目は解決。シリーズはまだまだ続きます。

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