【短文ミステリー】桜散るとき(推理編)【難易度:★】
毎度毎度お待たせして申し訳ございませんorz
・・・最近、この難易度の基準が分からなくなってしまいました(エ
4月に突入し、桜が咲き始めた。
しかし、刑事の仕事には夏に社員旅行だとか、年末整理で大忙しだとかはないのである。もしかすると、実際はあるかもしれない。少なくとも、榊田が神奈川県警に入って以降はそういったことはなかった。
とはいっても、季節感が皆無であるかというと、そういうわけでもないのだ。日本に四季がある以上、そこに住む人もそれに左右される。当然、神奈川県警の刑事や石頭警部も例外ではなく、一週間ほど前から続いてるスギ花粉の猛威に喘いでいる。
こんな状況下で外に出て仕事をするなど、彼らにとっては奴隷労働に等しいのではないかと榊田刑事――彼は花粉症ではない――は思った。全く、こちらのことも考えてほしい、他人のことを思いやる心のないやつだ、まあそんな心を持ってたらこんなことはしないだろうが・・・
被害者は井桁 佑介、27歳会社員。入社当初から期待の新人とされ、様々な業績を残しており出世コースを歩むのは間違いないとされてきた。その才能などから恨んでいた人も多いとされる。
「ひどいですね・・・心臓を貫通した後に体をメッタ刺しですよ」
鑑識を終えた上田はこう言った。榊田は鑑識のデータなど元に一人で――石頭刑事などは花粉症でほとんど使い物にならなくなっていた――調べていた。
死因は刺殺、即死と思われる。胴体には深い刺し傷がいくつもあるが、初めの心臓の一突きが致命傷となったらしい。防犯カメラの映像や目撃情報の中に有力なものは今のところ見つかっていない。凶器も未だ不明だが、鋭利な刃物である事は容易に想像がつく。死亡時刻は二日前の3時から4時ごろ・・・なお、金品などの盗難は確認されていない。これらのことから、物取りや衝動的な犯行ではなく計画的犯行と見て間違いないだろう。
とりあえず、被害者の会社で聞き取りをしたところ、予想通り彼を恨んでる人――いわゆる嫉妬や恨みで――は多かった。そのうちアリバイが確認できなかった人に話を聞いて回ることにした。
同僚、上司、同僚、と三人の家を訪ねて話を聞いた後、また別の同僚の話を聞くことにした。
彼の家までの道は、複雑かつ細い道が多く、歩いていくしかない。歩いてみて分かったのだが、ここら辺は桜が多いが、どうも元気がないような感じがした。最近花粉と共に暴れている強風のせいで枝が折れてしまったのかもしれない。桜は枝が折れたりすると、あっという間に弱ってしまうのだ。花びらがたくさん散っているのもその風のせいかもしれない。
同僚――岸田 雄一、31歳――の家でまず目立つのは、小さな庭にある大きな桜の木だ。これも風の影響を受けてか、花びらがすぐ下の綺麗な黒いミニバン――おそらくいくらか前のタイプ――に少々積もっているのがちらほらと見えた。
警察手帳を見た岸田は、かなり怯えているようだった。
「な・・・なんなんですか・・・?」
「おとといの3時ごろ、あなたの同僚である井桁さんが殺されました。話を聞きたいのですがよろしいでしょうか?」
「ち・・・違う!!俺は何もしていない!!たしかにあいつをよくは思っていなかったけどよぅ・・・でも、ここからあいつの家に行くには車で何十分もかかるんだぜ!!あんたたちもそこんところは調べてんだろ!?俺はここ何日も車に乗ってないんだし・・・とにかく俺じゃないんだ!!」
「なるほど・・・ところで、井桁さんが殺されたのを知ったのは今が初めてですか?」
「いえ・・・ニュースでやってて・・・」
「なるほど。それならもう少しマシな嘘を考える時間もあったはずなんですが」
Q
榊田はなぜ岸田が嘘をついてると分かったのでしょうか?