【短文ミステリー】白い確信(解決編)【難易度:★★】
A
石頭警部は少し驚いた様子で榊田刑事を見た。
「あいつがクロだって?アリバイはまだ調べてないが、不自然なところは見当たらなかったが?」
「クロかどうかは分かりません。グレーといったところでしょうか。しかし、完全にシロとはとても言えません。少なくとも何か隠してます」
「しかし・・・供述の真偽などを調べもせずにどうしてそう思ったんだい?」
「えっと、警部、彼に話を聞いたときの段階を教えてください」
「えっと、ちょっと待ってくれ・・・」と言いながら、コートの中から手帳を取り出し、ペラペラとめくり始めた。ちゃんと段取りを決めているのか、と榊田は思った。警部は妙にマメなところがある。
「ああ、これはまあ、最初から決めているところもあるが、まあ聞いたところを片っ端から記入してるんだ」警部は榊田の考えを見透かしたように言う。
「そうですか、で、段取りは?」
「ああ、まずガイシャが殺されたと伝え、話を伺おうとすると、早速反論。それに事件発生時のアドリブ、居酒屋の所在や同僚、ガイシャのこと、ガイシャから嫌がらせを受けていたこと・・・おっと、最後に公開捜査についても聞いたな。公開捜査については知らなかったと言っていたな」
「それで以上ですね?」
「そうだが・・・今ので以上なら何か異常はあるのか?」
「はい、明らかにおかしいところがあります」
「・・・今のは笑うところだぞ」
「え、あ・・・すいません、気がつきませんでした・・・」
「・・・もういい、で、何が変だって言うんだ?」
「はい、公開捜査について知らなかった。さらに、そもそも辻さんが殺されたこと自体を知らなかった」
「ああ、そのようだな」
「はい、にもかかわらず、なぜ『事件発生時前後のアリバイをしっかり言えた』のでしょうか?アリバイについても『2月17日のアリバイは?』と聞いたのです。普通なら17日全部のアリバイを言うか、事件発生時刻はいつか尋ねるでしょう。しかし、彼はどちらもせず、事件発生時刻のアリバイを言った。つまり、彼は『事件発生時刻を知っていた』ということになります」
「ん?しかし、事件の存在自体も知らなかったんだよな?」
「そうです。彼は事件のことも知らなかったようでした。少なくとも見た目は。しかし、事件発生時刻は知っている。これはおかしいです。犯人、とまではいいませんが、何か隠していることがあるのでしょう」
「うーん、そうなのか・・・よし、とりあえずそいつの同僚とやらの話を聞いてから、そのことを追求してからしょっぴくぞ。そいつらにも同じように質問し同じように答えたら、ほぼ間違いないだろうな」
一時はどうなるかと思われた事件も、ひとまず解決に向かいそうだ。しかし、道に残った大雪・・・謎は解けても、これが溶けきるのはいつになるのだろうか。
【要約】
焦ってしまったのかは分かりませんが、犯行時刻も分かってないはずなのに、その時間帯のアリバイを話したからでした。本当に知らないなら、そんなことはしないはずです。