表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

小さな贅沢

作者: 聖魔光闇

 今日の昼メシは、普段より少し豪勢にしてみようかな?

 妻には内緒だけど、昨日の帰りのパチンコで、かなり儲けをだしたから、いつもの寂しいコンビニ弁当からは、おさらばだ。

「いらっしゃいませ〜!」

 駅前の定食屋に入る。

 メニューを手にして、写真もないページをめくる。

『そうだなぁ。焼き魚定食にしようかな?』

 しばらく文字ばかりのメニューを眺めていたが、会社の休憩時間も無限にある訳ではないので、メニューを閉じて店員を呼ぶ。

「焼き魚定食一つ」

「はい。焼き魚定食一人前ですね? ご注文は、以上でよろしいでしょうか?」

 これ以上何を食べろというんだ。と思いつつも、無言で頷いた。

 定食が運ばれてくるまで、店内に置いてあった雑誌を、特に読む訳ではないがめくり続けた。

「お待たせしました。焼き魚定食になります」

 店員が、明るい声で俺の目の前に、これだけしっかりした魚で、こんな値段で儲けがあるのか。というくらい立派な定食を運んできた。

 店員がテーブルを離れると、俺は両手を合わせてから食べ始めた。

 塩焼きの魚は、味もしっかりしていて、コンビニ弁当等とは比較出来ない程美味い。

 米もホクホクで、熱いけれども、魚の塩加減で米を止める事が出来ない。

 せっかく添えてある漬物を、一口食べてみると、これはこれで、あっさりしていて食べ易い。特に米と合わせなくても、漬物だけで食べれるというのは、美味い証拠なのだろう。

 普段の習慣で、味噌汁を最後に食べる。

 ほんのり優しい味噌の香りが、口の中でホワッと広がって消える。具材と味噌が絡み合い、俺の口の中で、ウエディングロードを歩いているかのような錯覚に陥った。

「すいません! お勘定!」

 そう叫んで席を立つと、料理を作っていたと思われる店主らしき男が、レジカウンターに出てきた。

 俺は、財布から560円を取り出すと、気持ちも添えて男に金を払って店を出た。


 いつもと変わらない、駅前の街の景色が、少し違って見えたような気がした。

『たまには、こういうのもいいな』

 昼メシ後に、会社へ向かうなんて、何年ぶりだろう……。




ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  おそらくほとんどの人が「ああ、うんうん」と頷ける話でしょう。  あっさりとした描写が良い感じです。私なんかはついついくどいほど書いてしまうことがあって……勉強になります。  お題は両方か…
[一言] 味の感想が、リアルに表現されていて、口の中にその味が広がるようでした^^ 凄いと思います。 最後の後味も良く、なんだかこちらも幸せになれました。 素敵な小説でした、ありがとうございました!…
2011/07/13 15:33 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ