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第1話 スラム村で初の飯テロ

目が覚めると、そこはボロボロの藁小屋だった。

天井から雨漏りがポタポタ落ち、床は土のまま。

埃っぽい空気が肺に染みて、思わず咳き込んだ。

「……ここ、どこだ?」

俺は自分の手を見た。

小さくて白い、10歳くらいの少年の手。

指先が細く、爪も綺麗に整えられている。

……あぁ、そうか。

俺は佐藤健太、30歳のブラック企業サラリーマンだった。

トラックに轢かれて死んで、神様からスキルをもらって転生したんだ。

名前はアレックス・フォン・ローレル。

辺境の貧乏男爵家の次男。

領地は森と荒野ばかりで、税収なんてほぼゼロ。

領民はみんなスラム暮らし。父は去年病死し、兄貴は王都で遊び呆けているらしい。

「ふっ……これが俺の新生活か。

もう二度と残業地獄には戻らない。

ここは俺が最強の料理領主になって、スローライフする場所だ」

そう決意した瞬間、小屋の扉がガタガタと開いた。

「若様……お目覚めですか……?」

入ってきたのは瘦せこけた村人たち。

大人も子供も、頰がこけ、服はボロボロ。

目が虚ろで、腹が鳴っているのが丸わかりだった。

「今日も……何も食べられません……」

「若様も、お腹空いてるでしょう……ごめんなさい……」

村人たちは俺の前に跪いて、頭を下げた。

10歳の俺(外見)に向かって、こんなに必死に謝るなんて……。

胸が締め付けられた。

「みんな、顔を上げて」

俺はゆっくり立ち上がった。

まだ体が小さくて動きにくいけど、頭は完全に30歳のまま。

現代日本の知識と、あの神様からもらったチートスキルが全部残っている。

「俺が、ご飯を作ってやる」

村人たちが一瞬、ポカンとした顔をした。

「え……若様が……?」

俺は右手をかざした。

心の中でスキル名を唱える。

【無限食材創造】

瞬間、目の前の空間が淡く光った。

次々と食材が現れる。

白米が山盛り。

新鮮な鶏もも肉。

玉ねぎ、卵、醤油、みりん、砂糖……全部完璧に地球の味そのまま。

さらに魔法強化版として「マナ鶏肉(HP微回復効果付き)」と「黄金卵(味が3倍美味しくなる)」も追加生成。

「う、うわぁ……!」

「若様、手から……食べ物が出てきた……!」

村人たちが目を丸くして後ずさる。

俺はニヤリと笑った。

「驚くのはまだ早いよ。これからもっと美味いのを作るから」

小屋の外に簡易の竈と鍋を用意させた。

村人たちが薪を運んでくる間に、俺は手際よく調理を始めた。

まず、鶏肉を一口大に切り、醤油・みりん・砂糖で下味をつける。

黄金卵を溶いておく。

鍋にご飯を炊き始め——もちろん無限生成だから燃料も米も無限——。

香ばしい醤油の匂いが、森の空気を一瞬で変えた。

村人たちの鼻がピクピク動き、腹の鳴る音が一斉に大きくなった。

「く、くっ……この匂い……何だ……?」

「お腹……痛いほど空いてくる……」

俺は鶏肉を炒め、玉ねぎを加え、溶き卵を流し入れる。

とろ〜りと半熟に仕上げた瞬間——

完成。

親子丼。

黄金色の卵がとろとろに絡み、甘辛いタレが染みた鶏肉がご飯の上に輝いている。

湯気が立ち上り、醤油と卵の甘い香りが村中に広がっていく。

「さあ、みんな食べろ」

俺が木の器に盛って配ると、村人たちは震える手で受け取った。

最初に食べたのは、10歳くらいの女の子。

一口目を口に運んだ瞬間——

「んっ……!? う、うまい……!!」

目がキラキラと輝き、涙がポロポロこぼれた。

「こんなに……温かくて、甘くて、優しい味……

お母さんが生きてた頃以来だよ……!」

次々と村人たちが食べ始める。

「うわぁ……肉がこんなに柔らかい……!」

「卵がとろとろで、ご飯に絡まって……止まらない!」

「若様……これは魔法ですか……? 神様の恵みですか……!?」

みんなが泣きながら食べている。

瘦せていた頰に少しずつ血色が戻っていく。

腹が満たされていくのが、はっきりわかった。

俺は自分の分も作って一口食べた。

……やっぱり最高だ。

30年間ブラック企業で生きてきた俺が、初めて心から「美味い」と思える味。

「若様……ありがとうございます……」

「これで……生きていけます……」

村人たちが次々と頭を下げる。

その瞳には、もう絶望じゃなくて希望が宿っていた。

俺は静かに微笑んだ。

「これが始まりだ。

今日からこの領地は、俺の料理で変える。

みんな、もっと美味いものを毎日食べさせてやるからな」

その瞬間、村のどこかから小さな拍手が起こり、すぐに大きな拍手と歓声に変わった。

「若様万歳!」

「アレックス様、最高です!」

俺は心の中で呟いた。

(よし、初日の飯テロ大成功。

これで領民の忠誠心はMAXだ。

次は領地改革と、女の子たちとの出会い……楽しみだぜ)

外では、もう夕陽が沈み始めていた。

スラムの村に、初めて本物の笑顔が溢れていた。

(第2話 領地改革スタート! 魔法の田んぼ)

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