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父の遺した禁断の力に触れて、神の掟に縛られた世界で未知の冒険へと踏み出す  作者: ちぃたろう


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第34話 創造の階



 天空の試練を越えた瞬間、足元の橋が光に包まれた。

 空気が震え、視界が歪む。

 アインたちは、まるで時間そのものを遡るように光の渦へと飲み込まれていった。


 ――気づけば、そこは“何もない世界”だった。


 空も大地もなく、ただ光の粒子がゆらゆらと漂っている。

 温度も音もなく、息をする感覚さえ曖昧。

 しかし不思議と恐怖はなく、懐かしい安らぎのようなものが胸を包んだ。


「ここが……“創造の階”か」

 アインがつぶやく。

 足元の光がゆっくりと形を取り始める。

 白い大地、青い空、そして風。――世界が、彼らの存在を受けて創られていく。


「まるで、私たちの意識が世界を形にしているみたい」

 ルゥが手を広げると、その指先から花が咲いた。

 淡い桃色の花弁が風に舞い、やがて光へと戻っていく。


「そうだ。ここは“思念が現実になる階層”――創造の源だ」

 セリウムが静かに言う。

 彼女の瞳が少し震えている。


「ここには、私が最初に生まれた記憶が眠っている。

 そして……神々が犯した最初の罪も」


 アインはその横顔を見つめた。

 普段は冷静な彼女の表情が、今はどこか脆く見えた。


 突如、地面が震えた。

 光の粒子が逆流し、空が暗転する。

 まるで世界が“記憶”を再生するように、古代の光景が浮かび上がる。


 ――無数の神々が、空の上に集っていた。

 その中央に立つのは、黄金の王座に座る存在。

 セリウムと同じ白銀の翼を持ち、しかしその目は冷たく無慈悲だった。


「……あれが、創造神リオス

 セリウムの声が震える。

「私を創った存在であり……私が堕天するきっかけとなった神」


 リオスが両手を広げ、光を放つ。

『すべての種族は我が設計のもとに進化する。

 己で進化を選ぶなど、秩序への反逆である』


 その言葉に、アインは拳を握った。

「……つまり、“進化を選べない世界”を創ったのは――」


「そう。彼だ」

 セリウムは静かにうなずく。

「私はかつて、リオスの命令で“進化を望む者”を抹消してきた。

 それが正義だと、信じていた。

 でも――ある日、気づいてしまったの。

 進化を止めることこそが、世界を滅ぼす行為だって」


 光景が変わる。

 若き日のセリウムが映る。

 彼女は翼を閉じ、人間の子どもを庇っている。

 背後では神々が槍を構え、命を狙う。


『セリウム、命令に背くのか!』

「この子たちに罪はない!」

『神に逆らうとは――堕ちたな』


 光が弾け、セリウムが天から落ちていく。

 翼が焼かれ、羽根が灰になって散る。


 アインの喉が震えた。

「……そんなことが、あったのか」


 セリウムは目を閉じた。

「私は、誰かを救おうとして……誰も救えなかった。

 だから、今度こそ――」


 彼女の言葉を遮るように、空が割れた。

 黄金の王座から、リオスの影が現れる。

 その声は、雷鳴のように響いた。


『再びこの地に降り立つとは、堕天の徒よ。

 貴様の存在こそ、秩序への汚点』


 アインが前に出る。

「神だろうと、誰だろうと。

 進化を奪う存在は、俺たちが止める」


 リオスの瞳が冷たく光る。

『人間が神に抗うか。滑稽だ』


 光が爆ぜ、創造の大地が崩れ始める。

 セリウムが魔槍を構え、ルゥが跳躍する。


「アイン! 一気に決めよう!」

「分かった!」


 三人の光が交わり、白と黒の渦が王座に突き進む。

 だが、リオスは微笑んだ。


『まだ早い――汝らは“真なる創造”を知らぬ』


 その瞬間、光が反転した。

 アインたちは眩い閃光に包まれ、再び別々の空間へと引き裂かれた。


 アインは、暗闇の中に立っていた。

 光も音もない。

 ただ、自分の鼓動だけが響く。


《アイン》

 聞こえたのは――リオスの声ではなかった。

 優しい、どこか懐かしい声。


《お前は、何のために進化を望む?》


 アインは静かに答えた。

「誰かを救うために。自分のためじゃない」


《ならば、創れ》

「……創る?」


《この虚無に、未来を》


 アインが手を広げると、指先から光が溢れた。

 その光は草となり、大地となり、空へと広がる。

 気づけば、ルゥとセリウムの姿も現れていた。

 二人の笑顔が、世界を照らす。


 リオスの声が再び響く。

『――それが、汝の“創造”か。

 弱く、儚く、だが……確かに美しい』


 神の影が静かに消え、世界に静寂が戻る。


 アインは息を吐き、空を見上げた。

 雲の向こうに、新たな階層――“虚無の塔”が見えている。


「次が最後の試練かもしれないな」

 セリウムが微笑む。

「そうだね。でも、今度は恐くない」

 ルゥが明るく言う。


 アインは二人を見て、頷いた。

「俺たちは、創り出せる。

 未来も、世界も――自分たちの意志で」


 風が吹き抜け、創造の大地に新しい生命が芽生えた。

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