文化祭2:木下夕子
・2年A組 模擬店 お化け屋敷にて
私は学校の廊下を歩きながらなんだか視線を感じて
ニヤニヤしちゃう。
文化祭で着てる和風喫茶の制服が似合いすぎてるのか、周りの子たちがチラチラこっちを見てくるのよね。
夕子「みーんなが夕子を見てるー♡♡」
隣を歩くまいがいつもの優しい笑顔で頷いてくれる。
舞「当たり前だよ〜、夕子ちゃんかわいいからね〜〜」
美百合「自意識過剰なんじゃないの?てかトンチンカンな頭してるからじゃない?」
でも後ろから美百合の冷たい声が飛んできて、廊下の
喧騒の中でもはっきりと耳に刺さった。
夕子「はぁー!?!?どこがよ!!!」
全くゆりったら、しょーがないわね。
ぷりぷりしちゃってカルシウムが足りてないんじゃないの?
ま、きっと私が注目の的だから嫉妬してるのよね。
ラッキーなことに私たちの休憩時間は12時からで今から他のクラスを見に行けるのはいいけど直ぐにクラスに戻らなきゃいけないの。
少ない時間でも全力で文化祭を楽しまないとね!
夕子「今日は文化祭だから許してあげる」
美百合「てかあんたその服汚さないでよ?模擬店で
食べ歩きして汚したら自分でクリーニング代出すんだからね。そんなお金ないでしょ」
夕子「大丈夫大丈夫!!汚さないって!!」
ゆりはため息をつきながら私の胸元を見るのでさすがに気をつけないとまずいかもと焦った。
和風喫茶の制服はクラスのみんなでレンタルしたもので、委員長が「汚した本人がクリーニングして返すように」って口酸っぱく言ってたんだよね。
夕子「ハンカチあてて食べるし汚さないようにするわよ!」
美百合「どこからその自信がくるの?ていうかどこの
あんたまずどこの模擬店行きたいのよ」
夕子「ふふ♡♡そりゃもちろん志保様のクラスよ!!」
美百合「は?」
夕子「あとは姫奈先輩とルコちゃん先輩のところとー、ベビー___」
舞「夕子ちゃん〜ベビ〜カステラあったよ〜」
私とゆりが話してる間に、まいが人混みをぬって
買ってきてくれたのは絶対食べたかったベビーカステラ。
紙袋から漂う甘い匂いに思わず飛びついちゃう。
昔からお祭りに行くと必ず買うもので、嬉しくてまいにぎゅーっと抱きついた。
まいからもふわっと甘いベビーカステラの匂いがして
つい頬擦りした。
夕子「まいだいすき!!ありがとう!!」
舞「いいんだよ〜」
まいはいつも控えめで優しくてほんとに気が利くいい子なの。
私は何となく大好きな幼馴染をぎゅうぎゅう抱きしめ
直した。
夕子「そうだ!まい、チョコバナナも食べない?」
舞「……お店すごい混んでたから買えないかもね〜」
夕子「えぇ!?こういうお祭りごとにはチョコバナナも必須なのに___」
美百合「……ねぇ、デカ……じゃなくて梓先輩のクラス
行くんじゃないの?早くしないと混んで入れないとかなるよ」
ゆりが急に私の肩を掴んで志保様のクラスの方へ促してくるけど珍しく乗り気ね?
美百合「あっちの階段から抜けたらすぐよ。休憩時間もそんなないんだから」
ゆりが急に私の肩を掴んで志保様のクラスへ促すけど
確かにその通りかも。
志保様のクラスに並んでる間に休憩時間が終わっちゃうなんて絶対嫌だもん!
私は急いで二人の手を握って2年生のフロアに向かって
歩き出した。
舞「お前〜……」
美百合「何よ」
舞「妬いたからって男女で夕子ちゃんを釣るなよ〜」
美百合「はあ?何が?変態思考でチョコバナナ食べさせないあんたに言われたくないわよ」
舞「クソ女〜」
夕子「もう!!喧嘩しない!!」
後ろでブツブツ言い合ってる二人を注意しながら、
早足で階段を上がると2年生のフロアに着いた。
志保様のクラスが何をするのか当日までサプライズに
したくて前情報は一切入れてない。
食べ物系かな?
それとも真面目な展示かな?
色々想像しながら、2年A組の教室が見えてき、……た。
夕子「え?」
舞「……夕子ちゃん大丈夫〜?」
美百合「これはまた本格的なお化け屋敷ね」
黒塗りのベニヤ板に赤い文字でデカデカと書かれた
『お化け屋敷』の文字。
廊下にまで不気味なBGMが漏れてきて思わずひっくり
返りそうになってしまった。
お、おおおおおお、オバケ、お化け屋敷!?
聞いてない聞いてない!!!!
美百合「へー、面白そう。早く入りましょ」
夕子「いや!……ちょっと、それは、その」
舞「夕子ちゃん無理しなくていいよ〜帰ろうよ〜」
美百合「え、もしかしてお化け屋敷苦手とか?」
夕子「苦手なわけキャー!!!!イヤー!!!!」
後ろから、ぴたっと冷たい手が首筋に触れてきて全力で叫ぶ。
こんなことするのは誰!?
ぶってやると勢いよく振り返れば、
一子「あっ……ご、ごめんね?そんなに驚くとは……」
夕子「い、い、いちい先輩!?……なっなっなっ、
なんで、なんで!!」
舞「何でそんな格好で可愛いんですか〜って夕子ちゃんは言いたいんだよね〜」
トイレの花子さんみたいな黄色い帽子に赤いスカート、白ブラウスという人を選ぶ衣装なのに完璧に可愛く着こなしてて……。
く、悔しい〜!でも可愛い〜!!
ついいちい先輩の肩をゆさゆさ揺らしてしまうけど、
そういえばこの人志保様と同じクラスだったよね?
美百合「お化け屋敷本格的ですね」
一子「でしょう?変に怖いって噂が回っちゃって、
今誰も並んでないの」
夕子「へ、へ、へー!!!そうなんですね!!!
あの、し、志保様は……」
一子「……志保ちゃん?」
私の言葉に一瞬、いちい先輩の顔が曇ったような
気がした。
一子「志保ちゃんに会いに来たの?」
夕子「はい!!志保様と文化祭でデートしようと!!」
美百合「はぁ?そんな約束してないでしょ?バカなの?」
一子「……そうなんだ。志保ちゃんなら___」
夕子「へ?」
トン、と肩を押されて気づいたら三人まとめてお化け
屋敷の入口のすぐ前。
一子「中で脅かし役だよ。会えるんじゃないかな?
3名様、地獄のおばけコースをお楽しみください」
夕子「……え!?」
その言葉を合図に入口から伸びてきた手に手首をガシッと掴まれて、悲鳴を上げる間もなく真っ暗な教室の中へ引きずり込まれていった。




