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4/28(月) 木下夕子の見た日常

・1年A組にて

英語の小テストを受ける海棠、木下、楠木のかきく組




夕子「舞、何見てんの?」


舞「単語帳〜」


夕子「何しにそんなの見てんのよ!見るならファッション誌とかさ?こうイケメン揃いの___」


舞「でも次の英語小テストだよ〜?」



…………え。


やだ聞き間違い??


小テスト?英語の?


し、知らない!!そんなの聞いてないわよ!?



夕子「ま、ま、舞ちゃーん?どこが出るのかなー?」


舞「えとね〜、まず10ページある中から8単語と〜」


夕子「なら上から5個だけでも今から覚えたら1点は取れるよね?いや、2点……」


美百合「それが外れたら0点じゃん」



バカみたいと前の席のゆりが振り返る。


いつもなら言い返すけどそんな場合じゃない。


私って超超スペシャルに可愛いんだけど神様はその代わりにちょっとだけ頭の出来を悪くしたのよね。



夕子「___ねぇゆりさ、」


美百合「やだ」


夕子「まだ何も言ってないじゃん!!! 」



失礼なゆり!!


人の話は最後まで聞くものだって習ってこなかったの!?



美百合「どうせ後ろから答案用紙覗かせてとかでしょ?あんたみたいな容量悪い子に見せたらバレて私まで怒られるじゃん。カンニングの片棒担がせないでよ」



ゆりはため息ついてるけど……。



夕子「あんただってスマホばっか見て何にも勉強してないくせによく言えるわね!!いい!?あんたも赤点だったら再テストなんだからね!!」


美百合「夕子みたいなバカと一緒にしないでよ」


夕子「ば、ば、バカ!?バカって言った!?最低最低!!酷い!!」



わっと舞に抱きつくと同時に先生が教室に入ってきた。


もしゆりのアンポンタンが再テストで同じ教室にいたら笑ってやるんだから!!




______


_______________




…………。


ウソ、何これ?


本当に英語なの?


それに単語のテストだけかと思ったのに何で日本語訳とかあるの?


大したことないと思って始まった小テストの用紙をひっくり返したらちゃんとテストで目を疑う。


だ、大丈夫よ、高校入学してすぐの小テストなんて敢えて簡単に作ってるはずだもん。



1.Spices 【have long played】 an important part in cooking all over the world.



とにかくカッコ内を答えればいいのよね。


や、やだー♡


ハブにロングプレイだなんて、……ふふふ、破廉恥ね。


これは2番目のお兄ちゃんのスマホ動画の履歴見てるみたいなそんな感じの内容よね?


ロングプレイなんかそれしかないわよ、先生ったら超真面目そうな公務員なのにこんな問題作っちゃうなんて……。



夕子「ふふ、ふふ……」


「木下さん、どうかしましたか?」


夕子「なんでもないでーす!」



先生に怪訝な顔されちゃったけど誤魔化しちゃうもんね。


私だって本当はhaveが〝持つ〟って意味くらいわかるわ。


でもついそれっぽいなって思う程こういうのって面白くって……。



夕子「ふふ……」



ダメダメ、ちゃんと解かないとね。


さ、気を取り直して次の問題いこ。



2.Bob always 【hides】 his feeling.



うーん、ボブね……。


私も初めて高校に入って髪をボブにしたけど……。


ふいに目の前のゆりの髪型を見たらムカムカしてきちゃった。


ベリーショートなんてレベルじゃないくらいに切っちゃって……でもそれも私のせいだと思うとやっぱりとても悲しい。



___思い起こせば桜舞う入学式。



ピロティの下に張り出されたクラス一覧を見て、舞と一緒のクラスで本当に嬉しくて抱きしめあって喜びを噛み締めてたっけ……。


体育館で行われる入学式でいざ出席番号順に並んで座ったら右隣にいたのがゆりだったのよね。


あまりにも綺麗な顔立ちで、大きな目に小さな鼻、ふっくら桜色の唇は絶対にDiorのマキシマイザーを塗ってると確信したわ。


それに腰を通り越しておしりまであるシャンプーのCMみたいな黒髪はツヤツヤサラサラで……なのに恐ろしいことにガムがべっとりついていた。



夕子『ねぇ、ガムついてるよ?耳の横の……』


美百合『あ?あー、朝噛んでぺってやったからかな』


夕子『ぺ?電車とかで変なおじさんにつけられたとかじゃないの?』


美百合『私歩きだし』


舞『夕子ちゃん〜し〜っ、静かに〜』



左隣に座る舞に制服の袖を引っ張られて前を向いたけど、隣のゆりは髪についたガムを全く気にしてなかった。


でも私は気になって仕方がなくて………。



夕子『ね、ねぇ、式が終わったらそこだけ切りなよ。聞いてる?早く切った方がいいよ?私がやってあげてもいいわよ?ねぇ、ねぇ』


美百合『うるさいな』



ゆりはそう言って私を睨むと、



美百合『すみません、私体調悪いんで退出させていただきます』



堂々と手を挙げて立ち上がるとサッサと式の途中で退場して、まさかのそのまま家に帰ってしまった。


そんなことを知らない私は教室に戻っても居ないゆりに余計なことをしちゃったのかなと激しく落ち込んだのよね。


明日学校に来たらあの綺麗な子とお友達になろう、うるさくしてごめんねって声を掛けるんだって次の日を楽しみにしていたのにゆりときたら……。



美百合『……おはよ、ねぇあんたこれで満足?』



次の日、なんとゆりは女子バレーボール選手くらいのベリーショートになって私の前に現れたの。


私が切って欲しかったのは全部じゃなくて、でも私のせいでそこまで短く切っちゃったんだと思ったらいても立ってもいられず泣けてきちゃって。



美百合『は?何で泣いてんの……』


夕子『ごめんね!そ、そんなつもりじゃなかったの!もっと上手く説明すれば良かった!!ごめんね、あの綺麗な髪をそんな……わ、私も切るから!!』



急いで痴漢撲滅用に忍ばせてたハサミを鞄から取りだしてせめてもの罪滅ぼしにゆりの目の前でロングだった自分の髪をザクザク切り落としたわ。


大きな目をこれでもかと見開いたゆりにもう一度ごめんねって言おうとした瞬間、



舞『夕子ちゃんっ___!?このクソ女……!!』



誤解してブチギレた舞がゆりを突き飛ばしてそれはもうクラスで大事になっちゃって……。


後日親まで呼び出されて死ぬほど怒られちゃったけど、まぁ、今はそれも懐かしい話ね。


美容師をしている3番目のお兄ちゃんにその日のうちに整えて貰って、結局私は可愛いからボブでも何でも似合うことを証明したのよね。


あの事件がきっかけで私たちは毎日話すようになったわけで___



「はい、時間ですね。皆さん後ろから回答用紙を裏返して前に回してきてくださーい!さ、手を止めてシャープペンは置いてねー」


夕子「………えっ!?!?」



先生の声で慌てて名前だけ確認したけど、まだ2問しか書けてない……。


ま、まぁこれがどっちも当たってるかもしれないもんね、大丈夫よ大丈夫!!


元々2点取るだけの予定だったわけだし、絶対大丈夫なんだから!!


そう信じて後ろの席の舞から回ってきた回答用紙の上に自分のものを裏返して前の席のゆりに渡した。


ところがゆりはわざわざペランと用紙を捲って私の回答を見ると、



美百合「ちょ、あんたこれ大丈夫なの?どっちも違うし0点だよ」



呆れたような目で私を見るのでムカついてしょうがない。


だって、だって……!!



夕子「あ、あ、あんたのせいよー!!あんたがベリーショートだから2問しか解けなかったんだからねー!!!」



雄叫びを上げた私の声が教室中に響いて先生に叱られた。









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