10/14(火) 榊原姫奈が見た日常
・文化祭準備 駐輪場にて
姫奈「おー……」
薫子「……」
めちゃめちゃ文化祭シーズンって感じ。
クラスの子に頼まれた買い出しが終わって学校に戻ると校門には、
〝山王女学園高等部 文化祭〟
と大きな看板が飾られていた。
校門の看板は毎年生徒会が担当しているけど今年は
めっちゃ派手だなー。
高校最後の文化祭に物思いにふけることもないけど、
何となく寂しい感じはするよね。
薫子「……」
姫奈「んー?あーね?もう来週文化祭だし、どこも
看板作ってんね」
アタシとルコもペンキの買い出しの帰りで、クラスの
模擬店用の看板を作らなきゃいけないんだよね。
肉巻きおにぎりとフランクフルトのイラストは絵の得意なルコが描いてくれるから助かっちゃうな。
クラスでは文化祭を全力で楽しみたい子達が張り切って肉巻きおにぎりを作ってくれるし、私たちは看板を
作る以外当日まで特に何かをする出番もなさそうで
ラッキー。
ま、正直言うとクラスにずーっといるのもしんどくて、今も率先して買い出しにルコと抜け出してきたん
だけど正解だったね。
姫奈「ねールコ、当日は夕子たちの和風喫茶行かない?」
薫子「……」
姫奈「そうそう、うちらシフト被せたし休憩時間も
同じじゃん?それにしょーみ……」
薫子「……」
姫奈「うん、ウチら2人が販売から抜けたくらいで何も
問題ないんだよね」
文化祭当日、ちょこっとだけ働いてしまえばアタシと
ルコの残りの時間は全部自由時間みたいなもの。
本当は文化祭ごと抜け出して、学校近くのスタバにで
休んでよっかって話してたんだけど、せっかくだから
可愛い後輩の教室も周らないとね。
姫奈「てか___」
夕子「ちょっとー!!!!!それじゃピンクじゃなくて鮭色じゃない!!!」
袋を手に校舎までの道のりをゆっくり歩いていると、
相変わらず元気いっぱいな夕子の声がどこからが聞こえてきた。
姫奈「駐輪場からかー?」
方向転換すれば夕子は右手に筆と左手にペンキの缶を
ぶら下げて、体操服のジャージの裾を捲って裸足で
美百合を怒鳴りつけていた。
美百合「はあ?あんたがサーモンピンクって言うから
この色にしたのよ?」
夕子「ふ、ふざけないでよー!!これのどこがサーモンピンクよ!焼き鮭じゃないんだから!!」
美百合「てか、大体和風喫茶なんて赤とか緑が相場
でしょ?何でこんなメイドカフェみたいなピンク塗らなきゃなんないのよ」
舞「うるせぇな〜夕子ちゃんがピンクがいいって
言ってるんだから黙って塗れよ〜」
美百合「はぁ!?クラス委員には赤って言われてるのよ!?妥協してサーモンピンクにしてるんでしょうが!!てかあんたも塗りなさいよ!!」
実にくだらない言い争いだけど、仲が良いから
ここまで言い合えるんだろうなー……。
ただせっかくの楽しい文化祭直前にガチ喧嘩に発展したら困るからね。
おせっかいかもしれないけど、校舎に入る前に仲裁に
入ることにした。
姫奈「よーっす、こらこら喧嘩しないの」
夕子「ひ、姫奈先輩ー!!」
アタシとルコが覗きに行くと直ぐに夕子が飛びついてこようとした。
美百合「ちょ、バカ夕子ストップ!!今先輩に抱きつくのは絶対だめ!!」
美百合は慌てて夕子の体操服の襟を引っ張るけど、
よく見たら3人の体操服はペンキまみれ。
もし抱きつかれたらアタシもルコもカラフルになってたなってつい笑っちゃった。
姫奈「ぎゅーはまた今度ね。お、看板可愛いじゃん」
〝和風喫茶 1A〟と書かれた看板は焼き鮭色ならぬ
サーモンピンクに塗られていて、あんみつや団子が
可愛らしく描かれていた。
姫奈「美味しそうじゃん!ルコと覗きに行くから和風
喫茶楽しみにしてるよ」
薫子「……」
姫奈「あーね?メニューにあんみつ以外もあるの?
だって」
舞「ありますよ〜あんみつに〜わらび餅に〜」
夕子「和菓子と抹茶セットとか!色々あるんで先輩たち絶対来てくださいね!夕子超超超かわいい衣装も着てるんで♡」
今から文化祭が楽しみなのか夕子はずーっとニコニコ
していて、自分とそんな時があったのを思い出す。
そうやって楽しめる内に全力で楽しんでおいた方が
いいねと小さく頷いた。
姫奈「ウチらは午前に肉巻きおにぎりとか売るから、
アンタらも来てね!サービスしちゃう!」
薫子「……」
姫奈「ルコの言う通り、奢っちゃうよ!!」
その一言で3人は顔を見合わせると嬉しそうに絶対行きますと返事してくれた。
喧嘩も収まったみたいだし、可愛い後輩の笑顔を見る
ためにアタシたちも文化祭がんばろう。
色んな思いを抱えているけど、卒業までにアタシの
大好きな子達と過ごす瞬間を大切にしたいな。
またね、と後輩たちに手を振りアタシとルコは教室へと歩き出した。




