10/10(金) 檪一子が見た日常
・志保と一子以外誰もいない、
朝早くの2年C組にて
……。
どうしてあんな言い方しちゃったんだろう。
志保ちゃんが部活に先に行ったくらいで、あんなに怒ることなんてなかったよね。
でも、どうしても寂しくて……。
前までは必ず私が掃除当番でも終わるまで待っててくれたし、何なら私がいないと探しに来るくらいだったのに今は旧音楽室を飛び出した私を追いかけて来ることもない。
モヤモヤした気持ちが消えなくて泣きたくなってしまった。
志保ちゃんの気持ちが全然分からなくて、私は毎日
ため息ばかり。
廊下をとぼとぼと歩きながら何となく自分の教室まで
戻ってきてしまった。
ねぇ、志保ちゃん。
どうして私と距離を置くの?
最近は私からどんどん離れていっちゃう気がして、
でもその理由もわからなくて。
全部はぐらかされちゃうし、何も答えはかえってこない。
もしかしたら少し時間を置いて追いかけてきてくれる
かもという期待は虚しく、私は1人で家に帰った。
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昨日からずっと考えてようやく出た結論はいつも通りでいることだった。
前みたいに2人だけで仲良くいられるよう努力するしか
ないと思って、私はいつもより1時間も早い5時に起きてお弁当を作ったの。
卵焼きを巻くのはいつもより丁寧にふわっと仕上げたし、志保ちゃんは甘めの味が好きだから砂糖をちょっと多めにいれた。
唐揚げは昨夜のうちに下味をつけておいたものをカラッとあげて、油が染みないようキッチンペーパーで拭き取ったしタコさんウインナーもたくさんいれた。
どれもこれも志保ちゃんの好きな物ばかり。
一子「……志保ちゃん、喜んでくれるかな」
志保ちゃんは大人びて見えて意外と子供舌なんだよね。
志保ちゃんが私の作ってきたお弁当のおかずを1口食べた瞬間に少し目を見開いて美味しいと言ってくれるあの顔が可愛くて大好き。
だから、ちゃんと昨日のことを謝ろう。
一子「……突然怒っちゃってごめんね、」
そう伝えればきっと元通りになれる。
急いで地下鉄に乗って、早すぎるくらいに来たせいか
通学路は誰もいなかった。
学校の校門をくぐりながら志保ちゃんに伝えたいこと
練習しようと小さくを呟いてみる。
一子「私は志保ちゃんが大好きだから、冷たくされると寂しいの」
……あとは、
一子「前みたいにお話したい」
うん、やっぱり素直に私の気持ちを伝えないと。
最近の志保ちゃんは、ほんとに私を見ていない……
というか授業中もどこか上の空で。
教室で話しかけても「うん」とか「別に」とか、短い
言葉しか返ってこない。
その事実を思い出して、胸がぎゅっと締めつけられる
みたいで息が苦しくなった。
私、志保ちゃんのこと本当に大好きだから……。
朝一緒に登校して、授業中は隣の席でノート見せ合って、放課後は部活終わりに待ち合わせて、帰り道はいつも寄り道して。
志保ちゃんの横顔を見るだけで、幸せで、胸がいっぱいになってたのに。
一子「……大好きだから、離れないで欲しい」
思わず出てしまった本音にハッとする。
誰かに聞かれてないよね……?
独り言をずっと言っていると思われたら恥ずかしいと
早歩きで校内に入ると下駄箱に志保ちゃんの靴がもうあった。
志保ちゃん?こんなに早いのにもう来てるの?
急いで階段を駆け上がって教室の扉に手をかけると、
志保「……」
誰もいない教室の真ん中で立つ志保ちゃんがいた。
窓から差し込む朝の光が志保ちゃんの銀色の髪に絡まり、一筋一筋が小さな星のように輝いていてとても綺麗……。
思わず見蕩れてしまったけど、ハッとして慌てて声を
かける。
一子「志保ちゃん、おはよう!」
志保「おはよ」
一子「何してたの?」
志保「んー……何も?」
わざとらしいくらい明るい声をかけると、志保ちゃんはカタンと椅子を引き自分の席についた。
私は早速志保ちゃんの机の上に今朝作ったばかりの
お弁当の袋を置く。
一子「今日ね、志保ちゃんの好きなおかずたくさん
作ってきたの!……あのね、私、志保ちゃんに言いたいことがあってね、」
今日こそ、ちゃんと伝えなきゃ。
志保ちゃんが、私から離れていく前に。
一子「だから今日も屋上で___」
志保「一子」
意を決した瞬間、凛とした志保ちゃんの声が静かな教室に響き渡る。
志保「明日からお弁当作ってこなくていいよ」
私と志保ちゃんを繋ぐ糸がプツリと切れた気がした。




