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体育祭12:海棠美百合

・救護室の扉前にて




………あのバカは何なの本当に。



パン食い競走が始まってアリーナから眺めていたら、

走っていた夕子が突然櫟先輩に後ろから引っ張られ顔面からありえないほどのスライディングを決めた。



あんたの唯一の取り柄でもある顔が……!!



と私は正直ビビった。


多分けつまずいたんだと思うんだけど元凶の櫟先輩は

狼狽えて泣きだし、楠木は半狂乱。


夕子本人が1番泣いていいはずなのに遠目に見ても普段とは違うめちゃくちゃ大人な対応をしていて、あっけらかんとその場から去ってしまった。


一緒にそれを見ていた男女(おとこおんな)は次の種目のリレーに向かうためかふらっとそのままいなくなり、怪我の具合を心配しながらとりあえずギャル先輩たちと座って夕子の帰りを待っていたの。


……ところがいくら待っても、あのバカは全然戻って

きやしない。


3年の2人がよっぽど怪我が酷いんじゃないって顔を

見合せ、



〝救護室にいると思うから見てきてくれない?〟



って言うから走って夕子の様子を見に来たのに……。


いざ来たらこのザマ。


半開きになった救護室のドアから男女と夕子が並んで

ベンチに座っているのが見えるじゃないの。


まさか男女はリレーに向かったんじゃなく、ブッチしてわざわざ夕子を覗きに来ていたって事?


しかも夕子とペラペラ話してると思えば今度は肩を借りて寝始めて……。


………。


……は?


何なのこの状況は?


ていうか、バカだバカだとは思っていたけど夕子は

転んだついでに更に頭でも打ったわけ?


あんたのどこが人の気持ちに人一倍敏感なのよ。


人一倍敏感なら、アリーナで待ってる私たちに心配

かけたかもとか考えてさっさと戻ってくるでしょうよ。


煮えくり返るような苛立ちを覚えて、私はつい奥歯を

噛み締めた。


救護室には先生らしき人も見当たらず、いつまで経っても現れない使えない教師を明日理事長に訴えてやろうかな。


それに……この男女も最初から気に入らなかったのよ。


話を盗み聞きしていたらただのシスコンじゃない。


しかもその姉に似てるから櫟先輩と仲良くしてる

だなんて異常、異状性癖女よ。


友達に対する誠実さの欠けらも無い病的なシスコン

相手に、よくも夕子はいつまでも呑気に話していられるわね。


ちょっとくらいおかしいなと思いなさいよ。


大体___。



……。


………………。



何で私は今こんなにイライラしてるの?


たかだか夕子が転んだだけでと胸に渦巻く謎の怒りに

首を傾げていると、



舞「……何だあれ〜クソがよ〜」



突然、殺意が込められた声が背後から聞こえて驚いて

振り向いた。


こんなふわふわしてる声でオブラートに悪意を包み誤魔化す……まぁ誤魔化せてないけど、その本人はもちろん楠木。


夕子を心配して来たのだろうけど目の前の光景を見て

歯ぎしりしている。


……こいつはこいつでおかしいのよね。


一体どんな気持ちで夕子と一緒にいるのよ。



舞「……てめぇも見てないではよ止めろや〜」


美百合「何で?そんな義理ないけど」


舞「嫉妬に狂った化け物みたいな顔してるくせによく

言うわ〜」


美百合「はぁ!?私が誰に嫉妬するって___」


夕子「ちょっと!!!!!うるさいわよ!!!!!

志保様が起きちゃう!!!!!」



突っかかってくる楠木に言い返すより先に、急に夕子のうるさいきゃんきゃん声に止められた。


夕子がぶくっと頬を膨らませるその姿が可愛くて、その顔を男女に見せたのかよと余計にイラッときて言い返す。



美百合「はぁ!?私たちに気づいてたならあんたから

こっちに声掛けなさいよ!!!!」



すると楠木が私の足を思い切り踏みつけてから夕子の

元へと駆け寄った。



舞「どけよ〜、夕子ちゃん大丈夫〜?」


美百合「見りゃわかんでしょ、ピンシャンしてるじゃない」


舞「てめぇに聞いてねぇんだよ〜」


夕子「ねぇ、だからうるさいってば!!!!!」



2回目の夕子の怒鳴り声に、それまで黙って肩にもたれたままだった男女の目がパチリと開いた。



志保「なんだ良かった。夕子ちゃん、元気そうじゃない」


夕子「あーん♡♡夕子はまだ足が痛い___」


志保「仮病はダメよ」



そう言って男女は立ち上がり伸びをすると、特に私たちがいることにも興味を示さず小さく欠伸をした。


何だこの舐めた態度は……。


たかだか1学年上だからって調子こいてんなよ。



志保「夕子ちゃん」


夕子「はい!!何でしょう!!」


志保「早く治るおまじない」



男女は変に気取ったセリフを吐いたと思った瞬間、なんと夕子の前髪をさっと手で払ってそのおでこに軽くキスをした。



美百合「なっ___!!!!」


夕子「……ひ、ひゃあああ"あ"あ"あ"あ"!!!!!」


志保「またね」



夕子の轢き殺されたカエルのような声が響き渡り、衝撃的なシーンに私は目を見開いて驚いていると男女は私たちを見て嫌らしい顔でくすりと笑った。



このデカブツ女ワザと………!!!!!



私と楠木に見せつけるためにワザと夕子にキスしたんだと直感が働く。



美百合「ねぇ!ちょっと___」


「何だ今の悲鳴は!?お、おい!大丈夫か!倒れてる

じゃないか!?」



でも、私が男女の方を掴もうとしたら夕子の悲鳴を聞きつけた教師がタイミング悪いことに走って救護室の中へ入ってきた。


憎らしいことに男女はそのまま手をヒラヒラと振って救護室をあとにし、興奮して失神しかけた夕子のアホ面を見たら憎たらしくてたまらない。



美百合「救護室担当のくせに!!!いつまでそこら辺

ほっつき歩いてきたわけ!?」



私は思わず教師を怒鳴りつけた。


ところがいつもなら呪いの言葉を吐く楠木が何故か急に貧血起こしたみたいに私の隣でぶっ倒れて、先生が大慌てで救急車を呼ぶ始末。


こうして訳の分からないまま怒涛の体育祭は幕を閉じた。




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