4/25(金) 海棠美百合の見た日常
・渡り廊下にて
梓志保とコンタクトを取りたい夕子に付き合わされる美百合と舞
美百合「……で?」
夕子「だから!!!待ち伏せするのよ!!!」
舞「でも次の時間美術だよ〜?美術室は1階だし間にあう〜?」
移動教室だから早くクラスから出たというのに、夕子は突然3階の渡り廊下で立ち止まる。
夕子は昨日から大騒ぎで本当にうるさい。
昨日会ったあの背の高い美形の先輩は女だというのに運命を感じたらしい。
〝私の王子様〟のご尊顔を毎日一目は見るんだって。
顔はとびきり可愛いのにとびきり頭が悪いんだよな。
美百合「どうでもいいから先行ってるね」
夕子「は!?ダメよ!!」
美百合「何でよ」
夕子「偶然を装うんだからあんたもいないと困る!!」
舞「それより夕子ちゃん〜本当に先輩たちここ通るの〜?」
夕子「通るわよ!志保様は2年F組だからこの廊下を通るのが第2体育館に1番近いんだから!」
無駄にリサーチしていて、そうまでしてあの人に会いたいかな。
志保志保志保志保うるさいな。
大体そんな騒ぎ立てるレベルでもなかったし。
玉塚歌劇団みたいな男女のどこがいいんだか。
美百合「……あ」
その時ちょうど曲がり角から私がナンパした黒髪超絶美人の先輩と並んで夕子の王子様は現れた。
黒髪の方の名前はなんだっけ。
夕子の王子様は黒髪美人の先輩の方だけをじっと見つめ話していて、まだ私たちには気づいてない。
夕子「き、来た来た来た!!ねぇ、私は転ぶから舞は助ける振りして!ゆりは___」
美百合「おけ」
転ばせて欲しいのねと直ぐに理解した私は思い切りその背中を突き飛ばした。
……夕子って思ったより軽いんだ。
力を入れすぎたのか宙を舞う夕子は綺麗に王子の前にスライディングした。
夕子「__い、痛っ!!な、な、何すんのよー!!!」
美百合「……だってあんたが突き飛ばせって」
夕子「私は自分で転ぶつもりだったの!ゆりも私を支えてくれる役だったのに、これじゃあ嘘くさい出逢いになっちゃうじゃない!」
志保「……へぇ?そうなんだ」
盛大に自分たちの前に転がってきた夕子を見て狼狽える黒髪美人先輩とは違い、王子は騒ぐ夕子を見て今日に片眉を上げた。
一子「だ、大丈夫?怪我してない?」
夕子「痛いです、私、膝を擦りむいちゃいました志保様」
志保「そんなん唾付けとけば治るよ」
夕子「し、志保様が治してくれるんですか?♡」
志保「やだ、キモ」
一子「またそんな意地悪言わないの……あっ!」
志保「早く行くよ、一子」
王子は夕子に手を差し伸べる黒髪美人の手をサッと取ると私たちを気にすることなく黒髪美人の肩を抱いて行ってしまった。
夕子「……え、えぇぇっ、嘘ー!!私の方がヤダーー!」
美百合「嘘も何も向こうは胡散臭い奴って思うわよ、こんなん」
夕子「うるさいわねっ!!黙っててよ!し、志保様ー!いちい先輩ー!今日はマカロン食べれますからねー!!また放課後旧音楽室でお待ちしてまーす♡♡♡」
大声で叫ぶ夕子の声に振り返ったのは黒髪美人の櫟先輩だけだった。
同時にチャイムが鳴ったので私たちの授業遅刻が確定してため息をついた。