5/2(金) 楠木舞の見た日常1
・1年A組にて
朝1番の会話
舞「夕子ちゃんおは……よ〜」
夕子「舞!おはよ!どう?似合う?」
教室の扉を開けて夕子ちゃんと対面した瞬間、あまりにも……。
あまりにも真っ赤な唇をにびっくりしてしまった。
舞「夕子ちゃん、そのお口はどうしたの〜?」
夕子「ふっふっふっ……今月のお小遣い昨日貰って、その足で三越で手に入れたの」
舞「デパコス〜?前に欲しいって言ってたやつ〜?」
夕子「そう!Diorのアディクトリップ!」
んまんまと自慢げに唇をはねさせてるけど、その色を見て櫟先輩の真似だと直ぐにわかった。
あの男役が櫟先輩を一々もったいぶって構うもんだから、夕子ちゃんはアレが羨ましくて仕方ないんだと思う。
私が去年のお誕生日にあげたリップは大切だからって遊びに行く時しか塗ってくれないのに。
夕子ちゃんが自分で買ったDiorのリップはあの男役のためかと思うと少しイラつくけど、
夕子「真っ赤なリップくださいって言ったらこれになったの!それにね、試供品もいっぱいくれたから舞にもあげる!」
ドサ、と笑顔で机に置いてくれる夕子ちゃんは本当に可愛い。
今年の誕生日もやっぱりデパコス一択ね。
それにしても櫟先輩の唇というより苺みたいに真っ赤で絶対先生にバレて叱られるのが目に見える。
落とした方がいいよと伝えたくても可愛いから落として欲しくない気もするし。
困ったな……。
美百合「おはよ」
夕子「ゆり、おはよ!見て見てー、この色可愛いでしょ?」
美百合「……え、オバ9の真似?」
夕子「お、お、お、おばきゅー!?どこがよ!!」
チッ……。
この女は夕子ちゃんを一回ディスらないと気が済まないのかよ。
美百合「悪いけどその色あんたには全然似合ってないよ」
夕子「ひ、ひどい!!ひどいひどい!!ゆりのバカバカ!!」
海棠をポカポカと殴るべく走り出した夕子ちゃんだけど、思い切りつまづいて海棠の胸に倒れ込む。
美百合「うわ」
夕子「……えっ、やば!!」
夕子ちゃんに怪我がなくて良かったけど、その代わり海棠のシャツにはベッタリと夕子ちゃんの赤いリップがついていた。
美百合「……」
夕子「ご、ごごごめんってば……ほら、あ、」
夕子ちゃんは気が急いたのかポケットからティッシュを出してグイグイと強く拭いたけど、そんなんじゃ余計に汚れが目立つことになる。
舞「擦っちゃダメだよ〜もっと伸びちゃう〜」
美百合「……私のシャツでリップオフしてなんなのあんたは……ていうかその真っ赤なリップやっぱり似合ってないし」
夕子「な、何回も言わないでよ、6000円もしたんだよ!デパコスだよ!?」
美百合「夕子は何にもしなくても__」
舞「夕子ちゃんは赤いリップ塗っても最高に可愛いね」
被せ気味にわざと強く言うと、海棠は目を見開いた。
夕子「舞ー!あんただけよ分かってくれるのは!見ててね、この赤リップと私の色気で今日こそ志保様をノックアウトするから」
美百合「どーでもいいけど、これクリーニング代弁償してね」
夕子「えっ……!?」
自信満々に腕を上げて燃える夕子ちゃんに、海棠が事もなげに言い放った。
夕子「く、クリーニングじゃなきゃダメ?私が家で洗ってくるから」
美百合「あんたアイロンあてれんの?」
夕子「え、えぇ……?ゆりわざわざブラウスにアイロンかける派なの?」
美百合「1000円でいいわよ、私はクリーニング出す派なんだから」
夕子「せ、1000円!?……リボ払いでいい?」
美百合「……リボって高くつくけど?」
夕子「ごめんってー!!お菓子で許してよ!!」
チッ……。
いちいち高尚ぶりやがって、夕子ちゃんを困らせんなよ。
そんなの家でハイターでもぶっかけとけと心で中指を立てた。




