7話 故郷(森)から出て、山の中へ
※後書きに挿絵があるのでお見逃しなく
どんな冒険も、初めてが一番楽しい気がします
2025/8/21 加筆修正
ティーナカ(以下:T)「いやぁ、子供はあっという間に巣立っちゃうねぇ」
エスズキ(以下:S)「子供っていう見た目じゃないけどね」
「おとウさん、おカあさん、お世ワになリましタ」
T「誰がお父さんだ!」
S「お母さんとお母さんだよ〜?よーしよしよし」
「やめテ!かミの毛がとレちゃウ!」
T「見慣れると、苔も悪くないもんだね」
S「私達は慣れたけど、外では変な人扱いされるから気を付けるんだよ~」
「気ヲ付けまス」
ようやく自分の足だけで歩けるようになったので、外の世界を見てまわる旅に出ることにした。チートも無い異世界生活だけど、体は頑丈だからなんとかなるだろう。
T「危ない危ない。ふざけてて、大事なことを伝え忘れるところだった!」
S「君の体の中にある闇属性魔力なんだけど。魔力は回復しても、魂は回復しないから気を付けてね~」
「(?)よク分からなイけド、覚えテおキまス」
二人に見送られながら、この世界の故郷を出発する。転ばないように、杖代わりの棒切れを両手に装備した。
食料が要らないから、荷物が少なくて楽だ。持ち物は、日除け用に二人が作ってくれたフード付きの外套を一枚のみ。白地に茶色の模様が入っていて、マッシュルームレザーで作った物らしい。ごわごわして固いけど、日光をしっかり遮ってくれるし、初期装備としては十分だ。危険な生物もいると言ってたけど、この体じゃ食べる所も無いし、スルーしてくれるだろう。
(いくらキノコ製とはいえ、この外套目当てに襲われないよね?)
ギッシ、ギィ…、ギッシ、ギィ…
目的も無く歩き始めてしまったが、周囲は大木が生い茂る森で、視界はひどく悪い。見上げれば日差しを感じられて明るいのだが、何故か足元が暗いのだ。葉がそれほど重なっているわけでもないのに、不自然な暗さに感じる。
(これも、魔力が関係あるのかな?)
ただ、日差しがあまり届かないせいか、足元の草はあまり育っていない。歩きやすいのが、せめてもの救いだった。しかし、このままでは出発して早々に遭難しかねない。どこか高い所で、地形を確認してから進む方向を決めた方が良いかもしれない。
何か目印になる物はないか探していると、木の葉の合間から山が見えた。落ち葉や枯れ枝に足を取られないように気を付けながら、見失わないように進んでいく。
ギッシ、ギィ…、ギッシ、ギィ…
◆ ⁂ ◆
歩き始めて、1時間はたっただろうか。山の麓に辿り着けたが、着慣れないローブが何度もずり落ちてしまった。おかげで、あちこち枝葉が生え始めてしまっている。生えすぎると眠くなってしまうので、手が届く所は毟りながら歩く。
そうして山を登ること2時間、なんとか山頂に辿り着いた。そんなに高くない山で助かった。山頂からの景色は、人工物ひとつ見当たらない、自然一色だった。遠く地平線まで、幾重にも山々が連なっている。
あの二人が暮らす森は盆地だったらしく、四方を山に囲まれている。過ごしてた頃は、明るく開けた場所だと思っていた。だが、今は深い緑に覆われ、詳しい位置は分からなかった。
「さテ、どウするカなぁ…」
集落のひとつでも見つかればと、期待していたんだけど――。
(そういえば、YouTubeの地理系動画で『平野は栄えやすい』って言ってたな。平野を目指すなら、川下へ向かうのが良いかな?)
そうして川の方へ下っていこうと足を出した瞬間、山頂特有の強い風が吹いてきた。
ビュォオオオーッ!
咄嗟に杖をつき、足で踏ん張ろうとしたが、あいにく滑りやすい地面だった。風圧に抗いきれず、そのまま崖下へと転がり落ちてしまった。
「あアあぁぁa~!…ッ……ッ!」
(……!……♪)
落ちる間際、風に紛れて何か聞こえた気がしたが、体に襲い掛かる衝撃によって頭から消し飛んだ。
ズザザザッ!ゴドッ!バキメキッ!ゴロゴロゴロ…!
大小さまざまな衝撃が、めちゃくちゃに襲いかかってくる。もはや方向感覚はおろか、重力すら分からない。どこまで落ちるのか、いつ終わるのかも分からない地獄のような時間が続く。
ゴガッ!ゴッ!バキバキッ!ゾリゾリゾッ!ゴロガロゴロ…
◆ ⁂ ◆
――長い時間が過ぎ、いつの間にか落下が止まっていた。衝撃の余韻で、いつ止まったのかすら分からない。
(うぅ…ぎぼちわるい…)
体の回転と、ぶつかった時に全身が揺さぶられ、頭ごとミキサーにかけられたかのように気持ち悪い。まだ落下中なのかと、錯覚してしまいそうだ。周りを見ている余裕は全く無かった。ここは山のどのあたりなのだろうか。
かなり時間がたってしまったが、気分の悪さもようやく落ち着いてきた。周りを見渡して状況を確認してみると、こすった跡はあるが、幸い体に損傷はなさそうだ。
(岩に激しくぶつかっただろうに、とんでもなく頑丈だな)
残念ながら、相棒の杖2本はどこかへいってしまった。
(杖は、また探せばいいか。外套は…良かった!ボタンが取れてるけどあった!)
土まみれになってしまったが、片腕にかろうじて引っかかっていた。大事なプレゼントなので、失くさなくて良かった。
チョロチョロチョロ…
耳を澄ますと、近くで水の流れる音がする。運が良いのか悪いのか、川の近くまで落ちてきたようだ。
だが、ゆっくりもしていられない。動けなくなっている間に、湿った土に反応して根が伸びてきている。
(根が伸びる所なんてじっくり見たこと無いけど…それにしても伸びるの早すぎない?)
早くしないと、自力で脱出できなくなって森と一体化してしまいそうだ。
――その時。
ガサッ!ガサガサッ!
「キィッアッ!ソコダッ!ゴチソウッ!キィィッ!」
何かが迫ってくる。音がする方を見ると、”緑色のナマケモノ”みたいな猿が山を駆け下りてくる。
(そんなに早くはないけど、やばい、数が多い!!襲ってくる?!)




