4話 夜中に独りぼっちだと、考え過ぎて悶々としますね
短いです。毎話楽しい展開にするのって難しいです。
2025/8/20 加筆修正
視覚と聴覚を自分なりに調整してみたが、初めての魔力の感覚に、まだコツがつかめない。
(まぁ、初日だからこんなもんかね)
二人は「んじゃ、また明日見に来るね~」と言い残し、どこかへ消えてしまった。取り残された木の体の中で、身じろぎ一つできないまま、地べたに無造作に転がっている。
もし、誰かが通りがかったら――。暗闇の中で月明かりに照らされて、不気味な影を浮かび上がらせる人形を見て絶叫するだろう。
(夜中に動くのは、やめておこう。化け物と間違えられて討伐されそうだ)
ある意味、野生動物などに襲われるよりも、自分の見た目が不気味な事の方が厄介かもしれない。
(それにしても、見えづらいな…)
最初よりは多少マシになったとはいえ、目に映るのは月明かりだけが頼りのピンボケ写真のようだ。そのかすかな光の中で、木々の枝葉が揺れているのが見える――いや、風がないのに揺れている?
(猿でもいるのかな?襲われたら嫌だなぁ)
外を観察すればするほど、"動けない危険"という事実を突きつけられ、じわじわと気が滅入りそうになる。
気を紛らわせるため、今日の出来事を振り返ってみることにした。
(仕事に行くはずだったのになぁ、どうしてこうなった。とりあえず、出来ることから進めていくしかないか)
まずは、この体のことを整理する。今のところ、眠気も空腹も感じない
(睡眠、食事が不要なら、面倒が少なくて最高だなぁ)
(視覚と聴覚は、昼間に確認した通り。自在に扱えるようになるには、時間がかかりそうだけど)
(嗅覚は…木の香りと、草花、土の匂い。こんな状態でも分かるんだな)
(味覚は不明。食事しなくていいなら、正直どうでもいいかな)
(触覚は…叩かれたときの振動が分かったから、体の表面はともかく内側なら感覚があるのかもね)
五感は揃っているようだ――ただし、人間の体とは勝手が違うらしい。
(髪…はもう諦めよう。苔を枯らさないように気を付けなきゃな。水だけで大丈夫かな?)
(火力が強かったら、生木でも燃えるよね…。痛覚がなさそうだから、燃えていても匂いでしか気づけないだろうし…。なるべく、火には近づかないようにしよう)
そんなことを考えている間にも、森の中に響く獣の鳴き声や物音。音がする度に、ワンダはびくびくと身をすくめる。
夜なのだから眠ればいいのにと、思う人もいるだろう。屋根も無い完全な野外だが、こんな体だから風邪をひく心配も無いだろう。眠ろうと思えば眠れそうだったが――眠るのが怖かったのだ。
この体で眠ってしまったら、明日起きられる保証はない。
(別れる前に、もっと色々聞いておけばよかった!)
考える事も無くなってしまったので、不安を振り払うように、現実逃避もかねて魔力操作の練習を始める。見本も教科書もない。あるのは手探りの試行錯誤だけだ。じりじりと、星の動きと同じ速度で時間が過ぎていく。
日が暮れてから、夜が明けるまで、ただひたすら長く感じられた。
読んでいただき、ありがとうございました!
貴方に、満月の祝福がありますように…




