38話 【悲報】ワンダ氏、再びの拷問か!?
火のない所に煙は立たぬ
2025.9.10 記号などを微修正
水撒き係りに怒られてしまったワンダは、午後まで何もせずお昼寝したので、気づいたら収穫が終わっていた。
翌日、竹馬で薪拾いへ向かっている途中。女性たちがワンダを指さしてコソコソ話しているのが目に付いた。
「ねぇ聞いた?あいつがさぁ…」「えぇ!?噓でしょ…?」「それでさぁ…」「うわ…最低…」
以前は後ろ指をさされることも多かったが、最近は改善されてきているので、気になって仕方がない。
(多分、昨日の件だろうけど…思い当たる節が多すぎて分からないな。母恋ちゃんに聞いてみようかな?)
最近、情報通な事が判明した母恋ちゃんならば、何か聞いていることだろう。
(修復不可能な事態になってないと良いんだけど…)
焦る気持ちを抑えつつ、竹馬を駆るワンダ。今日も水を多めに飲んで来たおかげか、移動は遅いが安定して乗れている。
コッテコ、ちゃぷ、コッテコ、ちゃぽ
集合場所へ近づくと、声をかける前に母恋ちゃんの方から近づいて来てくれた。
(ちょっと、ワンダさん!昨日の水出すのが、変な風に広まっちゃってるよ!)ヒソヒソ
(あー、ヤッパリ?)ヒソヒソ
(『指先からおしっこを出した』とか、『”ピーッ”から”ピーッ”した水を、女性に”ピーッ”ようとした』とか、『枝葉が枯れて、もう役立たずだから追い出した方が良い』とか!)ヒソヒソ
(あー…、ソうイうカンジかぁ…)ヒソヒソ
ワンダの事をあまり良く思っていない人もまだまだ多い。噂が広まるうちに、尾ひれをつけられてしまったのだろう。
枝葉を萎れさせたのは事実だし、原因もワンダなのでそっちは反論しづらい。それでも、収穫を続けていればこっちの噂はそのうち収まるだろう。問題は他の方だ。場合によっては、また拷問されてもおかしくない。
(美唄さんと昆布さんが分かってくれてるなら大丈夫…だよね?)
薪拾いの森に着いても噂が頭から離れず、薪拾いに集中できないワンダ。 足元をよく見ずに歩いていたら、木の根に足を取られて――ゴッ!っと頭から地面に突っ込んでしまった。
「おゴッ!」
「なに遊んでんだよ!」「遊んでる人がいまーす!」
転んだ姿を目ざとく見つけた昆布弟達が、すかさずはやし立ててくる。
「こロンダだけだよ!」
「ちゃんと仕事しろよー!」「しろよー!」
「ワカッテるよ」
「サボるなよー!」「サボるなよー!」
(まったく、普段自分が言われてる事ばかりじゃん…。ブーメラン刺さりすぎだろ)
ふだん叱られてばかりなので、人に小言を言うのが楽しくて仕方ないようだ。監視しているつもりなのか、広い森の中でわざわざワンダの近くでばかり拾っている。
(この二人にだけは、絶対に知られたくないな)
弱みを見せまいと薪拾いに集中していたら、いつの間にか帰る時間になっていた。おかげで、一時的とはいえ噂の事を忘れていられた。
(たまには、あの二人も役に立つな)
感謝を口にはしないが、二人の良い所を見つけて得した気分だった。
◆ ⁂ ◆
今日はいつも通りの時間だったので、帰り道の途中で迎えに来てくれた昆布さんと合流した。竹馬と竹籠をバトンタッチしてから出発する。
「そろそろ、たケカゴハジブんデモチますよ?」
「んー、そうですねぇ…。私の竹馬より早くなったら、そうしましょうか」
『そうしましょうか』と言いつつ、負けるつもりは無さそうな昆布さん。ニヤニヤ笑うその表情からは『やれるものならどうぞ?』という挑発的な香りを感じた。
(それは無理ゲーでは…?)
日々、驚異的なスピードで成長を続ける昆布さんに、対抗できる気がしない。既に、竹馬で片足立ちは勿論、『エッホ、エッホ』くらいの速さで走っているのだ。あの余裕の表情を見る限り、まだまだ伸びしろがありそうだ。
因みに木古内さんはと言うと、下り坂を利用してパルクールの様な事をしている。
「ふぉっほっほーっ!」
勢いを付けて樹に走り寄ったかと思うとそのまま駆け上がり、空中で一回転してから着地した。
「きこじいやべぇ!」「かっけーっ!」「きこじいのバカ!男子が真似したら怪我するから止めなよ!」「バカばっか…」
(竹馬で木登り!?前宙?!ワイヤーで吊ってるわけじゃないんだよね…?もう、わけがわからないよ…。お猿さんの曲芸と言われた方が信じられるな)
もはや、お爺さん詐欺というレベルで木古内さんの身体能力はおかしい気がする。『魔法じゃよ』と言われても、何をどうしているのか見当もつかない。
自分の目が信じられないような光景を振り払うように出発する。後ろから追い立てるようについて来る昆布さんを、なんとか引き離そうと必死で腕と足を動かすが、息があがる様子もなく余裕の表情だ。
(ここに住んでるだけで、毎日がブートキャンプだな。ハ、ハ、ハ…ハァ)
心の中で乾いた笑いとため息を吐きながら、枝葉の採集場へと急ぐワンダだった。
ギッシトン、ギィトン、ギッシトン、ギィトン
今回のまとめ
・おや?里の様子が…
・不穏な噂が広がっている!(一部事実なので頭が痛い)
・たまに役立つブラザーズ!
・エルフ式ブートキャンプ!
読んでいただき、ありがとうございました!
貴方に、満月の祝福がありますように…
”ピーッ”の部分は、ご想像にお任せします。




