表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/14

3話 新しい体ってワクワクするよね?

実際、”物”に精神を入れられたら、どれだけの人が耐えられるんでしょうか?

2025/6/15 微修正

 暗闇に漂っていた意識が、何かの振動によって浮上してきた。


(おーい!)

(生きてるかーい?)

「コンッ、カンッ、コンコンカンッ!」


 リズムよく叩く音が聞こえてくる。

声も聞こえてはいるが、壁越しのようにくぐもっていて聞き取りづらい。


ピ「あ、気づいたみたい。」


青「このまま起きないのかと思ったよ。」


(洒落にならないので止めてください)


ピ「まぁまぁ、結果オーライ!」


青「音は聞こえてるみたいだし、次は外を見てみて!」


(真っ暗で何も見えないんですけど、もう体に入っているんですか?)


ピ「うん、もう入ってるよ〜!これで消滅の危機はとりあえず去ったね!」


青「選ばれし者よ!体を使いこなすためにも、五感を手に入れるのだ!」


(了解です。で、どうやって外を見れば…?)


ピ「まずは体がどんな形をしているのか、内側から探ってみて!」


青「体の中は空洞になってるから、ある程度形は掴めると思うんだけど。どうかな?」


(中が空洞…。今いる場所の、壁が体の内側の壁って事ですか?)


ピ「そうそう。今感じてる部分は胸の部分だね。で、壁を伝って頭を見つけるのだ!」


青「分かれ道は、股の所で太ももの方に分かれてる太い道と、そこそこ太い首の道。

両脇に分かれてる、腕に繋がる細めの道があるよ~。」


(分かれ道が…こっちは二つ。反対側は…三つ。こっちが頭ですね。)


ピ「下にも、三つ目作ろうと思えば作れるよ。機能は付けられないけどね!」


青「そういう事言わない!」


ピ「え~、でも何か飲んだらおしっこした方が良いんじゃない?」


青「それもそうか。付けとく?」


(今のところ、必要ないので遠慮します。

んじゃ、こっちの真ん中に入ってみます。)


ピ「首を伸ばす感じが良いかな?体中に意識を伸ばすイメージでやってみよう~」


青「そうだね。最初は首を伸ばす運動から〜。始め!」


 二人の賑やかな声を聞きながら、言われた通り首を伸ばすイメージで、頭があると思われる狭い穴へと意識を向ける。


 狭い穴を通れるか不安だったが、実体がないおかげで抵抗なくすり抜けることができた。


(頭の中に入れたみたいです。隙間から光が入ってきてるけど、ここは口かな?)


ピ「そうだね!開けてみるよ~。」


青「御開帳~!」

(うぉ!まぶしっ!)


 閉ざされた口の隙間から、わずかに漏れていた光。

しかし、口がこじ開けられた瞬間、目を焼くような強い光が一気に差し込んできた。


ピ「今更だけど、その状態でも視覚はあるんだね。黒いモヤモヤにしか見えないけど。」


青「まるでユーレイだね!」


ピ「ユーレイなんて居ないから!」


青「あはは!んじゃ、そろそろ口は閉じるよー。」


ピ「次はちゃんと目から外を見てみてね~。」


(分かりました。)


 再び薄暗がりとなった自分の頭の中で、目玉を探し始めた。


(小さい丸い物が2つ並んでる。ここかな?)


ピ「そうそう。木材で作った目玉だから、光は透けないけどね。」


青「光が入るように穴を開けるよ~。」


 そう声が聞こえたかと思うと、「にゅっ」と小さな穴が開き光が差し込んできた。


(外は見えました。これでどうすれば?)


ピ「その体を、自分の体と認識しないと上手く動かせないからね。まずは、両目で外を見るのに慣れてみよう!」


青「片方の穴からじゃなくて、両目で外を見るように二つの目玉に意識を向けてみて!」


 「言われた通りやってみます」と言いたいところだが、二つの穴に意識を向けると集中が分散してしまい、うまくいかない。


(なかなか難しいですね)


ピ「ん〜。じゃぁ、顔の位置は分かったんだし、お面を被るよう様なイメージでやってみたらどうかな?」


青「目の位置を基準にして、仮面を被るように!」


(分かりました、やってみます。)


 目の位置を目印に、頭を合わせて…。仮面を被るように、位置が合うまでは目を瞑って…、この辺かな?


 ここだと思う場所で、目を開き、焦点を合わせるイメージをする。


(お、ちょっと視界が狭い気がするけど両目で見れたみたいです。)


ピ「おめでとう!これで、その体で生きていく第一歩だね!」


青「こうやって慣れていけばすぐだよ!」


(そうですね、ゆっくりやってみます。)


ピ「次は耳だ!」


青「こっちも貫通ぅ!」

(キュポッ!)


 時間はかかりそうだったが、悲観はしていなかった。


 足りないとばかり思っていた時間が、今は余るほどある。


 時間さえかければ、きっと何とかなる――。


 期待と不安が入り混じった複雑な感情を抱きつつも、ある意味では望んでいたこの体と、静かに向き合い始めた。

読んでいただき、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ