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34話 子の学び、一聞十実のごとし

子供の成長は、一つ聞いたら十成長するくらい早い。

…みたいな、創作(ことわざ)です。

 翌日。今日は晴れたので、日課の薪拾いに向かう。


 今朝の飲み水は、自分で汲んでみた。『ドリップ』をイメージしたおかげで、泉樹(せんじゅ)から昨日よりもたくさん水を出して頂けたのだが、水の操作がまだ出来ないので半分以上こぼしてしまい申し訳ないことをしてしまった。お詫びに多めに水をかけておいた。


(あーでも、雨の後だし多すぎても根腐れとかするのかな?収穫の時にでも聞いてみよう)


 コッ、ゴッゴッ!、コッ、コッ、ゴッゴッ!


「ちょっと…何あれ…」「竹で作った変なので歩いて…歩いてる?」「何かの儀式か?」「ママー、何あれー!」「しっ!見ちゃダメよ!」


 見慣れない竹馬で歩くワンダを、里の人たちは不審者を見る様な目で見てくる。早めに出発して、集合場所まで竹馬で移動しているのだが、やはりバランスを取るのが難しい。今のところ3歩が最高記録だ。1~2歩あるいては足を着く、というのを繰り返しながら少しずつ進んでいく。


(初めてであんなに歩けるのは、やっぱりおかしいよ!しかし、バランスかぁ…。これも魔法で何とかならないかな?)


 なんでもかんでも魔法で出来るほど甘くは無いという現実から逃避しつつ、地道に練習を続ける。


 コッ、ゴッゴッ!コッ、コッ、ゴッゴッ!


 危ない場面はあったが、なんとか転ばずに辿り着くことが出来た。


「ロンニヒワ、マにあッテ(間に合って)ヨカッた(良かった)です」


「ロンニヒワゥ、さっそく練習かい。精が出るのぅ」


 『精が出る』と言っている木古内(きこない)さんはとっくに乗りこなしており、興味津々で周りに群がる子ども達の注目を一身に浴びてドヤ顔をしている。


「慣れれば簡単じゃぞ?ほれ、ほれ、おっとっと」


「きこじいすげぇ!」「なんで片足で倒れないの!?」「次、わたしも!」「俺だ!」「わたしもー!」「3つあるからね、順番にね~」


 既に量産を始めているのか、一晩しか経っていないはずなのに、木古内(きこない)さんが乗っているのも合わせて3つも新作が出来上がっていた。森小人族(フォレストピクシ―)の体格に合わせて作ったのか、子ども達にもちょうどいいサイズになっている。


 見よう見真似で順番に乗っているが、一番下手な子でもワンダよりは上手いのは、さすが子どもとしか言いようがない。


(子供にも負けるか…まぁ、しょうがない)


 薪拾いの場所までは流石に乗って行けないので、ワンダの竹馬は母恋(ぼこい)ちゃんなど大きめの子に貸してあげる事にした。小さい子よりも体の使い方が上手く、すぐにコツを掴むと、地面に足を着くことなく歩けるようになっていた。


 コッテコ、コッテコと歩く母恋(ぼこい)ちゃんの横に並ぶと、ちょうど目線が同じくらいになる。


「あはは!身長が伸びたみたいで楽しい!」


ダンさニ(段差に)きヲツけ(気を付け)てね」


「は~い」


 なお、クソガキ1号&2号こと昆布(こんぶ)さんの弟君とその友達は、順番を守らずに横入りした罰として女の子にお仕置きされていた。


「クソッ!こんなのつまんねーし!」「別に、乗れなくてもいいし!」


ジュんバん(順番)マモれバ(守れば)ノレた(乗れた)のに。あトデ(後で)チャんと(ちゃんと)あヤマリ(謝り)なよ?」


「うるせー!」「うるせー!」


(まったく…可愛くないねぇ)


 竹馬で乗っている時に悪戯されて転ぶと怪我をする可能性が高いので、二人は木古内(きこない)さんにしっかり監視されている。


こドモたチの(子ども達の)めンドうヲ(面倒を)ミルのハ(見るのは)タいヘん(大変)ですね」


「ふぉっほっほ、やり甲斐があって良い刺激じゃよ」


 さすが、多く年齢を重ねているだけあって人の扱いはお手の物のようだ。


 雨の日用に作ってもらった竹馬だったが、子ども達を発端にエルフの里で一大ブームとなり、エルフ発祥の玩具として周辺の町にまで普及していったのだった。


◆ ⁂ ◆


「遅いぞー!置いていくよー!」


「今行くから!」「くそー!難しいー!」


 あれだけ憎まれ口を叩いていた昆布(こんぶ)さんの弟達だったが、遊びたい気持ちに嘘はつけなかったようだ。渋々ではあるが『ごめんなさい!』と謝った事で、帰り道では竹馬に乗ることを許されていた。しかし、子どもにとっての半日は大きなハンデとなったようで、午前中に乗れるようになった子達に置いて行かれている。それでも、新しい玩具で遊べるのは楽しいらしく、悔しさと嬉しさが混ざった青春の顔になっている。


 そんな二人を、温かい目で見つめる木古内(きこない)さん。


「ふぉっほっほ。子どもの成長を間近で見られるなら、多少の苦労は安いもんじゃろ?」


ソウ(そう)ですね」


 あっという間に成長していく子ども達に置いて行かれないようにと、気合を入れて竹馬の練習に取り組むワンダだった。


 コッ、ゴッゴッ!コッ、コッ、ゴッゴッ!


 気合を入れたからと言って、すぐに成長できるわけではない…。


(明日も頑張ろう!)


【今回のまとめ】

・『ドリップ』のおかげで、分けてもらえる水の量が増加!

・一人で飲み水の確保成功!

・竹馬の練習開始!

・子ども達との距離が少し縮まった!

 読んでいただき、ありがとうございました!

貴方に、満月の祝福がありますように…


【今回のまとめ】というのを末尾に入れてみましたがどうでしょうか?

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