2話 交換?誰と?
説明回です。
2025/8/20 加筆修正
ワンダは元々、地球という星の日本という国で暮らしていた30代の人間の男で、物流を担っていた。
ある日、いつも通り職場へ向かうエレベーター(高層建築の、各階層を行き来できる便利な箱状の乗り物)に乗っていた。
エレベーターの奥の壁には、半身が映るような大きめの鏡が設置してあり、その鏡に寄りかかっていた。何かに引っ張られているような気配を感じたが、気のせいかなと無視をしていると、急激に引っ張る力が強くなり――
(何がおきっ…!?)
気付いた時には、鏡をすり抜けていた。
◆ ⁂ ◆
(ここは、いったい…)
訳が分からないうちに周囲は暗闇になっていて、床も壁も、何もない。遠くに星明りの様な光が瞬いており、ゆっくりと流れていくので、かなりの速度で背中側へ移動しているようだ。
体に目を向けると半分透けていて、触ることは出来なかった。まるで幽霊のようだ。
(幽体離脱って奴かな?何もできないし、なるようにしかならないな…)
宇宙空間(?)を移動しているうちに、体に何かが擦れるような感触が感じられ始めた。目を凝らしてみると、真っ黒な霧の様な物が体に擦れながら自分の前方(恐らく地球の方角)へ流れて行っているようだ。
(煤みたいだけど、触れない。のに感触はある…?何だこれ)
しばらくして黒い霧がほとんど見えなくなった頃、背後が明るくなってきた。体を捻って振り返ると、地球のような、しかし明らかに地形が異なる星がその目に飛び込んできた。
段々と近づいてくる星の明るさに、目がくらんで目を瞑ってしまう。明るさが増すにつれて引っ張る力が強くなり、あまりの負荷に意識を失ってしまった。
◆ ⁂ ◆
気が付くと、景色は一変していた。
明るい月光に照らされた、小さな池の上に浮かんでいるようだ。池の周りには、花が咲いている草原が広がっていてとても綺麗だ。
陸地には二人と言って良いのか分からないが、ピンク色っぽい光の集合体と、青っぽい光の集合体が賑やかに浮かんでいた。
ピ「やったー!交換に成功したよ!」
青「いやぁ〜、まさか該当者がいるとは思わなかったよ。いるもんだねぇ、筋金入りだねぇ」
などと勝手に盛り上がっている。
喋ろうとしたが、口は動いても音は出なかった。体も上手く動かず、波に流されるクラゲの様に心もとない。
ピ「あ、喋りたい時は頭の中で考えてくれれば分かるから!下手の功名?で闇属性魔力が付いてるおかげで読み取れるから」
青「いや、怪我の功名でしょ」
(そうか、サトリみたいな超能力なのかね?魔力があるなら、ファンタジー系の能力かな?)
ピ「そうそう、ファンタジー系の能力なのです!凄いじゃろ!ドヤ」
青「いや、絶対サトリの意味分かってないで使ってるでしょw」
(交互に喋って仲が良さそうですね。タイプは違うのに、雰囲気も似てるし双子みたい)
ピ「顔は似てるけど、双子じゃないよ」
青「ただのお友達だよ」
(顔は見えないけど、なるほど。それで、どういう状況ですか?)
ピ「ん~、私たちが君と妖精を交換して、ここに呼びました!」
青「ここはイムカンダル星だよ!」
(何故呼ばれたんですか?)
ピ「君を選んで呼んだわけじゃなくて、えーとなんだっけ?」
青「”とある条件に合致する魂を選択する魔法を行使した”結果、君が選ばれました!ようこそ、選ばれし者よ!」
(あー、なるほど?それで、僕はどうすれば?)
ピ「呼んでからどうするのか考えてなかった!」
青「ん〜、どうしようかなぁ。このままじゃ魂が固定できなくて消えちゃうなぁ」
(僕、消えるのか…?)
ピ「そうだねぇ。このままほっといたら消滅しちゃうね。何かに入ってもらう?」
青「そうだね!そこら辺の木材をグリグリっとやって、ポンッと入れよう!」
(擬音ばっかりで怖いんですが?!)
ピ「あはは、大丈夫大丈夫。腕は確かだから。体を作るのなんて、魔法でえいやっ!ボカーンッ!だよ!」
青「それ爆発してない?大丈夫?」
(とりあえず、自分じゃ何も出来ないんでよろしくお願いします)
ピ「あぃよ~、任されよ~」
青「任されよ~」
二人は近くにあった、一抱えもある倒木に近寄っていく。
どうやっているのか分からないが、倒木を簡単にザクザクとカットして加工していく。
ピ「身長は元の体と同じサイズにしてあげよう。169cmだね。地球ではセンチメートルって読むけど、こっちではカムミャーと読むよ。スペルは一緒なんだよねぇ」
青「頭~目鼻口耳、首、肩、腕、胸、手、腹、腰、太もも、足〜っと。それぞれ適当に関節付けて…こんな感じ?あ、髪の毛が無いね。…要らないかな?」
(要ります!髪の毛を下さい!!!)
ピ「髪の毛ねぇ、ウィッグとか無いしなぁ。元の髪型も短くて天パだから、これでいいんじゃない?」
青「ぶふっ!あー、質感は?似てるかも?」
(これって、苔?髪の毛が苔ってどうなの!?)
ピ「良かったね!これで剥げても、いくらでも育毛ならぬ育苔出来るよ!」
青「なるほど~、それは便利!」
(他人事だと思って…。無いよりましか?)
ピ「あ、生ものだから水やりはちゃんとしてあげてね。枯れると緑髪から茶髪になっちゃうよ。」
青「気軽にイメチェン出来るね!」
(パッサパサの茶髪とか嫌すぎる!気を付けます)
などとおしゃべりしている間に、細かい部分が粘土細工のように修正されていく。確かに腕は良いようだ。ほどなくして、等身大の木製人形が完成した。
髪の毛が『苔』なのと、鼻の代わりに枝葉が生えているのはご愛敬。
肘や膝などが動くのはもちろん、指の関節まで動くのには感動した。
(体が完成したようで、ありがとうございます。でも、これに入ったとして、体を動かせる自信がないんですが)
ピ「ま~、時間はたっぷりあるし大丈夫でしょ。こっちの言葉も勉強しなきゃだし、気長にいきましょう~!」
青「まずはバク天宙返りを目標に!」
(生身でも無理だから!いや、骨折しないから練習すればワンチャン…?)
ピ「がんばれ~」
青「背面海老反り歩行とかも練習したら面白そう!」
(勝手にホラー属性付けるのやめてください)
ピ「怖いのは要らないよ!」
青「いや~、意外と面白いかもしれないよ?首とか360度自由に回るし?」
(とりあえず入ってみないと分からないので、入れてもらってもいいでしょうか?)
ピ「あぃあぃ。んじゃ、掴んでからのシュゥゥゥーッ!!」
青「エキサイティン!!」
謎のハイッテンッションッ!!で、新しい体へ放り込まれた僕は、視界が暗くなり意識が落ちていくのを感じた。
読んでいただき、ありがとうございました!
貴方に、満月の祝福がありますように…




