2話 交換?誰と?
説明回です。
2025/6/15 微修正
ワンダは元々、地球という星の日本という国で暮らしていた。
30代の人間の男で、物流業界(依頼を受けて荷物を配達する仕事のうち、荷物を仕分ける仕事)をしていた。
ある日、いつも通り職場へ向かうエレベーター(高層建築の、各階層を行き来できる便利な箱状の乗り物)に乗っていた。
エレベーターの奥の壁には、半身が映るような大きめの鏡が設置してあった。
その鏡に寄りかかっていたら、体が後ろへ引っ張られているように感じた。
最初は気のせいかと思っていたが、急激に引く力が強くなった。
気づいた時には鏡をすり抜けて、すごい勢いで後ろ向きに飛んでいた。
いつの間にか体は半分透けていて、触ることは出来なかった。
周囲は暗闇で何もない。遠くに星明りの様な光が瞬いている。
光がゆっくり流れていくので、相変わらず凄い速度で移動している事だけが分かった。
そのまま宇宙空間(?)を高速移動しているうちに、体に何かが擦れるような感触が感じられ始めた。
目を凝らしてみると、真っ黒な霧の様な物が体に擦れながら自分の前方(恐らく地球の方角)へ流れて行っているようだ。
しばらくして黒い霧はほとんど見えなくなった頃、背後が明るくなってきた。
体を捻って振り返ると、地球に似ているけど明らかに地形が異なる星がその目に飛び込んできた。
段々と近づいてくる星の明るさに、目がくらんで目を瞑ってしまう。
明るさが増すにつれて体を引っ張る力が強くなり、あまりの負荷に意識を失ってしまった。
気が付くと、景色は一変していた。
明るい月光に照らされた、小さな池の上に浮かんでいるようだ。
池の周りには、花が咲いている草原が広がっていてとても綺麗だ。
陸地には二人?と言って良いのか分からないが、ピンク色っぽい光の集合体と、青っぽい光の集合体が賑やかに浮かんでいた。
ピ「やったー!交換に成功したよ!」
青「いやぁ〜、まさか該当者がいるとは思わなかったよ。いるもんだねぇ、筋金入りだねぇ。」
などと勝手に盛り上がっている。
喋ろうとしたが、口は動いても音は出なかった。
体も上手く動かず、波に流されるクラゲの様に心もとない。
ピ「あ、喋りたい時は頭の中で考えてくれれば分かるから!
下手の功名?で闇属性魔力が付いてるおかげで読み取れるから」
青「いや、怪我の功名でしょ」
(そうか、サトリみたいな超能力なのかね?魔力があるなら、ファンタジー系の能力かな?)
ピ「そうそう、ファンタジー系の能力なのです!凄いじゃろ!ドヤ」
青「いや、絶対サトリの意味分かってないで使ってるでしょw」
(交互に喋って仲が良さそうですね。タイプは違うのに、雰囲気も似てるし双子みたい)
ピ「顔は似てるけど、双子じゃないよ」
青「ただのお友達だよ」
(顔は見えないけど、なるほど。それで、どういう状況ですか?)
ピ「ん~、私たちが君と妖精を交換してここに呼びました!」
青「ここはイムカンダル星だよ!」
(何故呼ばれたんですか?)
ピ「君を選んで呼んだわけじゃなくて、えーとなんだっけ?」
青「とある条件に合致する魂を選択する魔法を行使した結果、君が選ばれました!ようこそ、選ばれし者よ!」
(あー、なるほど?それで、僕はどうすれば?)
ピ「呼んでからどうするのか考えてなかった!」
青「ん〜、どうしようかなぁ。このままじゃ魂が固定できなくて消えちゃうなぁ」
(僕、消えるのか…?)
ピ「そうだねぇ。このままほっといたら消滅しちゃうね。何かに入ってもらう?」
青「そうだね!そこら辺の木材をグリグリっとやって、ポンッと入れよう!」
(擬音ばっかりで怖いんですが?!)
ピ「あはは、大丈夫大丈夫。腕は確かだから。
体を作るのなんて、魔法でえいやっ!ボカーンッ!だよ!」
青「それ爆発してない?大丈夫?」
(とりあえず、自分じゃ何も出来ないんでよろしくお願いします)
ピ「あぃよ~、任されよ~」
青「任されよ~」
二人は、近くにあった一抱えもある倒木に近寄っていく。
どうやっているのか分からないが、倒木を簡単にザクザクとカットして加工していく。
ピ「身長は元の体と同じサイズにしてあげよう。169cmだね。地球ではセンチメートルって読むけど、こっちではシーミャーと読むよ。スペルは一緒なんだよねぇ」
青「頭~目鼻口耳、首、肩、腕、胸、手、腹、腰、太もも、足〜っと。それぞれ適当に関節付けて…こんな感じ?
あ、髪の毛が無いね…要らないかな?」
(要ります!髪の毛を下さい!!!)
ピ「髪の毛ねぇ、ウィッグとか無いしなぁ。元の髪型も短くて天パだからこれでいいか!」
青「ぶふっ!あー、質感は?似てるかも?」
(これって、苔?髪の毛が苔ってどうなの!?)
ピ「良かったね!これで剥げても、いくらでも育毛ならぬ育苔出来るよ!」
青「なるほど~、それは便利!」
(他人事だと思って…。無いよりましか?)
ピ「あ、生ものだから水やりはちゃんとしてあげてね。枯れると緑髪から茶髪になっちゃうよ。」
青「気軽にイメチェン出来るね!」
(パッサパサの茶髪とか嫌すぎる!気を付けます…)
細かい所が、粘土細工のように修正されていく。確かに腕は良いようだ。
ほどなくして、等身大の等身大の木製人形が完成した。
髪の毛が”苔”なのと、鼻の代わりに枝葉が生えているのはご愛敬。
肘や膝などが動くのはもちろん、指の関節まで動くのには感動した。
(体が完成したようで、ありがとうございます。でも、これに入ったとして、体を動かせる自信がないんですが)
ピ「ま~、時間はたっぷりあるし大丈夫でしょ。こっちの言葉も勉強しなきゃだし、気長にいきましょう~!」
青「まずはバク天宙返りを目標に!」
(生身でも無理だから!いや、骨折しないから練習すればワンチャン…?)
ピ「がんばれ~」
青「背面海老反り歩行とかも練習したら面白そう!」
(勝手にホラー属性付けるのやめてください)
ピ「怖いのは要らないよ!」
青「いや~、意外と面白いかもしれないよ?首とか360度自由に回るし?」
(とりあえず入ってみないと分からないので、入れてもらってもいいでしょうか?)
ピ「あぃあぃ。んじゃ、掴んでからのシュゥゥゥーッ!!」
青「エキサイティン!!」
謎のハイッテンッションッ!!で、新しい体へ放り込まれた僕は、視界が暗くなり意識が落ちていくのを感じた。
読んでいただき、ありがとうございました!